人民元急落で恩恵を受ける通貨は?[雨夜恒一郎]

先週の人民元相場は対ドルで一時6.237元と約13か月ぶりの安値をつけた。年初の高値6.03元から比べて3.4%あまりの下落である。

昨年までは、中国の大規模な貿易黒字や欧米の元安批判を背景に人民元はじりじりと上昇していくというのが大方の見方であり、1ドル=6元割れも時間の問題と見られていた。

人民元相場にいったい何が起こっているのだろうか。

人民元が明白に下落し始めたきっかけは2月18日の中国人民銀行通貨政策会合である。

以来、人民銀行は連日市場で人民元「売り」介入を実施し、変動幅を1%から2%に拡大するとのうわさが流れた。そして、3月1日には正式に人民元の一日あたりの変動幅を2倍に広げることを発表し、うわさは現実となった。

中国当局は何を意図しているのか真相はわからないが、今後予想される自由変動相場へ移行を見据えての「地ならし」という見方が有力だ。

これまで人民元相場の上昇が続くという前提で投機的な資金が流入した結果、人民元相場は2010年以来ほぼ一本調子で10%あまり上昇してきた。

投機筋に「罰」を与えることで、「今後は上下双方向に動くことが常態化する」(人民銀の易綱副総裁)との意識を市場心理に刷り込むことが目的というわけだ。

だとすれば人民銀行による元安誘導と投機的な元ロングの巻戻しはしばらく続くと見た方がよい。

投機的な資金流入が細り、人民元相場の上昇が一服することで、中国の輸出産業は恩恵を受けることになるだろう。

人民元の下落を、中国の一部社債や理財商品のデフォルトと関連付けてリスク回避要因ととらえる見方もあるが、人民銀行が意図的に元安誘導しているわけだから、この見方は正しくない。

実際上海総合指数は先週2050ポイントまで上昇し、2週間ぶりの高値をつけている。

人民元の下落を中国経済にとってプラス材料と見るならば、中国との経済的関係が強い豪州にとっても朗報となるだろう。

豪ドルは、このところのウクライナ情勢の悪化や中国の金融システム不安といった悪材料にもかかわらず0.90-0.91ドル台と底堅く推移しており、人民元の下落をポジティブに受け止めている可能性がある。

豪州自体の景気も、第4四半期GDPや2月雇用統計が予想より強い結果となるなど底堅さを増しており、金融緩和サイクルは終了との見方が強まっている。

ドル・ユーロ・円が膠着状態となる中、今後は豪ドルの買い妙味がクローズアップされる可能性が出てきた。

チャート上も1月の0.86ドル台をボトムに逆ヘッドアンドショルダーを描いており、上値を拡大する動きが期待できそうだ。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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