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税制改革での所得押し上げ効果、クレジットカード金利負担が抑制?[安田佐和子]

企業向けの減税が経済成長の牽引役

税制改革法の成立を受け、米連邦公開市場委員会(FOMC)と国際通貨基金(IMF)は2018~2019年の経済成長見通しを引き上げただけでなく、成長牽引役として共に法人税減税を挙げていました。

FOMCの議事要旨では、2017年12月3日開催分で多くの参加者が、法人税減税が「小幅ながら設備投資を押し上げる」と予想。1月30~31日開催のFOMC議事要旨でも、企業は減税による増益分を投資、賃金、M&A、株主還元策などどこへ振り向けるか検討を開始したばかりとの認識を寄せています。

IMFは1月22日公表の世界経済見通しで、税制改革法の短期的な景気を刺激する要因として、FOMC議事要旨より明確に「主に法人税減税を受けた企業の投資動向」を挙げました。

企業向け減税が成長を押し上げるとの見解で一致したIMFとFOMC議事要旨ですが、違いも横たわります。FOMCと異なり、IMFは所得税減税の恩恵を受けるはずの家計への言及を控えました。1月FOMC議事要旨では、貯蓄率が2005年以来の低水準となったことについて言及しつつも、力強いセンチメントや資産効果を背景に個人消費が拡大すると予想。対してIMFは、成長牽引役として期待を寄せなかったのです。

一因として、所得税減税効果が法人税減税ほど劇的でない可能性が考えられます。非営利団体である税制政策センターが推計した、減税措置の1人当たり可処分所得への押し上げ効果は、2018年で1600ドル、月額にして130ドル程度に過ぎません。しかも、足元でFOMCが利上げサイクルにあり、例えば支払い手段の約35%を占めるクレジットカードの金利負担が、押し上げ効果を帳消しにしかねない状況です。

貸倒引当比率も延滞率も高水準に

米銀の2017年10~12月期決算内容をみると、クレジットカード向け融資は大幅増加を遂げると共に、貸倒引当金が積み上げられ、延滞率も上昇中です。クレジットカード向け融資額で米国内1位のJPモルガン・チェースでは、同融資残高が前年比5%増の1495億ドルと過去最高を更新しました。貸倒引当金は前年比21%増の49億ドルとなり、融資残高に対する貸倒引当比率は3.27%と2013年7~9月以来の高水準を示します。また、クレジットカードの延滞率も30日以上は1.80%と2013年1~3月以来の高水準でした。バンク・オブ・アメリカも同様で、融資残高への貸倒引当比率は3.5%、延滞率は30日以上が1.92%と、それぞれ約4年ぶりの高水準にあります。

延滞率上昇の一因は、2015年12月から5回続いた利上げといえるでしょう。銀行はプライムローン金利を利上げ毎に引き上げ、過去2年間のクレジットカードの金利も上昇してきました。NY地区連銀のデータでは、商業銀行のクレジットカードの平均金利は2015年末の12.2%から2017年11月までに13.2%へ、利上げ4回分、約1%ポイント上昇しています。

金利負担は、消費者のクレジットカード債務の増加につれ重くなります。NY地区連銀によれば、クレジットカードの債務額は2017年9月末で前年比8.2%増の8080億ドルと、8年ぶりの高水準でした。一方で信用調査会社トランスユニオンは、2017年6月末のクレジットカード保有者1人当たりの債務を5422ドルと推算しています。前述のNY地区連銀の利率を基に試算すると、金利負担は年間で715ドルと考えられるわけです。所得税減税での所得押し上げ効果の半分近くが削られるだけに、金融当局は個人消費の一段の加速を見込みづらいと考えられます。

クレジットカードの債務だけでも所得税減税効果を抑制しているわけですが、家計部門の債務でのクレジットカード比率は6.2%に過ぎません。住宅ローンが最大で67.5%、その他学生ローンが10.5%、自動車ローンが9.4%と続き、それぞれの金利負担が利上げにより重くのしかかることになります。

労働市場が拡大し賃金が上昇すれば金利負担が軽減される可能性を残すものの、平均時給の上昇率が過去2年間の平均値である前年比2.6%付近にとどまれば、原材料価格の上昇でインフレが加速する局面で実質所得の伸びも抑えられる見通し。

2017年の個人消費は前年比2.7%増(GDP速報値時点ベース)と2016年に続き堅調な水準でしたが、減税前の需要の先食いだったと考えられます。2017年に取り崩した貯蓄に振り向けるケースもあり、個人消費がアニマル・スピリットに目覚める可能性は低いといえそうです。

※この記事は、FX攻略.com2018年5月号の記事を転載・再編集したものです

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