米中貿易協議が後退 日米首脳会談もトランプ砲に注意[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2019年5月27日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、週前半は上値を試す展開となり、一時110.67円と2週間ぶりの水準へ上昇。米商務省がファーウェイ向けの制裁措置を一部猶予したことから、米中摩擦への懸念が幾分緩和された。しかし楽観ムードは続かず、週後半は懸念が再燃、戻り売りに押される形で109.27円まで反落した。

米中貿易戦争の長期化・泥沼化リスク

米政府は、重要技術利用を事実上禁止する対象を、ファーウェイ以外の中国企業にも広げる構えを見せている。一方中国は、今週末6月1日に米国の関税引き上げに対する報復関税措置(米国からの輸入品600億ドル相当への関税率引き上げ)を発動する。一時は収束に向かいつつあると思われていた米中貿易戦争は、再び長期化・泥沼化するリスクを孕んできた。

米国側は、中国がこれまでの合意の一部を白紙に戻し、態度を後退させたと主張している。米中対立が単なる貿易摩擦にとどまらず、ハイテク技術の覇権を賭けた闘争であることが明白になってきたが、中国は国家戦略として、次世代情報技術などの重点分野で世界の先頭グループ入りを目指す「中国製造2025」を掲げており、安易に妥協することはできない。トランプ政権も大統領選を控えて対中で結果を出す必要があり、一歩も引かない構えだ。米中通商協議は決着より決裂の可能性が高く、もしそうなれば来月のG20大阪サミットで想定されている米中首脳会談も、開催が危ぶまれることになる。心理的な不確実性だけでなく、米中両国の実体経済、ひいては世界経済への悪影響も計り知れない。

先週米国株は大きく下落し、米国10年債利回りは2017年以来の水準まで低下し、ドル円は再び安値をうかがう展開となった。米中関係が改善に向かうより長期的な冷戦に向かっていく公算が大きい以上、当面は楽観的なシナリオは描きづらい。株式市場とそれに追随するドル円相場は、一時的な小反発はあっても、持続的な上昇トレンドに乗っていく可能性は小さい。一方悪材料には反応しやすく、下値での波乱は十分ありうる。今週も売り目線で臨むのが賢明だろう。

トランプ来日、市場の反応は?

さて、先週末(25日)からトランプ大統領が来日中だ。安倍首相がゴルフと大相撲観戦などでもてなし、本日27日午前には令和初の国賓として天皇陛下との会見がセットされている。そして午後には日米首脳会談と共同記者会見が行われる。安倍首相としては、トランプ大統領を手厚くもてなすことで個人的な友好関係を深めるとともに、日米貿易協議での対日圧力をかわしたい狙いがある。市場では、今回のトランプ来日で日米の蜜月関係がアピールされれば株高・円安要因との期待もある。

しかし日米基軸と通商交渉は別問題だ。日米首脳の関係は良好だが、日米間の自動車や農産物の貿易問題では、双方の主張に大きな隔たりがあり、合意のめどは立っていないのが現実だ。日米通商分野でも手柄が欲しいトランプ大統領が、今回の来日中に予期せぬ「口撃」に出る可能性は小さくなく、潜在的下値リスクとして認識しておく必要がありそうだ。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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