「ロスカット」にも「利益確定」にも変化する決済方法があるんだ。この便利な決済方法について具体的に説明していくよ。まずは名前を覚えてね。「トレイリングストップ(トレール)」っていうんだ。
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- 目指せ!シストレマスター 第9回:高橋謙吾・及川佳奈子
- 目指せ!シストレマスター 第9回:高橋謙吾・及川佳奈子
- 高橋謙吾(以下:高):前回は、決済方法の「ロスカット」「利益確定」について説明したけど、この2つの決済方法についてしっかり理解してくれたかな?

及川佳奈子(以下:及):少ない損失を数多く出しながらも、1回あたりの利益が大きい「損小利大」タイプと、まれに発生する損失は大きいけれども、小さい利益を積み上げていく「損大利小」タイプがあるという話が興味深かったわ。
サルサ1号(以下:サ):コツコツドッカン型の「損大利小」じゃなく、損しないで利益をドッカーンと増やしてくれる決済方法があればいうことないのにな~。「損無利大」みたいな手法ってないの?
及:そんな都合のいい決済方法なんてあるわけないでしょ。
高:うーん、「損無利大」はさすがに無理だけど、それに近い決済方法はないこともないかな……。初めに設定したロスカットによる損失額の大きさが、相場の状況によってどんどん小さくなり、場合によっては、利益確定に変わってしまうような決済方法ならあるよ。
サ:エクセレント!早く知りたい、知りたい~。じゃ、今日はこうした便利な決済方法についていくつか紹介していこうかな。
■トレイリングストップ~利益追求はどこまでも~
高:もう一度おさらいだけど、「ロスカット」は損失を確定させるための決済で、「利益確定」は利益を確定させるための決済ということは理解してくれたよね?
及:もちろん!
高:でも実は、「ロスカット」にも「利益確定」にも変化する決済方法があるんだ。ある局面では損失を確定するための「ロスカット」決済の役割を果たし、違う局面では利益を確定するための「利益確定」の決済の役割を果たすんだよ。
及:まるでカメレオンみたい。変幻自在に変化するのね。
サ:いやいや、たとえるならウルトラマンでしょ。変身前は弱いけど、変身したら強くなるみたいな……。
及:3分経過したら弱くなっちゃうわけ?!
高:まあまあ、ツッコミはその辺にしておいて、この便利な決済方法について具体的に説明していくよ。まずは名前を覚えてね。「トレイリングストップ(トレール)」っていうんだ。
及:トレイル(trail)って、英語で【追跡する、後ろをついていく】という意味ですよね。
サ:ということは、決済注文が【後ろをついていく】ということ?そんなはずないか~。
高:正解!後ろをついていくんだよ。
サ:エッ?!本当なの?
高:トレイリングストップは、その名の通り、【追跡する】決済注文なんだ。図1を見てごらん。

高:「ドル/円」を1ドル=100円のときに新規で買って、1ドル=99円にトレイリングストップ注文を設定した例だよ。
及:この状態だと、ふつうのロスカットと同じね。
高:そうなんだ。予想に反して円高が進行した場合、1ドル=100円での新規買いポジションは、1ドル=99円でロスカット(損切り)されてしまう。
サ:トレイリングストップ注文と、ふつうのロスカット注文の違いがわからないよ。
高:まあ、そう焦らずに。では次に、予想通りに円安が進行した場合を見てみよう。
サ:あっ、トレイリングストップ注文が動き出した!!
及:おもしろい!まさに追跡している感じね。
高:ここで重要なのは、ある一定方向にのみロスカット設定がズレていくことなんだよ。
サ:一定方向にだけズレる?どういうこと?
高:もう一度、図1をよく見てごらん。
及:本当だ!円高になったときはトレイリングストップはズレていないけど、円安になったらその値動きについていくように動き始めているわ。
高:その通り!自分の思惑と同じ方向に相場が動いたときだけ、トレイリングストップの価格がズレるんだ。そこが、トレイリングストップの最大の魅力なんだよ。
サ:トレイリングストップがズレるということは、ふつうの損切りみたいに「●円でロスカット」という注文方法ではないということかな?
高:今日は冴えているな、サルサ!
サ:“今日は”って限定しないでよー。
高:サルサのいうとおり、トレイリングストップは「●円でロスカット」というように価格を固定するのではなく、「●ポイント下でロスカット」というような設定にするんだ。たとえば、トレイダーズ証券が提供している「みんなのFX」の取引画面でトレイリングストップ(トレール)注文を出すときは、こんな感じだよ(【図2】参照)。

