FX天気予報表
イサムのFX初心者研修会9月10日
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1971年に金と米ドルとの兌換が停止されて以降、現物資産の足枷が外れた『マネー』は増大の一途をたどり、実際の商取引の何倍にも膨れ上がった金融取引が行われている現代である。
資本主義経済のもとでは市場原理を尊重し、それゆえに市場動向についてはあえて放任することが最大の経済効果を生み出す、というのが大義名分となっている。とくに、為替市場に関しては、通貨同士で価値を計るという実に曖昧な変動相場制が導入された結果、そして、90年代のIT革命のおかげで国境を超えた資本移動がいとも簡単となった結果、世界中のあらゆる市場でバブルを発生させる源泉を運び込む役割を担っている。
数々のバブルを形成し、それが生成崩壊していくたびに世界経済は疲弊してきた一方で、バブル崩壊からの再生のなかでは、需要が喚起され、経済が立ち上がっていくという側面がある。
かつては100年に一度であったようなスクラップ・アンド・ビルド(復興需要経済)が、1970年代以降ではごく頻繁に繰り返すようになっているのである。為替市場でも、バブルの過程でも、価格のフラクチュエーションがあればこそ、投機マネーは収益を上げることができるというものだ。
虎視眈々と次の相場を待つ世界の投機マネーと対峙しながら、個人マネーも相場に参加しているというのが現状である。
ITのインフラが整い、金融工学が発達したことは、一般の投資家が市場に参入する機会を格段に容易にした。以前はごく限られた銀行のディーリング・ルームのなかで、これまたごく限られたディーラーと呼ばれる職業についた者だけが許可された市場取引を、今では投資家のほぼすべてが行うことができる。
しかし、「誰でも簡単に市場に参加することができる」ということは、「誰でも簡単に儲かる」ということと、イコールではない。前述の通り、かつて外国為替が行えるのは旧大蔵省(現財務省)が承認した、金融機関や大手商社に限られていたのである。
私が初めてディーリング・ルームに足を踏み入れた頃は1998年の外為法改正前であったため、新人研修では「賭博に近いから規制をされているのだ」と、ごく当たり前に説明されたものだった。
つまり、たとえ為替市場の門戸は広がったとしても、本質はギャンブルの要素があり、非常にリスクが高い市場ということに変わりはない。
リスクが高いということは、敗者と勝者の差というものが歴然と表れるということである。実際には市場には参加者が多いために、勝者の存在ははっきり認識されることはないが、生きるか死ぬかのマネー・ゲームが展開される、ゼロサムゲームの市場に甘い気持ちで参入すればひとたまりもない。あっという間に強者(勝者)の餌食になってしまうということだけは間違いない。
長期展望の必要性
私自身の著作のなかでは、あくまでも実際のデータベースの検証という裏づけをとることで、金融や経済の現象にアプローチするという方法をとっている。それによって、単なる陰謀論とは一線を画し、強者の実態に明らかにしていくことが目的だ。強者の実態を明らかにすれば、彼らの戦略が見えてくる。相手を知らずして相場に勝てることはない。
目先の1銭、2銭で収益を上げるテクニカルな話を期待されるなら、このコラムを読み飛ばすことをお薦めする。それでも、個人的には結局は長期的な見方や強者の論理を把握することなしでは、中期的や短期のトレードも難しいはずであると考えている。
トレードの手法の代表格、テクニカル分析を大きくわけた場合、トレンド系とオシレーター系にわかれる。
トレンド系であれば、ある程度の期間相場が上昇しているのか、下降しているのかというおおまかな方向を見定めてトレードをする。一方、オシレーター系は相場がレンジ入りした際に、売られすぎ・買われすぎを判断して逆張りをするのに使用する。
相場にトレンドが出るか、レンジに終始するのか。レンジ相場から大きなトレンド相場に転換するその瞬間に、あるいはその逆のパターンもしかりだが、損失を出すことが多いのではないだろうか。
顕著な例で申し上げれば、2005年末あたりからサブプライム・ローン問題が噴出するまで2007年は大きなレンジ相場のなかであり、円売りをしておけば、そのキャリーコストで儲けられていた。
