楽天MT4新規口座開設
「大人の経済」基礎講座

FXトレーダーのための「大人の経済」基礎講座|第3回 金利のきほん~後編[雨夜恒一郎]

ファンダメンタルズ(分析)を体系的に学ぶことができる当企画。前回に引き続き、今回も「金利のきほん」について、雨夜恒一郎さんに分かりやすく解説してもらいます。為替相場と密接な関係にある金利について、分かっているつもりになっているトレーダーも多いはず。ここでしっかりと学習し、確かな知識を身に付けておきましょう。

※この記事は、FX攻略.com2017年8月号の記事を転載・再編集したものです

【関連記事】
FXトレーダーのための「大人の経済」基礎講座|第1回 ファンダメンタルズのきほん[雨夜恒一郎]
FXトレーダーのための「大人の経済」基礎講座|第2回 金利のきほん~前編[雨夜恒一郎]

市場金利と政策金利

前回述べた金利とは、景気やインフレ率といった経済状況、信用リスク、需給要因などによって決まる金利でした。市場で決まる金利ということで、これを「市場金利」といいます。

これに対して、中央銀行が金融政策として決める金利のことを「政策金利」と呼びます。中央銀行は基本的に景気を抑制したいときに利上げ(金融引き締め)を行い、景気を刺激したいときに利下げ(金融緩和)を行います。「景気」を「物価上昇」(インフレ)に置き換えていただいても結構です。

中央銀行は市場金利が政策金利に近くなるように金融調節(=公開市場操作。資金を市中に供給したり、市中から吸収したりすること)を行います。また政策金利を変更すると宣言する「アナウンスメント効果」により、市場心理や金利の価格形成に影響を与えることもできます。

政策金利は、短期金利の誘導目標とすることが多く、米国では「FF金利」、日本では「無担保コール」という銀行間市場の金利を対象としています。

為替市場では米国の金利動向が最も重要視されており、米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)が今後どう動くかに、市場は常に注意を払っています。FRBが現在の経済をどう評価していて、今後どのように金融政策を運営していきたいのかが分かれば、金利動向、ひいては為替相場の見通しもつけやすくなります。

公定歩合とは?

ちなみに、政策金利といえば「公定歩合」という時代もありました。日本の金融市場がまだ十分発達しておらず、規模も小さかった1990年代前半まで、市中銀行の資金調達は日銀貸出に大きく依存していました。

この日銀貸出に適用されていたのが公定歩合であり、公定歩合の上げ下げが政策変更でした。当時は日銀金融政策決定会合もまだなく、金融政策は密室で決められ、突然何の前触れもなく変更が発表されることも少なくありませんでした。

公定歩合は市中銀行の通常の借り入れ金利より低めに設定されたので、公定歩合で資金を調達できれば銀行は無リスクで利ざやを稼ぐことができました。そしてどの銀行にどれだけの貸し出しができるかは、日銀が裁量で決めていました。

したがって、市中銀行は日銀からの貸出枠をできるだけたくさん割り振ってもらえるように、日銀の意向に絶対服従していたわけです。

短期金利と長期金利

金利には短期金利と長期金利があります。通常は期間1年未満の金利を短期金利といい、それ以上の期間の金利を長期金利といいます。短期の金融市場においては中央銀行の存在は絶対的ですので、中央銀行が政策金利を変更すると、市場金利は政策金利とほぼ一致する水準まで動きます。

例えば短期金利が0.75%で推移しているときに、中央銀行が誘導目標を1.00%に引き上げると発表すれば、短期金利はその日から1.00%に上昇することになります。

しかし、中央銀行が影響を及ぼすことができるのはせいぜい期間6か月程度の短期金利までで、それより長い金利となると、中央銀行といえども思いのままにコントロールすることはできません(注)。

例えば、景気を浮揚させるために中央銀行が利下げしたとしても、それでインフレ懸念が強まると市場が判断すれば、長期金利は上昇するということもあり得ます。逆にインフレを抑えようとして中央銀行が大幅な利上げに踏み切ったとしても、それで景気が急激に悪くなると市場が判断すれば、長期金利は低下する場合もあるのです。

そういう意味で、中央銀行の政策金利のコントロールは、凧を上げるのに似ています。凧糸を引っ張ったら凧は上がるとは限らず、コントロールを失って墜落したり、糸が切れてどこかへ飛んでいったりしてしまうこともあるのです。

注:日本銀行は2017年5月現在、10年国債利回りをゼロ%近辺に誘導する「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和」を行っていますが、これは前例がないやや実験的な政策といえるでしょう。