及:これは本当に便利な決済注文ね。
高:そうでしょ。もうちょっと理解を深めるために、図3を見てごらん。たとえば、1ドル=100円で「ドル/円」の買いポジションを保有して、トレイリングストップを3円下に設定したとするね。
及:つまり、初めのロスカット幅が3円ということね。

高:その後、「ドル/円」が1ドル=101円まで円安方向に進んだと仮定する。
サ:やったね、少し自分が想定した方向に相場が進んだね♪
高:そうだね。この場合、買った価格から1円分の利益が発生したので、トレイリングストップの位置も1ドル=98円まで引き上げられる。
及:3円幅をキープして、トレイリングストップの位置がずれたのね。しかも、ロスカットになった場合の損失幅が3円(=100円-97円)から2円(=100円-98円)に減少している。
高:当初の設定よりも損失を少なくすることができたということだ。それじゃ、こういう場合はどうかな?

及:1ドル=102円まで円安が進行したときに、トレイリングストップも1ドル=99円まで3円幅をキープしながらついていっているのね。この時点でロスカットになった場合の損失幅は1円(100円-99円)まで縮小できているわ。でもその後、相場が再び1ドル=101円まで下がってきちゃった。
サ:ねぇハカセ、この場合はロスカットの位置を下げなくてもいいの?相場が下がってきたから、その動きにあわせて1ドル=98円までトレイリングストップの位置を下げないといけないんじゃない?
及:ロスカットの設定を下げたら、いつまでたっても追いかけっこで、永久に決済できないじゃない!
高:そうだね、この場合はトレイリングストップの位置は1ドル=99円のままでいいんだよ。さっきいったように、ある一定方向のみロスカット設定がズレていくということが、トレイリングストップの最大の魅力なんだ。つまり、図4のように1ドル=102円から101円まで下がったとしても、トレイリングストップの位置は99円のままだから、確定する損失幅は1円(=100円-99円)まで縮小されていることになるわけ。
及:自分にとって有利な方向にのみロスカットをずらせるなんて理想的だわ。
高:その通り。トレイリングストップは、相場の状況によって決済したときの損失額が減ることはあっても、増えることはないんだ。

高:ここまでくれば、もうわかったかもしれないけれど、もう少し相場が自分が想定したのと同じ方向、つまり、この場合は円安方向に進むと、トレイリングストップの役割が「損失確定」から「利益確定」決済に変わるポイントがあるよね。
及:図5を見れば一目瞭然だわ。「ドル/円」相場が1ドル=103円になったときに、トレイリングストップの位置が1ドル=100円まで引き上げられるから、仮に、この後に相場が下がったとしても損が出ることはないわけね。1ドル=100円の新規買いポジションを1ドル=100円で決済するのだから(手数料・スリッページは考慮しない)。
高:その通り!ここまでくれば、もう損失は出ないことが確約されているから、あとは利益をどこまで伸ばせるかというのがポイントになってくるね。もう少し経過を見てみよう。

サ:1ドル=104円まで上昇した!よーっし、もう利益確定決済だー!4円分の利益GET!!
及:ちょいと、早まるのはおよしなさい!! (ボコっ)
高:はは、サルサの行動もワンパターンで、ある意味、システム化されているところがおもしろいね。及川女史のいう通り、早まる必要はないよ。トレイリングストップを使っているときは、ある決まった価格で「利益確定」決済をしないほうがいいと思う。もっと相場が有利な方向に進むことを期待して保有するのが、トレイリングストップの醍醐味だからね。

