FOMC利上げで材料出尽くしの反応に注意[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年9月24日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、112円を突破し112.87円までじり高の展開。トランプ大統領が2000億ドル規模の中国からの輸入品に対する制裁関税を発表したが、市場は意外なほど冷静で、米国株や米国債利回りの上昇を背景にドル買い・円売りが終始優勢となった。米国株式市場ではNYダウが8か月ぶりに過去最高値を更新し、米国10年債利回りは3%台を回復した。

米中貿易戦争に楽観的すぎる市場

トランプ米大統領が仕掛けた対中制裁関税は今回が初めてではなく、7月と8月に発動した合計500億ドル(税率25%)に続く第二弾だ。しかし今回の2000億ドルの輸入品に対する税率は10%にとどまるため、市場は「米国経済に対する影響は限定的」と受け止めたようだ。ただし中国がこれに報復措置をとれば、来年以降税率は25%に引き上げられるとされており、泥沼化は必至。たまたま株式市場が強気局面にあったから「影響が限定的」のように感じられただけで、市場は事態の深刻さをあまり深く考えていない可能性がある。株式市場が調整局面に入ったときには全く違う反応となることも考えられ、過度の楽観は禁物である。

ドット・プロット・チャートに注目

さて今週の注目材料はFOMCだ。かねて「緩やかな利上げ」(FOMC用語でいうところの0.25%ずつ年4回の利上げ)を予告しており、3月・6月に続いて9月と12月にも利上げが行われることは既定シナリオとなっている。FF金利先物も今回の利上げを100%織り込み済みで、利上げそのものはもはや材料視されないだろう。

そこで市場の関心はFOMC声明の内容とメンバーの金利見通し「ドット・プロット・チャート」に集中することになる。FOMC声明はハト派的文言が徐々に削除され、直近では「金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的」という表現となっている。これがさらに利上げに前向きなトーンに上方修正されるかどうかがポイントとなるだろう。また前回6月のドット・プロット・チャートは、来年末までに3%、再来年末までに3.5%への利上げを示唆する分布だったが、これが上方にシフトするかどうかが最大の焦点となるだろう。

2018年6月のドット・プロット・チャート 出所:2018年6月FOMC付属資料

材料出尽くしの動きに注意

個人的には、FOMC声明は引き続き緩和的スタンスを維持し、ドット・プロット・チャートの分布も前回6月から大きく変わらないと予想している。8月の雇用統計では、平均時給が前年比+2.9%と2009年以来の高い伸びを示したものの、同月の生産者物価指数と消費者物価指数は予想を下回っており、労働市場の逼迫にもかかわらずインフレが加速する兆候は今のところ見られない。足元の景気は堅調だが、貿易戦争や新興国市場の混乱など先行き不安材料も少なくない。

FOMCが長期的に適切と考える政策金利水準(ドット・プロット・チャートのLonger runの列)は2.75~3.0%であり、これを超えて利上げを加速させるシナリオは蓋然性に乏しい。この見立てが正しければ、今週はFOMCを境に米国金利上昇・ドル買いの流れがストップし、逆に材料出尽くしで金利低下・ドル売りに流れが反転する可能性が高くなるだろう。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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