米国利上げサイクル終了近しとの見方強まる[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年12月3日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は底堅い動きとなり、一時114円台をうかがう展開。米国株の下落が一服となりNYダウが25000ドル台を回復したことや、12月1日に予定されている米中首脳会談に対する期待感が浮上したことがサポートとなった。米国第3四半期GDP改定値は前期比年率+3.5%で予想通り速報値から変わらずであった。

前回の当コラムでは、米国の景気先行きに不透明感が浮上していること、米中貿易戦争が再燃する可能性があることを理由に、ドル安・円高方向の波乱を警戒すべきと述べたが、そのような動きは見られなかった。(米中首脳会談の結果は本稿執筆時点では不明)

感謝祭も過ぎ、街はすっかりクリスマスムード。為替市場ではドル円が113円台、ユーロドルが1.13ドル台を中心としたレンジで膠着が続いており、このまま年末まで動意が途絶えそうにも見える。しかしながら筆者は、依然として年末にかけてのドル下落リスクは払拭されていないと見ている。その理由はやはり米国の金利動向にある。

注視しておきたい米国の金利動向

米国の利上げ期待は急速に後退しつつある。パウエルFRB議長は先週の講演で、「政策に既定路線はない」「金利は中立レンジをやや下回る」と利上げにやや慎重なニュアンスをにおわせた。また先週公表されたFOMC議事録には、「さらなる漸進的な利上げ」という文言の変更を検討したと記されていた。FOMCのキーパーソンであるウィリアムズNY連銀総裁は、「中立金利は低下していく」との見方を示した。すでに政策金利は中立金利に近く、あと1回か2回で利上げサイクル終了とのシナリオが現実味を帯びてきているのだ。

米国10年債利回りは先週一時3%を下回り、2-10年債のイールドスプレッド(利回り格差)は20ベーシスとフラット化が進んだ。同スプレッドは今年の8月に18ベーシスと2007年以来の水準まで縮小したが、現在の利上げ期待の急速な後退から見て、今回はこれを更新する可能性がある。イールドカーブは、近い将来米国景気が減速に向かい、場合によっては景気後退に陥るリスクを暗示している。米国金利動向からは、ドルの上昇シナリオは描きづらくなってきた。

市場は今月19日のFOMCでの利上げを8割がた織り込んでいるが、実際に利上げが行われたとすれば、むしろ「打ち止め近し」との見方が強まるのではないか。またメンバーの来年の金利見通し、ドット・プロット・チャートが下方にシフト(利上げ回数が減少)し、利上げ期待がさらに後退する可能性も小さくない。今週から来週にかけては、そうした動きを先取りしてドルロングの見切り売りが強まるシナリオも想定しておかねばならない。ちなみにIMM通貨先物の取り組みを見ると、投機筋の円ショートは10万枚以上残っており、ドルの下落余地が小さくないことを示唆している。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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