悪い金利上昇ならドル上昇余地も限定的[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向  2018年5月21日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、米国債利回りの上昇を背景にじり高の展開となり、一時1月以来の高値となる111.08円まで上昇した。米国10年債利回りは一時3.12%まで上昇し、2011年7月以来の水準へ、政策金利動向に敏感な2年債利回りも2.59%に達し、2008年8月以来約10年ぶりの高値をつけた。

この金利上昇が好調な米国経済と利上げ期待のおかげであることは間違いないが、ほかにもあまり歓迎できない材料が寄与していることを見逃してはならない。それは「原油高」と「国債発行増」だ。

原油相場は先週72ドル台へ上昇

原油高に関しては、明らかに中東の地政学リスクが影響を及ぼしている。トランプ大統領は5月8日、イラン核合意から離脱することを発表。イラン核合意とは2015年に米欧とイランが合意した「包括的共同行動計画」で、イランが核開発を大幅に制限する見返りに、米欧は金融制裁やイラン産原油の取引制限を緩和するというもの。トランプ大統領は「合意には致命的な欠陥がある」とし、大統領選中から離脱を公約にしていた。今後米国がイランに対する制裁を強化すれば、原油供給が影響を受けることは必至だ。原油相場は先週72ドル台へ上昇し、2014年11月以来の高値を更新中だ。チャート上も明らかに上昇トレンドに入っており、今後は100ドルを目指すとの見方もある。原油高は期待インフレ率を押し上げ、長期金利を上昇させる。

WTI先物月足 出所:NetDania

米国が国債大増発時代に突入

国債発行額は今後数年にわたって大幅増が避けられない情勢だ。国防費やインフラ投資の増加で米連邦政府の歳出が増える一方で、政府の歳入にあたる税収は昨年成立した大型減税のおかげで減少するので、不足する資金は国債増発で賄うしかない。「ニューエコノミー」や「ゴルディロックス」といった耳当たりのよいキーワードで誤魔化されていたが、米国が国債大増発時代に突入したという都合の悪い真実を、市場もようやく認識し始めたといってよい。国債発行額が増えれば当然需給が崩れ、利回りは上昇する。

米国債利回りは今後もじわじわと押し上げられていく公算が大きい。しかしそこには「悪い金利上昇」も含まれていることに注意が必要だ。今のところ為替市場は米国債利回りの上昇をドル強気材料と考えているが、インフレやリスクプレミアムの上昇による悪い金利上昇は、本来は強気材料ではない。筆者が現在のドル高の持続性に関して懐疑的にならざるを得ない理由がここにある。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

twitter:https://twitter.com/geh02066

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