新たな大相場の幕開けか?[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年7月16日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場はドル買いが一段と強まり、一時112.80円と1月以来半年ぶりの高値を付けた。トランプ大統領が2000億ドル相当の新たな対中関税リストを公表したことを受けて、ドルが売られる場面もあったが、長続きしなかった。前回の当コラムでは、「貿易摩擦がらみの話題が下火となり、日米の金利差やファンダメンタルズ格差を背景としたドル堅調の地合が鮮明になってくるだろう」と予想したが、おおむねそのような展開となった。

米中貿易摩擦は一段とエスカレートしつつあるが、市場では「貿易戦争の勝者は米国」との見方が浮上し、ドル買い材料とみる向きも少なくない。中国が米国による追加関税に対して同規模の関税で応酬しようとしても、米国からの輸入がそこまで大きくないためこれ以上報復できない。貿易戦争の結果、世界経済が打撃を受けたとしても、米国は輸出に依存しているわけではないので影響は比較的小さくて済む。また結果的に米国の貿易赤字が縮小すれば、それも理論的にはドル買い材料となる。

従来、貿易摩擦は米国のドル安誘導とセットになっていたが、今回はそれも当てはまらない。今回の焦点は関税措置がメインであり、しかもその先にはハイテク分野での長期的な覇権争いが絡んでいる。米国も国際M&Aで有利となるドル高に異議を唱える気はないのだ。過去の経験則である「貿易摩擦=ドル売り・円買い」に従った参加者は、先週損切りを余儀なくされたであろう。

金利動向もドル高を正当化

一方、金利動向やファンダメンタルズに目を向けると、やはりドル高が正当化されやすい状況だ。先週発表された米国6月の生産者物価指数(食品・エネルギーを除くコア)は前年比+2.8%と予想の+2.6%を上回り、消費者物価(同)も+2.3%と予想通りながら前回の+2.2%から上昇が加速した。すでにFRBは先月のFOMC会合で、「FF金利の緩やかな引き上げが正当化される」「FF金利は長期的に到達すると見込まれる水準を下回る」というハト派的なフォワードガイダンスを削除している。インフレ目標の達成が確実となれば、金融政策も正常化していくことは間違いない。ちなみにドットプロットチャートによると、FOMCメンバーが長期的に適切と考えるFF金利の水準は2.75%~3.0%、つまり利上げ余地は少なくともあと1%あることになる。ドルの上昇余地もまた小さくない。

ドル円は新たな大相場の予感

チャートの形状に目を向けてみよう。先週の大幅上昇により、昨年10月の114.74円と今年3月の104.60円を起点とした三角保合いからの上放れが明確となった(図1)。

図1 ドル円日足

さらに週足で長期の動きを見ると、2015年のアベクロ相場のピークから引き下ろしてきた弱気のトレンドラインもブレイクしつつあることがわかる(図2)。何相場なのかはまだ判然としないが、新たな大相場のエネルギーを感じずにはいられないチャートである。

図2 ドル円週足

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

twitter:https://twitter.com/geh02066

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