前回の本欄で「3月17日のオセアニア時間において瞬間的にもつけた76円台という対ドルでの円の戦後最高値が、これをもって『ドル/円』の最終的な大底となる可能性も十分にあるものと考えている」と述べ、加えて、
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- 気鋭の経済アナリストが読み解く為替相場の本質:田嶋智太郎
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■上値抵抗ブレイクなら「ドル/円」は上昇基調へ
東日本大震災発生から1カ月余りが経過し(執筆時)、この間、外国為替市場には大きな変動が見られた。
前回の本欄で「3月17日のオセアニア時間において瞬間的にもつけた76円台という対ドルでの円の戦後最高値が、これをもって『ドル/円』の最終的な大底となる可能性も十分にあるものと考えている」と述べ、加えて、「これをもって過去40年来続いた円高の歴史にピリオドが打たれる可能性がある」とも述べた。
いずれにしても、超長期の円高が最終最後の局面にあるとの見方は、これまで本欄でも繰り返し披露している。長らくの円高基調が転じて円安基調となるタイミングが、震災の影響によって少し早まったという感覚である。
その実、3月18日に実施されたG7協調介入後の「ドル/円」は、震災当日の高値=83.30円、その直前(2月16日)高値=83.98円を次々と上抜け、ついには、当面の強い上値抵抗と見られていた昨年12月高値=84.51円をも上抜けることとなった。
結局は4月6日に85円台半ばまでの上昇を見て、その後は反落。「下向きの200日移動平均線(200日線)を上抜けて、短期的に急上昇した場合は売り」というグランビルの法則を地でいく格好となった。
テクニカルな観点から多くの市場関係者が注目しているのは、執筆時、85円台半ばあたりに控える重要な「節目」が強い上値抵抗になっているということである。「ドル/円」の週足(チャート1参照)を見るとわかるように、4月6日の高値付近には一目均衡表の「雲」下限に加えて、07年6月高値と10年5月高値を結ぶレジスタンスラインが控えており、これらが強い抵抗として意識されているとの見方が大勢を占める。
逆にいえば、仮に、この上値抵抗をブレイクしてきた場合のインパクトは相当に大きいものといえる。なにしろ、「ドル/円」は07年7月下旬以来、長らく週足「雲」上限に上値を押さえられ続けてきたのである。
執筆時の「雲」上限は87円台半ばあたりに位置し、当面は同水準をブレイクできるかどうかが大きな焦点ということになるだろう。仮に、同水準をブレイクしてきた場合には、「ドル/円」が長期的な上昇基調に転じたとの感触を相当に確かなものとすることであろう。
■米金融政策の正常化にはもう少し時間を要する?
今後のドルの行方を司ると思われるのは、いうまでもなく米金融政策の行方である。
振り返ると、4月6日に85円台半ばの高値をつけるに至った背景には、ひとつに米国の早期金融政策正常化に対する強い期待というものがあった。連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーを含む米地区連銀総裁の発言にかなりタカ派なものが目立っていたうえ、4月1日に発表された3月の米雇用統計(含む失業率)の結果を、市場が「米雇用は着実に改善している」ととらえたこともある。
結果、米国の量的金融緩和策第2弾(QE2)が6月末で予定通り終わるとの見方が強まったばかりか、一部には「連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めに舵を切る時期がだいぶ近づいてきた」との見通しを唱える向きまで現れた。
しかし、ことはそう簡単に運ぶものでもなかろう。周知の通り、バーナンキFRB議長はこれまでに、潤沢な流動性供給に支えられた株高の資産効果によって米国の雇用と消費を回復させたい意向を明らかにしている。
仮に、QE2後の金融政策が目に見えて引き締め方向に傾くようなことがあったとしたら、肝心の株価が大きく下押しやしないか心配だ。そもそも、雇用や消費を本格的に立ち直らせるほどの資産効果を期待するには「現在の株価水準ではまだまだ足りない」といえよう。
そうでなくとも、米国の2011会計年度予算が「米史上で最大の歳出カット」を強いるものとなることは間違いなく、いま以上の財政政策による景気の底上げは期待できない。だからこそ、今後は余計に金融政策の舵取りが大きくモノをいうわけである。