サ:おぉ、エクセレント……。
及:ほらいったじゃない。図6のポイントで決済していたら、取れるはずの利益の一部しか獲得できなかったわよ!そのまま放っておいたことで、7円分の利益をGET!
高:いい感じに利益を獲得できたね。トレンドが発生したときに、極力そのトレンドを捕らえていくトレイリングストップの特長を活かしたやり方だったね。
サ:じゃ、トレンドがないときはどうすればいいの?
高:ふむ、良い点を指摘してくれたね。

サ:うーん、悶絶ロスカット……。
高:トレンドが発生していないようなレンジ相場の場合、狭いロスカット幅だと、ただのロスカットの嵐になって、損失を計上してしまうことにもなりかねない。図8の場合は、3円下でトレイリングストップを設定していたけど、ことごとくやられてしまっているね。
及:トレイリングストップはレンジ相場には向かないのね。だとすれば、トレンドが発生しているときとレンジ相場のときで、うまく使いわける必要があるということね。
高:そういうこと。他にももうひとつトレイリングストップで気をつけたい点があるんだ。とくに、システムトレードでトレイリングストップを使うときには注意しないといけない点だよ。

高:図9のように、トレイリングストップを使って、1トレードあたりの利益を大きくするのは良いんだけど、トレンドが長期に渡ったときには、1トレードあたりの保有期間が長くなる傾向にある。このことは注意が必要かな。
サ:なんで?利益も多くて総損益も大きければ、みんなハッピーじゃない?
高:うーん、必ずしもそうともいい切れないよ。たとえば、こういうケースはどうだろう?

及:5回連続負けて、最後の1回で大きく利益を出している。ずいぶんと勝ちトレードの回数が少ないわ。
高:そう、トレイリングストップによる決済方法でトレンドを狙っていくのはいいことなんだけど、トレード回数は極端に少なくなる可能性がある。
サ:それのどこがいけないの?
高:システムトレードの場合、トレードをある程度の回数こなしていくことで、統計的に優位性を判断するんだ。でも、図10のようなパターンが続くと、勝ちトレード自体が少なくなるので、統計的に優位かどうかの判断がしにくくなってしまう。今度また詳しく説明するけど、過度の最適化によって、極端に良いシステムをつくり上げることもできるから、売買システムをつくる際は注意が必要なんだよ。
■時間経過による決済方法
サ:トレイリングストップ、気に入っちゃった。その他には、どんな便利な決済方法があるのかな、ハカセ?
高:そうだね、さっき、3分間しか強くないウルトラマンという話があったけど、ある一定時間が経過したら自動的にポジションを決済するという方法もあるよ。及川女史が得意なパターンかもね。
サ:冷酷かつ冷静に、利益が上がらない中途半端なポジションを一定期間で見定めて、バッサリ切り落としていく決済方法だよね?
高:うーん、いい表現かも、サルサ~。
及:ちょっと、二人とも、ずいぶんないい方ね。
サ:あはは、ハカセも僕と同じことを思っていたんだ(ボコっ)。
高:これは失礼しました。でも、ある一定期間を経て、決済してしまうという方法は、と、と、とても有効なんですよ。
及:ハカセ、脅えすぎ。
高:中途半端にポジションを保有するのって、保有していることによるリスクもあるんだ。だから、一定期間で決済し、ポジションを閉じることは、ある意味リスクを減らすことにもつながっているんだ。エントリーのロジックに優位性があるのであれば、利益が出ていようが、含み損が発生していようが、ある程度のタイミングで決済してしまうほうが、売買システムとしても良い決済アイデアといえる。
及:恋愛も同じ。中途半端な状態でずるずる引きずったって、何もいいことはないわ。そんな時間があるなら、気持ちを切り替えて次の恋を探すべし!ねっ、男性諸君!
高:男は女性にふられたとき、引きずるっていうからね。だから、FXでも含み損のポジションを保有し続けてしまうのかな?
及:塩漬けトレーダーのサルサ君、これからは含み損が出ていても、サクッと決済できるかな?
サ:ムキ!!もー、なんでそんなに冷たいの~!!
■時間指定による決済方法
高:時間経過による決済と似ている手法として、時間指定による決済方法もあるよ。
サ:時間指定?なんじゃそりゃ??
高:時間経過の場合、ポジションを保有してから一定期間が経過した段階で決済したけど、時間指定による決済は、ある指定した時間がきたら決済をするんだ。
及:それって、FXでいうなら、東京時間だけで勝負するから、午後8時くらいに必ず決済するようなやり方かしら?
高:そうだね、仮に、NY時間は急激な動きが多くて相場が読みにくい……というような思惑があれば、東京時間に限定したトレードを行うために、東京時間が終わる間際に決済をするというやり方もあるよ。それから、年末にかけては値動きがなくなるから、クリスマス前の12月23日午後8時で今年のポジションを全決済して、来年から心機一転取引を開始するというような決済もいいかもしれないね。
サ:ハカセ、「午後7時になるとお腹が空いてしまうから、夕飯前に決済……」っていうのも決済方法としてアリなのかな?
及:サルサはロボットだから、お腹が空かないじゃないの!
高:はは、まあ、食事中はトレードどころじゃないだろうから、保有しているポジションをいったん解消するというのもアリかな。集中できないからね。
サ:よーし、僕は朝昼晩の食事はじゃまされたくないから、食事前は必ず決済するぞ!!そうだ、おやつ前も忘れずに決済しなきゃ。
及:もー、サルサはトレードしなくてよろしい!!
■ボラティリティ縮小による決済方法
及:トレイリングストップや時間による決済の他にも、決済のアイデアってあるのかしら?いろいろ考えると決済方法って多彩よね~。
高:ブレイク後の値幅を狙うようなエントリー方法の場合、期待していた動きをしないという理由で決済するような方法もあるよ。具体的には、ブレイク後に大きな値幅を期待してエントリーしたけれど、ブレイクした割にはたいした値幅もなく、抵抗線や支持線付近で停滞するような動きのときに決済というような感じかな。

