日銀総裁人事情報に注意[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2017年11月27日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、111円台前半まで続落。イエレンFRB議長がNY大学での講演で、「インフレ率は目標を下回っており段階的な利上げが適切。目標に届かないことを容認することは非常に危険」などインフレに弱気な見方を示したことや、FOMC議事録で「数人が弱いインフレで当面の利上げに反対。低いインフレ期待を幾人かが懸念」などハト派的見解が記されたことが材料視された。 

先週の当コラムでは、感謝祭を境に市場が休暇モードに入るため、ポジション手仕舞いで下値が脆弱と予想したが、おおむねそのような展開となった。日米の祝日をはさんで市場全体に活気がなく、風船の空気が抜けていくような下げ方であった。

今週も状況に変化乏しく

今週も状況にあまり変化はない。12月13日のFOMCでの利上げはすでに確実視されており、新たなドル買い意欲を喚起するとは思えない。むしろFOMCメンバーの一部は低インフレを懸念しており、票が割れる可能性もある。来年の利上げペースは、パウエル新議長のスタンスが未知数のため不透明となっている。ユーロが対ドルで急騰していることもあり、現在ドルインデックスは下降線をたどっている。ドル円もしばらく軟調な地合いが続くと見ておくのが賢明だろう。

隠れた円高リスクになり得る日銀総裁人事の行方

さて先週は、安倍首相が米エール大学名誉教授の浜田宏一内閣官房参与、本田悦朗駐スイス大使と会談したと報じられたことから、日銀総裁人事について意見交換したとの観測が出た。浜田・本田両氏は安倍首相の経済ブレーンである。そして黒田日銀総裁は来年4月に任期切れを迎える。

黒田総裁が打ち出したインフレ目標はいまだ達成されておらず、また異次元金融緩和からの出口は困難を極めることから、筋論で言えば黒田総裁は幕引きまで続投するべきだろう。安倍首相は黒田総裁の手腕を信用していると述べており、浜田内閣官房参与も黒田総裁の続投を支持していると語っている。このまま黒田総裁の再任観測が強まれば、市場は安堵することになるだろう。

しかし歴代の日銀総裁を見渡してみても、2期連続5年以上務めた総裁はほとんどいない(2期目を務めた3人はいずれも任期半ばで退いている)。

参考:日本銀行|歴代総裁

日銀総裁というのはそれほどまでに権謀渦巻くポストなのだ。日銀プロパー勢が、たすき掛け人事(日銀出身者と旧大蔵省OBが交互に総裁を務めること)を盾に「今度は生え抜きを」と、中曽宏・現副総裁や雨宮正佳理事(日銀生え抜きのエースと言われる人物)を強く推してくる可能性も小さくない。もしそうした見方が出てくれば市場は大きく動揺することになるだろう。新規材料が乏しいこの時期、日銀総裁人事に必要以上に神経質になることが、隠れた円高リスクとなるかもしれない。

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雨夜恒一郎(あまやこういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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