少なくとも、QE2の終了予定である6月まで、FRBはQE2後の金融政策について明確な方向性を打ち出すことはないだろう。良くも悪くも、いましばしの時間稼ぎが必要だ。その実、前述したFOMCメンバーの見解は、計ったかのようにタカ派とハト派にわかれ、議長と副議長はややハト派というバランスのとれた(?)ものとなっている。そこに予定調和的なムードを感じるのは、おそらく筆者だけではなかろう。
結果的に、米10年債利回りが3・5%内外のレベルに留まり、米株価がジリ高となっている執筆時の状況は、まさにFRBの意向に沿ったものといえるのではないだろうか。 いえることは、とどのつまり6月半ばから下旬ぐらいまではなかなか明確なドル買い材料が出てきにくいのではないかと見られるということ。よって、それまでの間、「ドル/円」は一定のレンジ内でもみ合う展開を続けるのではないかと思われる。
もちろん、最近の「ドル/円」の戻り過程にあっては、「ドル買い」ではなくて、「円売り」といった傾向も見てとれないわけではない。確かに、日本に比べれば米国のほうが金融緩和の出口にはずっと近いだろう。何より大きいのは、これからしばらくの間、どうしても日本の貿易収支が悪化の方向に向かいやすいという事実である。
しかしながら、当面は米金利が一気に上昇し始めるという状況でもなく、日米金利差という観点から直ちに円売り・ドル買いが進むというわけでもなかろう。震災復興の観点から日本の輸入が大幅に増え、一方で、電力使用制限などにより一時的にも輸出が落ち込むというのも、本格的には今夏以降のこととなろう。その意味で、明らかな円安トレンドが見て取れるようになるには、まだ多少の時間が必要になるものと思われる。■「ユーロ/ドル」の上昇はそろそろ終わりが近い?
もちろん、「ユーロ/円」をはじめとするクロス円が強含みとなれば、それに連れて「ドル/円」が上値を追うというケースも考えられなくはない。
ただ、周知の通り、ユーロはユーロで背後に欧州債務問題を抱えており、少なくとも6月まではその影がチラつく。まず、次回のEU首脳会議は6月開催の予定であり、それまでは例の欧州金融安定化ファシリティ(EFSF)機能拡充策を柱とするユーロ圏再生の行方がなかなか定まらない。加えて、6月まではストレステストの結果公表を待たねばならず、ユーロを積極的に買い進めるにも自ずと限界はある。
それでも、4月7日のECB理事会で利上げが決定されることは、かなり以前から市場のコンセンサスとなり、それを材料にユーロは買い上げられた。筆者は個人的にECB理事会と総裁会見後に「セル・ザ・ファクト」でユーロは売りに転じると見ていた。まして、トリシェECB総裁は会見で「一連の利上げの開始と決めたわけではない」とまで発言したのである。
にも拘らず、「ユーロ/ドル」はその後も上値を拡大し、あろうことか4月12日から執筆時まで4日連続で1・45ドル台を垣間見るといった展開になっている。
この最大の要因は、やはり原油と金の先物価格が一段高となったことで、ECBが一段とインフレ警戒を強めて追加利上げに踏み切るとの見方が市場で台頭したことにある。その意味で、今後もとくに原油価格の行方からは目が離せないが、その原油価格の騰勢も「そろそろ一服」なのではないか。筆者には、原油もユーロも目先的には買われ過ぎの状態にあるものと思えてならない。念のため、反落リスクには警戒しておいたほうがいいだろう。
テクニカル的には、08年7月高値から10年6月安値までの下げ幅に対する61.8%戻り=1.4450ドルという水準が以前からひとつの上値メドと見られていたわけで、ECB理事会後に同水準を意識した展開となったことは重要である。かねて「ユーロ/ドル」の価格推移と61.8%というフィボナッチ比率は非常に相性がいいことで知られる。その意味で、今後は目標達成感の拡がりから利益確定の売りが出やすくなるという見方もあろう。
また、チャート2に見られるように、「ユーロ/ドル」は2月半ば以降、絵にかいたような上昇チャネルを形成しており、その下限を下抜けるようだと売り圧力が強まりやすくなるものと思われる。その場合、まずは3月28日安値=1.4021ドルが意識されやすくなり、同水準を下抜けると調整ムードが一段と広がりやすくなる。
話をまとめると、6月半ばから下旬ぐらいまではドルもユーロも積極的には買い上がりにくく、結果的に「ユーロ/ドル」「ドル/円」「ユーロ/円」のいずれにも方向感が出にくいものと見られる。よって、円安傾向が鮮明になるのは、年後半からということになるだろう。







