日銀のオペ減額を受けた円高は過剰反応か?[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年1月15日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、113円台から111円割れまで下落。きっかけとなったのは日銀が超長期国債買い入れオペ(10年超~25年以下)を従来の1000億円から900億円に減額したことだ。中国が外貨準備による米国債購入を減額もしくは停止するとの思惑もドル売りに拍車をかけた。

新年早々浮上してきた新たな円高シナリオ

日銀の動きを受けた円高については、投機筋によるポジション巻き戻しの後付け理由との指摘もある。事実、9日の日銀のオペ減額の公表と円高進行のタイミングには若干の時間差があった。また日銀のオペ減額はこれが初めてではなく、2016年9月にイールドカーブ・コントロール政策が導入されて以来、買い入れ額を徐々に減額している。長期国債の年間増加額目標80兆円は「めど」に修正され、現在では50-60兆円ペースとなっている。いわゆる「ステルス・テーパリング」である。わずか100億円の減額に、市場は過剰反応しているようにも見える。

しかし、欧米と比べて周回遅れだった日銀が、最近の景気回復や株高を受けて、いよいよ市場との対話を始めるとの見方はあながち的外れとは言えない。黒田総裁は今年4月に任期満了を迎えるが、もし再任の目が薄いとすれば、自ら始めた異次元緩和の幕引きにある程度めどをつけたいと考えるかもしれない。もしそうだとすれば、あるいはそうした思惑だけでも、今年の為替相場の動向を決定づける材料になる可能性がある。

というのも、2013年末から2015年までのFRBのテーパリングを背景としたドルの大幅上昇、そしてここ最近のECBのテーパリングを材料としたユーロの急上昇をみれば明らかなように、通貨が最も力強く上昇するのは、出口が水平線のはるか向こうに見えてきた瞬間なのだ。極端に言えば、市場はテーパリングの最中に利上げの大部分を先取りしてしまい、実際に利上げが始まるとむしろ材料出尽くしで売られてしまう。実際、FRBは2015年末の利上げ開始以来2年で5回利上げしたが、ドル円は開始前より大幅に下落している。 

こうした市場先回りの論理から言えば、ドルの最盛期は2015年ごろに終わっており、ユーロもそろそろピークアウトする公算が大きい。そして今後、上昇余地が最も大きい通貨は何かといえば、これから出口に向かって一歩を踏み出す(かもしれない)円ということになる。世界的な緩和解除の流れの中で、金融緩和の最後の牙城だった日銀が落城すれば、金融市場は少なからず動揺するはずだ。これもキャリートレードの巻き戻しなどで円高要因となる。

新年早々浮上してきた新たな円高シナリオ。果たしてどこまで市場心理を揺さぶるのか注目したい。 

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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