サ:ヨコヨコ~した動きになっちゃったね。でも、もう少し待ってれば、ズバーっと動くかもしれなくない?せっかくまだ含み益も出ているわけだし。
高:うーん、その考えって、トレーダーには危険だよ。当初エントリーしたときの理由が、「ブレイクしたときに発生する大きな値幅を狙う」のが目的だったわけだから、その前提が崩れた時点で決済するというのは合理的な考えだよね。
及:つまり、ボラティリティが縮小した時点で、上にいくか下にいくかはバクチなのだから、理由もなくもっているのは避けたほうがいいということね。
高:その通り!さっきもいったけど、理由もなくダラダラと未練がましくポジションをもっているのはダメってことかな。
サ:でも、ポジションもったら愛着湧いちゃうんだモン。
高:いずれにしても、エントリーしたときに考えていた前提条件が崩れ去った時点で決済を考えるという習慣を身につけると、いろいろな決済方法を思いつくことができると思うよ。
サ:こんなときも同じかな?「V字回復を期待して買いエントリーしたけど、V字回復にならなかったから、決済!」とか。

高:うん、いいと思うよ。重要なのは、エントリーしたときの目的がなくなった時点で決済するということだから。「V字回復にならなかった」という定義づけが難しいかもしれないけど、経験則上、エントリーのときの前提が崩れたら、迷っていないで早めに決済したほうが良い結果が得られると思うよ。
サ:はーい!
高:今回は決済について深く掘り下げてみたけど、どうだったかな?
及:トレイリングストップは、早速今日からでも使えそうね。
高:うまく活用できれば、トレードの収益が増えるはずだよ。さて次回は、ドテンについて説明しようかと思っている。お楽しみに!
ハカセの一言
エントリーしたときに考えていた前提が崩れた時点で、決済するようにしましょう。 