ところが、2007年夏を境にあっという間に損失が膨らんでしまったという個人投資家の相談を、私自身が多く受けたという記憶がある。相場の地合いが変われば、それまで使っていたチャート分析もたぶんワークしなくなったはずだ。
このレンジ相場からトレンド相場への転換をいち早く見抜くことができたならば、損失も未然に防げたに違いない。そのためには、転換のきっかけとなる、そもそも外国為替がもつ、長期的な動きを把握する必要がある。
通貨の動きには国家としての戦略や強者の論理がおおいにかかわってくるということを、頭のどこかに置いておかれることは、短期売買をされる方にも決して損にはなるまい。
というわけで、ここでの内容も外国為替のビッグ・ピクチャーを語るというスタンスで執筆にあたらせていただければと思う。
為替ディーラーという仕事
相場というのは、そこに参加している人の気持ちの集約である。なぜその価格がついたのか、というのはその瞬間の買いたい人の気持ちはいかなるものであるのか、売りたい人は何を思って売ったのか、ということ大いにかかわってくる。
ところで、売りたい気持ち・買いたい気持ちを司るのはわれわれの脳ということになるが、現在のこのかたちになるまでの道のりを考えることは、人類誕生の歴史そのものをたどることになる。何百万年もの時間がかかって、ようやく現在の脳の機能や形状に至ったのであれば、たかだか数十年で、あるいは数百年単位で考えたとしても、われわれの思考パターンというものが劇的に変化することなどあるだろうか、というのが私の考え方の根底にある。
となれば、似たような状況下では、人間は同じような行動を取るはずである、という仮定が成り立つ。
そういう意味で、相場にある種のパターンや似たようなサイクルが存在するのも、われわれが長年培ってきた脳のそのものの機能に基づいているからではないか。であるなら、似たような過去の軌跡を見つけて、それと現在が合致するようならば、その過去の軌跡を見ながら、未来を予想できるはず……。
私自身が過去の検証という作業を始めた経緯には、ディーラーとして収益を上げるという差し迫った状況があったからだ。分析や予想屋で留まるころが許されなかったという点で、つまり、実践で使ってきた方法であるという点においてだけは、説得力をもって読者の皆さまにも受け入れていただけるのではないかと思う。
私が携わった為替ディーラーという職業についてだが、ずいぶん前のことになるが、「この世界はディーラーが100人いれば5年で3人にまで減る」と、先輩ディーラーからいわれたことがあった。
そして、実際に自分が関わってみると、なるほど、この数字もまんざら嘘ではなさそうだ、ということもわかってきた。ある朝、会社にくると、昨日まで机を並べていた同僚や上司が、自分の机の荷物を整理して、あっという間に出ていく、ということは、ディーリング・ルームでは日常茶飯事だ。
そんな生き馬の目を抜く職場に、採用されてしまったので、自分の社会人生命を維持するためには、なんとしても収益を出し続けなければならない。
ちなみに、海外の金融機関などでは、給与は年俸制が一般的である。ちょうどプロ野球選手が、シーズンが終わった段階で行う契約交渉をイメージしていただければよいかと思う。ディーラー職も、毎年1回会社側から、「来年はいくら稼いでくれ」、という会社側の要望金額が提示され、それをこちらが了承したうえで、来年度の給与が示される。予定どおり稼げれば来年の席は安泰だが、稼げなかった場合、あるいは損を出せば一発退場ということも十分ありえる。必死に収益のチャンスを模索する毎日が続いていたわけである。
9・11の同時多発テロでバタバタしていた2001年が終り、それまで在籍していた米系金融機関で新しい年を迎えた2002年のことであった。米系企業の会計年度は12月末で終わるので、年明けには今年はどんな戦略で収益を上げようかと、あれこれ作戦を考える時期となる。そんななか、とくに、通貨ドル・カナダのチャートを見ていたときに、米ドルが大暴落するのではないかという兆しが読み取れたのだ。
なぜ、そう思ったか――。カナダ中央銀行のHPから為替レートを1858年までさかのぼり、そこから記録として残っていた過去のレートをひとつ1つチェックしてみると、米ドルのもつひとつの大きな特徴が見出せたのである。
