レバレッジが10倍になったらFXはどうなる?[鹿内武蔵]

FX業界で今もっともホットなニュースといえば、9月27日の新聞報道で突如明るみに出た「レバレッジ10倍規制」です。10月20日時点では、金融庁からの正式な発表があったわけではありませんが、仮に実現すればFX業界、そしてなにより個人投資家にとって非常に大きな影響があります。そのため、この記事では「もし10倍になったらどうなる?」について解説していきます。

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スイングトレード、スワップ狙いには影響なし

投資において、基本的に利益確定の金額と損失の金額は比例して大きくなったり、小さくなります。クロス円で1円、2円と大きな値幅を狙う中長期のトレードの場合、狙う値幅広い分、損切りの幅も広くなるため、必然的に資金に対してポジションサイズが小さくなります(=低レバレッジ)。

数日から数週間ポジションを保有するスイングトレードや、スワップポイントを狙う高金利通貨ペアの長期保有は、低レバレッジが前提のため、今回の規制が実施されても実質的には影響がありません。

ただし、同じような長期的運用でも、トラリピ、ループイフダン、iサイクル注文といったリピート系の自動売買は、事前に売買の注文を予約しておく仕組みなため、その予約に必要な証拠金が増えることにより、資金効率が悪化します。

デイトレード、スキャルピングは影響大

逆に一度のトレードの利益幅、損失幅が狭い短期のトレードは、ポジションサイズを大きくしても危険ではありません。むしろ利幅が狭いからこそ、ある程度レバレッジをきかせて、ポジションサイズを大きくして取引しないと収益性が確保できません。つまり、今回のレバレッジ規制は、デイトレやスキャルをするトレーダーにとっては、非常にネガティブなニュースになります。

例として、ドル円の価格が115円なら、レバレッジ10倍だと1万通貨取引をするためには11万5000円の証拠金が必要です。つまり、資金10万円でも1枚のトレードができないわけです。これがじっくり時間をかけて大きな波を狙いにいく長期的な戦略なら問題ありませんが、数pipsを取りに行くスキャルピングの場合は、明らかな収益減に直結します(もちろん、長期的に資金を増やせるトレード技術を持っている場合)。

参入ハードルが高くなり、新規プレイヤーが減る

是非はともかくとして、常に新しい為替相場への参加者がいることで、この業界は発展してきました。しかしレバレッジが10倍に制限されれば、明らかに参入障壁が上がり、新規プレイヤーの減少につながります。

FXの大きな魅力として、少額でも投資手法に制限がない点があげられます。例えば個別株なら、資金が少ないと買えない銘柄が出てきますが、FXの場合なら資金が少なくても、たくさんの資金を持つ人と同じ行動が取れます。つまり、少ない資金で投資を始めることのデメリットが少ないのがFXといえます。しかしレバレッジが下がれば、この魅力は明らかに後退します。

スプレッドの影響度が減る

低レバレッジに制限されれば、必然的に中長期トレードが主体となるため、レバレッジが狭いことのメリットがそこまで目立たなくなります。10pipsを狙うスキャルなら0.1pipsのスプレッド差も無視できませんが、500pipsを狙うスイングトレードならそこまでスプレッドの差が気にならないでしょう。

FXに対するマイナスイメージは払拭されるが

いまだ世間にはFXのことをギャンブルだという人が多くいますが、今回のレバレッジ制限でFXの安全性が強引にでもアピールされれば、そういった誤解の解消につながるでしょう。

ただし、これはあくまで「お上」からの強制措置です。FXで資産を失ってしまう人の問題点は、レバレッジが高いことではなく、資金管理の基礎ができていない、つまり「これ以上負けたら困る水準」に逆指値注文を入れていないからです。もっとも端的にいうなら、損切りをしないからです。

たしかにレバレッジを制限すれば、強制ロスカットになってしまう人の数は減るはずですが、それは根本的な解決ではありません。FXの基礎をちゃんと学んでいれば、レバレッジが1000倍でも強制ロスカットになる前に、自分で仕掛けた損切りにヒットするはずです。口座が吹き飛ぶこととハイレバであることは、直接には無関係です。

他の金融商品に投資家が流れる

レバレッジが制限されて、ほんの少しずつしかお金が増やせないなら、他の金融商品に投資家が流れる可能性があります。例えば仮想通貨なら、ボラティリティ(変動幅)が大きく、それなりにレバレッジもかけられ、少額でも参加でき、なおかつ最近は話題になることも多いですから、有力なFXからの鞍替え先になるでしょう。

海外の口座に投資家が流れる

金融庁管轄外の海外FX口座には、ハイレバレッジでトレードできるところがたくさんあります。国内口座のレバレッジが下がれば、相対的に海外口座のレバレッジが魅力的に感じる人も増えていくでしょう。

海外のFX口座の中には、フェアに営業している会社ももちろん多くありますが、それと同時に出金トラブルなどの事例もあります。

トラブル発生時に、国内FX会社のような相談先がなく、なおかつ英語でのコミュニケーションが必要になるケースもあるため、少なくともFX初心者や語学な苦手な方にはお勧めできません。

まとめ

こうして見ていくと、レバレッジが制限されることで、問題のない層(長期トレード、リピート系)も多くいる反面、明らかにデメリットとなる層(短期トレード、資金が少ない投資家)も多くいます。

あくまで私の考えですが、今回のレバレッジ制限は、やはり総合的にFXの魅力や可能性を閉ざすものであると思います。

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鹿内武蔵(しかうちむさし)

株式会社tcl代表取締役。2008年のFX攻略.com創刊時から編集部に在籍、本誌と公式サイトの運営に携わる。取材や記事執筆の他、トレーダーとしてFXの運用も日々行っている。好きなテクニカルは平均足、好きな手法はブレイクアウト。

公式サイト:株式会社tcl