【ステップ6】株価と為替が連動する理由

為替相場に大きな影響を及ぼす「平均株価指数」

株式市場が為替市場に及ぼす影響

株価は経済指標ではありませんが、他の市場と密接なつながりがあり、近年では為替相場に対して最も大きな影響を及ぼす要因と言っても過言ではありません。ファンダメンタルズ分析を行うものにとって、経済指標と同じくらい、株式市場の動向は気になるものです。

株価といっても、われわれ為替市場の参加者は、星の数ほどある個別株の値動きをいちいちチェックするわけにはいきません。為替市場で「株価」と言えば、普通は平均株価指数のことを指します。

日本で言えば日経平均やTOPIXであり、米国で言えばダウ工業株平均やS&P500種、NASDAQなど。欧州では各国の代表的な株価指数に加えて、ユーロ・ストックス50指数などユーロ圏全体の平均株価があります。

日本株上昇=円買いではない

では株価はどのような経路を通じて為替相場に影響しているのでしょうか?

たとえば日経平均が上昇した場合、円は買われるでしょうか? それとも売られるでしょうか?

外国人が日本株を買えば円買いが発生するから円高になる?…確かにそういう時代もありました。しかし現在の「ゲームのルール」では、逆に「株高=円売り」となります。

一日に何兆ドルもの取引が行われる為替市場においては、株式の売買に伴う為替のフローは相対的に見て微々たるものです。それよりも、株価が上昇・下落することによって生じる投資家心理の変化のほうが重要となってくるのです。

リスクオン・リスクオフとは?

リスクを負ってOKという雰囲気=リスクオン

たとえば日経平均が大幅に上昇したとすると、日本株を大量に保有している生保など機関投資家は含み益が増加して懐が温かくなります。リスクを取って投資をする余裕ができ、外国債券などへの投資を増やすことができるようになるわけです。このリスクに対する許容度がアップした状態を「リスクオン(リスク選好)」と言います。

株価が上昇し、市場心理がリスクオンの状態になると、高金利通貨や資源国通貨・新興国通貨などハイリスクな通貨が買われ、対照的に低金利通貨が売られるという連想が働きます。つまり株高になると、低金利通貨の代表格である円は売られるのです。

リスクを避けようという雰囲気=リスクオフ

逆に、日経平均が大幅に下落したとすると、投資家の行動は消極的・防衛的になり、リスクのある投資やポジションを敬遠することになります。このようにリスクに対する許容度が低下した状態を「リスクオフ(リスク回避)」と言います。

株価が上昇し、市場心理がリスクオンの状態になると、高金利通貨や資源国通貨・新興国通貨などハイリスクな通貨が買われ、対照的に低金利通貨が売られるという連想が働きます。つまり株高になると、低金利通貨の代表格である円は売られるのです。

リスクを避けようという雰囲気=リスクオフ

逆に、日経平均が大幅に下落したとすると、投資家の行動は消極的・防衛的になり、リスクのある投資やポジションを敬遠することになります。このようにリスクに対する許容度が低下した状態を「リスクオフ(リスク回避)」と言います。

株価が下落し、市場心理がリスクオフの状態になると、リスクオンの時とは逆に、高金利通貨などハイリスク通貨を売って安全通貨に逃避する動きが強まります。株安になると、安全通貨の代表格である円は買われることになるのです。

リスクオン・オフから見る主要通貨の信頼度

主要通貨のリスクランク

ドル円相場に最も大きな影響を及ぼすのは日本株です。日本株の上昇を受けてリスクオン型の円安になり、円安を好感して日本株がさらに上昇するという好循環になりやすいのです。

もっとも、日本株は前日の米国株式市場の影響を強く受けますので、米国株が上昇すれば翌日の日本株の上昇を先取りして円売り、逆に米国株が下落すれば円買いという展開になりやすいことも覚えておきましょう。

ちなみに主要通貨をリスクが高い順に並べてみると、以下のようになります。

  1. 南アランド・トルコリラ・ブラジルレアルなど新興国通貨
  2. 豪ドル・NZドル
  3. ポンド・カナダドル
  4. ユーロ
  5. 米ドル
  6. 円・スイスフラン

以前は安全通貨と言えば円とスイスフランだけでしたが、近年では米ドルも限りなく安全通貨に近い立ち位置になっています。最近のドル円相場は以前と比べてあまり動かなくなっていますが、これは安全通貨のドルと円が同じ方向に動いてしまうことが一因です。

さらに最近ではユーロまでが安全通貨に分類されることがあり、ユーロドルやユーロ円のボラティリティも大幅に低下しています。

株価は金利動向を通じて為替市場に影響を及ぼす

株式と債券の性格は正反対

株と債券はどちらも投資家にとって重要な運用対象ですが、その性格は正反対です。たとえば、株は元本保証がないのはもちろんのこと、業績次第では価値がゼロにもなり得る、ハイボラティリティー・ハイリスク商品の代表格です。これに対して債券は、基本的に償還が来れば元本が戻ってくる元本保証商品であり、ローボラティリティ・ローリスク商品の代表格です。

株式は、企業業績の改善やマクロ経済の成長により無限に値上がりする可能性があります。景気が強くなり物価が上昇するときには、株価も総じて上昇するものです。このため株式はインフレに強い資産であるといえます。これに対して債券は、インフレに弱い資産です。債券の償還額は元本より多くなることはなく、インフレになるとその価値は目減りしてしまうからです。

したがって、株価が上昇するときには債券は売られ(金利は上昇)、株価が下落するときには債券は買われる(金利は低下)という傾向があります。特に、市場が流動的で効率性が高い米国ではこの逆相関関係が明白です。

米国株高=米国債下落=ドル買い

そして米国債利回りとドル円は正の相関関係があります。米国債が売られ利回りが上昇すると、ドル円は買われる傾向にあります。米国債が買われ利回りが低下すると、ドル円は売られる傾向にあります。

つまり、米国株が上昇するときは、市場心理がリスクオンとなるうえ、米国債が売られ利回りが上昇するため、ドル円は二重のサポートを受けることになります。逆に米国株が下落するときは、リスクオフと米国債利回りの低下という二重のハンデを背負うことになるのです。

まとめ

  • 株価上昇はリスクオン・円売りにつながる
  • 株価下落はリスクオフ・円買いにつながる
  • 米国株上昇は米国債利回り上昇を通じてドル買いにつながる
  • 米国株下落は米国債利回り低下を通じてドル売りにつながる
雨夜恒一郎の写真

雨夜恒一郎(あまやこういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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