イールドカーブを見れば将来の金利動向が分かる

イールドカーブとは、債券の利回りを短期から長期まで順に線で結んでグラフ(縦軸が利回り、横軸が期間)にしたもので、「利回り曲線」とも呼ばれています。

右上がり、つまり長期になるほど利回りが高くなる状態を「順イールド」、右下がり、つまり長期になるほど利回りが低くなる状態を「逆イールド」といいます。これらの期間と利回りの関係を「金利の期間構造(タームストラクチャー)」といいます。

ではイールドカーブは何を表しているのでしょうか。非常に単純に言えば、順イールドの場合には将来金利が上がると予想されており、逆イールドの場合には将来金利が下がると予想されている、ということです。

債券価格は金利と逆に動きますから(金利が上昇すれば価格は下落し、金利が低下すれば価格は上昇する)、将来金利が上がりそうな局面では償還までの期間が長い債券ほど価格の下落リスクが高くなり、利回りは右上がりになっていきます。

逆に将来金利が下がりそうな局面では、償還までの期間が長い債券ほど価格の上昇期待が高まりますから、利回りは右下がりになっていくのです。将来の金利が現在とあまり変わらないと予想されているときには、イールドカーブは横ばいか、わずかに右上がりになります。

短期金利が極端に高いとき(将来大幅な利下げが予想される局面)を除けば、イールドカーブは長期になるほど高くなる順イールドになるのが普通です。これは、長期になるほど債券の流動性が低下し、価格変動リスクが高くなるからです。このリスクに応じて上乗せされた金利分を「流動性プレミアム」といいます。

イールドカーブはきれいな右肩上がりや右肩下がりになるとは限らず、ある期間がボトムまたはピークをつけるV字型や逆V字型になることもあります。

\GogoJungleで売れ筋投資商品を探そう!/

スティープニングとフラットニング

イールドカーブの勾配が急になっていくこと、つまり長短金利差が拡大していくことを、「スティープニング」と呼びます。スティープニングの際、カーブ全体が上昇している状態のときを「ベア・スティープニング」、カーブ全体が低下している状態のときを「ブル・スティープニング」といいます。

逆にイールドカーブの勾配が平坦になっていくこと、つまり長短金利差が縮小していくことを、「フラットニング」と呼びます。フラットニングの際、カーブ全体が低下している状態のときを「ブル・フラットニング」、カーブ全体が上昇している状態のときを「ベア・フラットニング」といいます。

ブルとベアが逆のように感じるかもしれませんが、債券の場合は金利低下が価格上昇(ブル)、金利上昇が価格低下(ベア)となるので、このような呼び名になります。

この四つがどのようなときに起きるかというと、景気サイクルと中央銀行の金融政策の組み合わせによって決まります。

①ベア・スティープニング
景気がボトムを打ち、金融緩和が終わるときに起こります。利上げを先取りして長期金利が短期金利より先に上昇し始めるからです。

②ベア・フラットニング
景気が過熱して、中央銀行が金利を引き上げているときに起こります。短期金利が長期金利に追いつく形で上昇し、長短金利差が縮小するからです。

③ブル・フラットニング
景気がピークアウトし、金融引き締めが終わるときに起こります。利下げを先取りして長期金利が短期金利より先に低下し始めるからです。

④ブル・スティープニング
景気が悪化して、中央銀行が金利を引き下げているときに起こります。短期金利が低下し、長短金利差が拡大するからです。

米国債のイールドカーブ

では実際にイールドカーブを見てみましょう。米国債のイールドカーブは米国財務省のウェブサイトでリアルタイムに見ることができます。最新のデータのみならず、1990年まで遡ることができ、大変便利なサイトですのでぜひブックマークしておいてください。

期待インフレ率=BEI

債券の利回りを利用して、将来のインフレを予測することもできます。市場の期待インフレ率は以下の式で求められます。

期待インフレ率=普通国債利回り−物価連動国債利回り

物価連動債(インフレ連動債)とは、物価上昇率に応じて元本が変動する債券です。通常の債券は将来の利払い額や満期日に償還される元本が不変であるため、物価が上昇すると実質的に価値が目減りしてしまいますが、物価連動国債は物価上昇に連動して元本と利払い額が増加するため、インフレに強い債券といえます。

逆に物価上昇率がマイナスとなると、元本と利払い額も減少してしまいます(元本が保証されている物価連動債もあります)。したがって、物価連動債の利回りはインフレを含まない純粋な金利、つまり実質金利と捉えることができます。

名目金利は、実質金利と期待インフレ率+リスクプレミアムに分解できることを前回説明しました。つまり、名目金利である普通国債利回りから実質金利である物価連動国債利回りを引けば、期待インフレ率が分かるというわけです。

