ドルの基調は強い 北朝鮮は“ノイズ”[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2017年10月9日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は112~113円台で一進一退の展開に終始した。スペイン・カタルーニャ自治州の住民投票結果(90%が独立に賛成)や、週初に発生したラスベガスでの銃乱射事件にも強いリスクオフの反応は見られなかった。一方金曜日には、米国9月の雇用統計が強い結果となったことから一時113.44円と7月中旬以来の高値をつけたが、「北朝鮮は今週末、米西海岸に到達可能なミサイル試射の用意が整った」との報道を受けて112円台へ反落した。

9月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比-3.3万人と7年ぶりのマイナスとなったが、これはハリケーンの被害で飲食店や小売店が休業した影響が大きく、一時的な現象とみられる。一方、失業率は4.2%と予想の4.4%を下回り16年ぶりの低水準となった。労働市場の逼迫は引き続き強く、今後は災害復旧が需要をさらに押し上げる可能性が高い。

さらに、市場がインフレの先行指標として注目する平均時給の伸び率は、前年比+2.9%と予想の+2.5%を大きく上回り、2009年5月以来の高水準となった。下のチャートを見ると、1年にわたるもみ合いを抜け出し上昇基調が再開したようにも見える。2%のインフレ目標達成のために必要とされる3%が射程に入ったことで、FRBの利上げがさらに正当化されることになるだろう。


米国平均時給伸び率(前年比) 出所:米国労働統計局

この雇用統計の結果を受けて、FF金利先物が織り込む12月の利上げ確率は90%に達し、来年3月に再度利上げが行われる確率も35%を超えた。1週間前はそれぞれ70%、24%であったから、市場の金利観はこの1週間で大きく動いたと言える。本来であればドルはもっと上昇していてもおかしくなかった。

北朝鮮を巡る地政学リスクだが…

ドルの上昇を妨げた最大の要因が、北朝鮮をめぐる地政学リスクであることは明白だ。北朝鮮は明日10月10日に労働党創建日を迎える。北朝鮮が米西海岸に到達可能な長距離ミサイルの発射実験を行うとすれば今週である可能性が高く、今日・明日は特に要注意だ。

ただ過去の経験則から言えば、北朝鮮がミサイルを発射すると、ドルは一瞬売られるものの、その後はむしろ発射前より上昇するケースのほうが多い。北朝鮮は米国との交渉の材料としてミサイルを誇示しているのであって、本気で米国の領土へミサイルを撃ち込むとは考えられないからだ。米朝の緊張をよそに日米韓の株価は上昇を続けているし、恐怖指数VIXも10ポイントを下回っている。もし北朝鮮が今週ミサイル発射実験を強行したとしても、織り込み済みの反応となる可能性が高く、むしろ材料出尽くしでドルが上昇する可能性もある。

米国の金利動向を軸に考えるならば、ドルの基調は強いと見るべきだ。北朝鮮がらみの「ノイズ」で下押しした局面で買い場を探すのが得策と考える。

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雨夜恒一郎(あまやこういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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