FRBの利上げスタンスを背景としたドル高に変化なし 貿易戦争はノイズ[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年8月6日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、日銀金融政策決定会合を通過したことから材料出尽くしで円を売り戻す動きとなり、一時112.15円まで上昇。しかしその後は米中貿易摩擦に対する懸念が再燃し、111円台で上値が重い展開に。金曜日に発表された米国7月の雇用統計が予想を下回ったこともあり、111.10円まで押し戻された。

日銀に金融引き締めの意図なし

日銀金融政策決定会合は、金融市場のオペレーションを「柔軟化」し、長期金利が0.2%まで上昇することを容認する姿勢を示したものの、これは想定の範囲内。一方で黒田総裁が政策金利のフォワードガイダンスを初めて公表し、当面金融緩和を維持する姿勢を強調したことから、「日銀が緩和政策の出口戦略を示唆する」との観測は胡散霧消した。先週の当コラムで予想した通り、日銀に金融引き締めの意図がないことがはっきりしたため、この話題による円買いの流れは終了と考えていいだろう。

FRBの二大目標は達成

米国雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が+15.7万人と確かに予想の+19.3万人を下回ったが、5月と6月が計5.9万人上方修正されていることを勘案すれば悪くない結果といえる。失業率は4.0%から3.9%に低下し、平均時給は前年比+2.7%と前月と変わらずだった。驚くほど強い数字ではないにしても、労働市場は引き続き完全雇用状態にあることに変わりはなく、FRBが利上げをためらう材料にはなりえない。またインフレ率は目標の2%をすでに超えており、FRBの二大目標(雇用の最大化と物価の安定)は達成されたといってよい。9月と12月にそれぞれ0.25%ずつ利上げするとの見方は一段と強まり、今後もドル買いをサポートするだろう。

対米貿易戦争の敗者は?

米中の貿易問題は、米国が中国からの輸入品2000億ドルに対する関税率を当初の10%から25%に引き上げる可能性を示し、中国も直ちに米国からの輸入600億ドル相当に最大25%の報復関税を計画すると発表するなど、摩擦が激化している。ただメディアがこの話題を毎日のように取り上げていくうちに、市場にも耐性が備わってきているのも確かだ。貿易戦争の敗者は結局は中国と欧州との見方も定着しつつあり、ドルの総合的な強さを示すドルインデックスは1年ぶりの高値圏で推移している。この材料によるドル売り・円買いは限定的と考えている。

ドル高トレンドに変化なし

今週は重要イベントが一巡し、材料難となることが予想されるうえ、お盆休みが近づき国内外とも夏休みムードが漂い始める時期だ。本来のドル高トレンドには変化はないとみるが、市場全体の動意が乏しいため、無理にポジションを大きく傾けずに、小刻みな売買に徹するのが賢明だろう。ただ貿易戦争などの「ノイズ」でドル円が売られる局面では買い場を探すスタンスで臨みたい。

 

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

twitter:https://twitter.com/geh02066

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