米国景気指標下振れでもドルがあまり下がらない理由は?[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2019年10月07日号

先週のドル円相場

米中貿易摩擦の緩和期待などを背景に週初は108.18円と上値を試す場面もあったが、その後は9月のISM製造業景気指数を皮切りに米国景気指標が次々と予想を下回ったことから、米国債利回りの低下とともに106.48円まで売り込まれた。ただ追加利下げ期待を背景に米国株が反発すると、ドル円も幾分持ち直した。

確かに先週の米国景気指標は全体に下振れした。

10/1(火)ISM製造業景況指数 前回49.1、予想50.2、結果47.8
10/2(水)ADP雇用統計 前回+19.5万人、予想+14.0万人、結果+13.5万人
10/3(木)ISM非製造業景況指数 前回56.4、予想55.0、結果52.6
10/4(金)非農業部門雇用者数 前回+13.0万人(修正+16.8万人)、予想+14.5万人、結果+13.6万人/平均時給 前回+3.2%、予想+3.2%、結果+2.9%/失業率 前回3.7%、予想3.7%、結果3.5%

先週の当コラムでは、「経済指標が全般にまずまずの結果となれば米国景気に対する悲観論は後退し『10月FOMCは政策金利据え置き、12月利下げで当面打ち止め』との見方が浮上してくるだろう」と予想したが、結果は残念ながら真逆となった。FF金利先物は今月のFOMCでの利下げ(1.50-1.75%)を一時9割近く織り込み、12月FOMCでの追加利下げ(1.25-1.50%)も5割強織り込んだ。1週間前はそれぞれ5割、2割程度だったから、この1週間で市場の金利観が大きく下方シフトしたことになる。ドルが先週下落したのも当然といえば当然であった。

 FF金利先物が織り込む10月FOMCでの金利分布 出所:CME

景気後退の可能性は小さい

では米国経済はこのまま減速しリセッションに突入するのだろうか。米中貿易摩擦のおかげで企業の景況感は確かに曇ってきているが、非農業部門雇用者数は(減速したとはいえ)月に10万人以上の伸びを維持しており、失業率は3.5%と50年ぶりの低水準だ。完全雇用状態かつ3%前後の賃金上昇が続く中で景気後退が近いと考えるのは合理的でない。

パウエルFRB議長は先週金曜日の講演で「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にある」と評価した。議長は「失業率は半世紀ぶり低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している」と指摘。「われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」と述べている。現在行われている利下げはまさにその良好な状態を維持するための予防的措置であり、危機に瀕した経済を浮揚させるための救済措置ではない。そして株式市場は、利下げが奏功して現在のゴルディロックス(適温経済)は維持できると読んでいる。NYダウは下げたとはいえ高値圏で推移しており、恐怖指数VIXも過去のピークを超えていない。

VIX日足 出所:StockChart.com

ドル円は下げるには下げたが、利下げ観測がこれだけ高まった割には下げ渋ったと見ることもできる。米国のリセッション回避を前提とすれば、ドルは売られてもまた戻ってくる可能性が高い。日本も欧州もオセアニアも、景気減速・利下げのさなかにあり、米国経済の相対的優位は揺るがないからだ。ドル円が105円を割り込んで下落していくとすれば、それは株安・リスク回避の局面だろうが、現在はその可能性は小さいと考えており、押し目買いスタンスを堅持したい。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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