ドル円112円突破!それでも上昇が続かないと見る理由[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年9月17日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、111円台を値固めし112円台へ浮上。トルコ中銀が予想を上回る大幅な利上げを実施し、トルコリラが急反発したことや、米中貿易問題打開への期待感が高まったことから、リスク回避ムードが後退。また米国10年債利回りが6週間ぶりに節目の3%台に乗せたことがドルをサポートした。米8月の生産者物価指数と消費者物価指数はともに予想を下回り失望の結果となったが、相場への影響は限定的だった。

ドル円相場に方向性が出るには?

ドル円は当面のレンジ上限と想定していた112円を上回ってきたが、ここから新たな上昇トレンドに発展していく可能性はどれほどだろうか。筆者はその可能性はあまり高くないと考えている。現在、ドルと円がともに安全通貨と認識されており、新興国市場や米中貿易問題などのリスク要因をにらみながら並行して動くからだ。

市場の緊張が高まりリスク回避ムードが強まるときはドル高・円高、逆に緊張が緩和しリスク選好ムードが強まるときはドル安・円安となり、結局ドル円は方向性が出ない。現在ドル円はレンジの上限を突破したように見えるが、実際はレンジの「のりしろ」部分に差し掛かっただけかもしれない。

ドル円相場に方向性が出るには、やはりファンダメンタルズ動向や金利観の変化が必要だ。米国の景気は確かに好調だが、年内あと2回利上げが行われることはすでに織り込み済みとなっている。「次の次」まで先取りされている利上げがドル円の新たな買い材料となるとは考えにくく、来週のFOMCで予想通り利上げが実施されれば、むしろ材料出尽くしで逆にドル売りとなる可能性が高い。

来年以降のシナリオ

では来年以降はどのようなシナリオになっているのか。前回6月のドット・プロット・チャート(図1)を見てみると、FOMCメンバーは来年から再来年にかけて緩やかな利上げが続き、2019年末のFF金利は3.0%、2020年末のFF金利は3.5%が適切と見ていることがわかる。

図1 6月FOMCのドット・プロット・チャート 出所:FRB/CME

ところが、市場が予想している2019年末と2020年末のFF金利の水準は、いずれも2.8%程度に過ぎない(図2)。つまり市場は、当局が適切と考える水準までの利上げは予想しておらず、金利は3%手前で頭打ちになると見ていることになる。最終的に当局と市場のどちらが正しいのかはわからないが、「当局の公式見解>市場の金利観」という状態では、ドルの上昇にはおのずと限界がある。また来週のFOMCでドット・プロット・チャートのほうが市場の予想に近づくようであれば、ドルの急落を招きかねない。

図2 FF金利先物のテーブル(100から価格を引いたものが金利となる) 出所:CME

とはいえ、今後しばらくは日米金利差の拡大が見込まれる中で、ドル円を積極的に売り込んでいくこともなかなか難しいだろう。当面はドルの上値が限られるものの、下落するわけでもない、高止まりの状態が続く公算が大きい。引き続きレンジ内での小刻みな売買に徹するのが得策であろう。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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