実際、超長期のその特徴が示唆していた通り、米ドルはその直後からカナダに対して60%余り下落することになったわけで、私自身も破格の収益を上げることができた。つまり、この長期的なパターンを考慮すれば、収益アップにも大いに役立つというわけである。
超長期の米ドルの特徴
「USD/CAD」を見た場合、150年近くの超長期チャートでは右肩上がりが続いていた。カナダドルは米ドルに対して、総じて売り傾向にあったということになる。カナダ売りが顕著になったのは1970年以降2000年までであるが、とくに、1990年初頭からは、カナダの国内インフレや財政赤字、カナダ国内産業の国際競争力がなかったために、カナダ経済は最悪期となった。
また、今となっては隔世の感ではあるが、90年代の資源価格低迷期には、資源国通貨でもあるカナダドルは米ドルに対して、史上最安値の1・6000カナダドル台まで売り込まれていた。
超長期のカナダ売りトレンドのなかで、突然米ドルがカナダに対して大幅に下落している箇所がある。それぞれの時点での歴史的・経済的事象を考えると、があげられる。つまり、戦争・恐慌・景気後退、いずれも米国の赤字が急激に膨らんだ後に、米ドルは劇的に売られる、という特徴が浮かびあがってくる。そして、2000年以降の米国の財政赤字は、過去最高ともいわれた時期であり、それに呼応するように、以後過去最大の米ドルの下落が発生したのである。
米国で赤字が大きく膨らむできごとがあると、その直後から急激なドル安が発生する、という傾向はこの150年近くまったく変わっていない。ということは逆に、実は米国というのは長年にわたり、国家の戦略として、為替システムを巧みに利用してきたのではないか、という推測もできよう。
米ドル安で受ける米国のメリット
米国の赤字と米ドルの切り下げに一定のルールがあるとして、実際に米国が通貨戦略としてそれを利用してきたのであれば、ドル安による米国のメリットは何か?ということを考えねばなるまい。その際、注目すべきはモノの売買も、マネー取引も、すべてドルで決済されるという点である。
たとえば、モノの売買を考えると、ドル高・円安の場合、日本の輸出が伸びるように、米国内では日本からの製品が安くなるため、よく売れることになる。それが、ドル安となれば、米国内での輸入品は高くなる効果が出てくる。
米国の景気が悪化し、米国の産業界からプレッシャーがかかると、米国が輸出ドライブをかけると同時に、ドル安政策に転じる傾向があるのも、ドル安にして海外製品を締め出し、国内産業を潤すという目的があるためだ。ドル安の第一のメリットは米国国内産業活性化があげられる。
そして、実はこの第一のモノの面から見たメリット以上に注目すべきなのが、マネーの面で米国がドル安によって享受するメリットである。これについては来月号で詳細を説明することとする。
基軸通貨はあくまでも米ドルであり、カナダドルや円といった非基軸通貨はその調整役として動いている。そのために、現在の米ドルを中心とした為替システムでは非基軸通貨の立場は都合が悪い。
一方、米国は基軸通貨としての特質を最大限生かし、基軸通貨であればこそ取り得た為替戦略が存在するのである。ところで、国家戦略は自国の利益を優先するためだけにある。現代の国際金融では明確な戦略を持たない者は、いとも簡単に敗者となるのである。
PROFILE
いわもと・さゆみ。作家・経済評論家。1991年より日米加豪の金融機関にてヴァイス・プレジデントとして外国為替、短期金融市場取引を中心にトレーディング業務に従事。銀行在籍中、青山学院大学大学院国際政治経済学科修士課程修了。日本経済新聞社発行のニューズレターに7年間、為替見通しを執筆。金融機関専門誌「ユーロマネー誌」のアンケートで為替予想部門の優秀ディーラーに選出。現在、為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、英語を中心に私立高校、及び専門学校にて講師業に従事。著書に『新・マネー敗戦-ドル暴落後の日本』『円高円安でわかる世界のお金の大原則』『為替と株価でわかる景気の大原則』がある。日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA I)
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