FXオプション取引 基本と戦略|第5回 攻めにも守りにも活用できるゼロ・コスト・オプション[大西洋平]

ストップロス不要のトレードが可能

為替に限らず、あらゆる相場では自分の思惑と反対方向に動くことが日常茶飯事です。そこで、そのような事態に備えて、あらかじめストップロスを置いておくのがトレードの鉄則とされています。その点、オプション取引はストップロスを設定する必要のないトレードが可能です。上昇が見込まれる局面では、あらかじめ定められた「権利行使価格」で買う権利(コール)を買えば良いのです。

そうすれば、上昇に応じて利益が拡大する一方、意に反して下落した場合も損失が限定されます。逆に下落しそうな局面では、あらかじめ定められた権利行使価格で売る権利(プット)を買います。すると、下落すればするほど利益が膨らみますし、期待を裏切って上昇した場合の損失も限定されています。

この限定されている損失分とは、オプションの取引価格である「プレミアム」のことです。今後の動きに対してかなりの確信を抱いている局面では、プレミアムの負担が余計なコストだと感じるトレーダーも少なくないでしょう。通常のFXなら、あえてストップロスを置かずに強気の勝負を挑めます。

利益拡大を狙う戦法

実は、オプション取引でもそういった強気の攻めを仕掛けることが可能です。「ゼロ・コスト・オプション」という手法を用いれば、まさにそのネーミングの通りで、プレミアムの負担をほぼゼロにした状態で利益の拡大を追求できます。これは一体どのような手法なのか、ロングとショート、それぞれの戦略別に見ていきましょう。

まず、上昇すると確信している場面では、コールの買いとプットの売りを同時に建てます。その際、コールではプレミアムを負担し、プットでは反対に受け取ることになります。したがって、それぞれのプレミアムが同額なら、相殺されて負担がゼロとなるのです(図①)。

一方、下落する確度が高まっている場面では、プットの買いとコールの売りを同時に建てます。すると、やはりプレミアムが同額なら負担と受け取りで相殺され、実質的にゼロ・コストでポジションを建てられます(図②)。しかも、ロングとショートのどちらの戦略においても、相場が読み通りの推移を示せば、その変動幅に応じて利益が無限大に拡大していきます。

ただし、思惑とは反対方向に動けば、損失の方も無限大に膨らむ恐れがある点には注意が必要です。ハイリターンを追求できる反面、ハイリスクでもあることを承知の上で用いるべき手法だといえるでしょう。

コツコツ戦略の発想も有効!

もっとも、ゼロ・コスト・オプションはポジションの建て方次第で守りにも活用できます。狙える利益には限度がある反面、実勢レートが一定のレンジ内にとどまれば損失を被らないというトレードが可能なのです。現に、企業の貿易にも用いられている手法です。

「レンジ予約」とも呼ばれ、円高による差損を抑えつつ、少しでも円安による差益を得ることがその目的となっています。例えば、実勢レートが1ドル=106円の局面で、権利行使価格が110円のコールの売りと105円のプットの買いを組み合わせたケースで考えてみましょう(図③)。

もしも、「権利行使日」の相場が105円を割り込む円高でも、プットを行使すれば105円で売ることが可能です。これに対し、権利行使日に110円超の円安であっても、コールを行使して110円で売り抜けられます。もちろん、権利行使日の相場が105~110円に収まっていれば、実勢レートで売れば良いだけの話となります。

損失リスクを抑えられることは魅力的であるものの、得られる利益が限定的なので、企業の貿易のような実務ならともかく、資産運用としてのトレードではあまり妙味がない手法だと感じる読者も少なくないでしょう。しかしながら、小さな利益をコツコツと積み上げることで、大きな財を成すという発想もあります。

結局、そのようなトレードは退屈でたまらないというトレーダーには不向きだということでしょう。そういった人は、最初に説明したゼロ・コストでノーブレーキの手法が合っているかもしれません。対照的に、たとえペースが遅くとも、着実に増やしたいと考えるなら、レンジ予約というアプローチには一考の価値がありそうです。

とにかく、オプション取引は複雑である反面、実にさまざまな活用法が考えられます。極めて奥の深い世界なのです。

※この記事は、FX攻略.com2018年5月号の記事を転載・再編集したものです

【FXオプション取引 基本と戦略[大西洋平]】
第1回 オプション取引とは?
第2回 オプション取引で重要な三つの用語
第3回 オプション取引の種別
第4回 プレミアムの変動状況を計る指標

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※ここに記載されている情報は原稿執筆時のものであり、現在のものとは異なる場合があります

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大西洋平(おおにし・ようへい)

金融ジャーナリスト。出版社勤務を経て95年に独立し、マネー誌やビジネス誌、週刊誌などに金融経済分野を中心とした記事を寄稿。市場の最前線で活躍中のアナリストやストラテジスト、さらに上場企業トップの取材も多数手掛ける。FXをはじめ、金融取引全般に精通。