このように算出された期待インフレ率を「ブレークイーブン・インフレ率」(BEI)と呼んでいます。通常は10年債の利回りで比較します。

先ほど紹介した米国財務省のウェブサイトで、直近(5月19日)のイールドカーブを見てみましょう(図①)。上が普通国債利回り(名目金利)で、下が物価連動国債利回り(実質金利)です。10年で見ると、名目が2.23%、実質が0.41%ですから、期待インフレ率は1.82%ということになります。

現在の米国のインフレ率(PCEコアデフレータ)は前年比1.6~1.8%といった水準ですので、市場は今後10年にわたってインフレ率は今とあまり変わらないと見ていることが分かります。

ではこの米国財務省のウェブサイトで、今からちょうど10年前の2007年5月18日のイールドカーブを見てみましょう(図②)。

10年債利回りは4.81%、実質金利は2.46%です。期待インフレ率は2.35%と、今よりずっと高い水準です。1か月の短期金利でも4.78%もあります。2007年5月といえば金融危機の発端となったパリバショックが起こる前。最近FXを始めた方はご存じないかもしれませんが、米国が金融危機に見舞われる前は、米国の金利はこのくらいが普通だったのです。

ちなみに図③は今から27年前、1990年5月18日のイールドカーブです。なんと10年債利回りは8.75%もあります。3か月金利でも8%です。今では全く考えられない高金利ですね。

インフレ時代とデフレ時代

ではなぜ昔は金利がこれほど高かったのか、なぜ今は金利がこれほど低いのか。その答えは実質金利=期待成長率と期待インフレ率の変化にあります。

金融危機の影響で米国経済がリセッション(景気後退)に陥ったのが2007年~2009年。これを境に期待成長率が大きく押し下げられ、それまで2%以上あった実質金利がマイナスになってしまったのです。そして前述の通り現在も実質金利は0.41%と低いままです。

また、昔と比べて物価も上昇しにくくなっています。名目金利の構成要素である期待インフレ率が大きく低下しているのです。経済のグローバル化によって中国や東南アジアなどのプレーヤーが新規参入し、低価格で製品を世界中に供給するようになったこと、インターネットを中心としたITの発達により各種コストが激減したこと、そして労働市場の構造変化(正規雇用が減り非正規雇用が増えた)により人件費が上がりにくくなったことなど、供給サイドに大きな変化が起こったことが背景にあります。

世界的に経済がインフレ時代からディスインフレ時代(インフレになりにくい時代)に変化したからだともいえるでしょう。昔は中央銀行といえばインフレファイターが崇められましたが、現在は先進国の中央銀行はインフレよりデフレを警戒しています。 

第3回まとめ

・金利には短期金利と長期金利がある
・イールドカーブを見れば金利動向をつかめる
・「普通国債利回り-物価連動国債利回り」で期待インフレ率を算出できる

※この記事は、FX攻略.com2017年8月号の記事を転載・再編集したものです

ABOUT ME
FX攻略.com編集部
日本で唯一の月刊FX情報誌『月刊FX攻略.com』を2008年から10年以上発行してきた編集部です。
トレイダーズ証券 みんなのFX
あなたに最適なFX会社・取引口座を見つけよう!!
【FX会社比較】10年以上FX専門誌を発行してきたFX攻略.com編集部が調査しました

「これからFXを始めよう」と思ったとき、意外と悩んでしまうのがFX会社、取引口座選びではないでしょうか? でも大丈夫。ご安心ください。先輩トレーダー達も最初は初心者。みんなが同じ悩みを通ってきているんです。

10年以上にわたってFX月刊誌を出版してきた老舗FXメディア「FX攻略.com」編集部が、FX用語を知らない人でもわかるようにFX会社、取引口座のポイントを解説しました!

取り上げているFX会社は、金融商品取引業の登録をしている国内FX業者です。口座開設は基本的に無料ですので、まずは気になったところで2〜3つ口座開設してみて、実際に比べてみてはいかがでしょうか

\FX会社によって違うところをチェック/

スプレッドFX取引における取引コスト。狭いほうが望ましい。
約定力狙った価格で注文が通りやすいかどうか。
スワップポイント高水準かどうか。高金利通貨の取り扱いの数。
取引単位少額取引ができるかどうか。運用資金が少ないなら要チェック。
取引ツール提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。
シストレ・自動売買裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。
サポート体制サポート内容や対応可能時間の違いをチェック。
教育コンテンツ配信されるマーケット情報や投資家向けコンテンツの有無。
キャンペーン新規口座開設時や口座利用者向け各種キャンペーンの内容。

FX会社を比較・検討
したい方はこちら >>
FX会社を一社ごとに
見たい方はこちら >>

あわせて読みたい