まず厳密にいうと、『システムトレード』と『自動売買』はわけて考える必要があります。システムトレードは、トレードする際に売買の判断基準の方法論を指すものであり、その投資手法を実行するにあたり、人間の手によって売買注文を出す作業をコンピュータのソフトウェアを使って自動化することを『自動売買』と呼びます。
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- 自動売買、システムトレードとは何か?:杉本貴秀
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システムトレードの定義
まず厳密にいうと、『システムトレード』と『自動売買』はわけて考える必要があります。システムトレードは、トレードする際に売買の判断基準の方法論を指すものであり、その投資手法を実行するにあたり、人間の手によって売買注文を出す作業をコンピュータのソフトウェアを使って自動化することを『自動売買』と呼びます。ですから、『システムトレード=自動売買』ではありませんので、ご注意を。
しかし、この両者は非常に親和性が高く、システムトレードの手法を利用される方は、ほとんど同時に自動売買の機能も利用される場合が多いため、2つの概念が一緒に括られることが多いのでしょう。
それでは本欄のメインであるシステムトレードの定義について、まずは確認しておきましょう。
システムトレードとは、『過去のデータに基づいて有効な売買手法やタイミングを統計的に分析し、そのなかから発見された優位性のある売買ルールに沿って、機械的にトレードを実行する手法』です。
この定義のなかにも、初心者の方にはわかりにくい用語がいくつか混じっていると思われますので、噛み砕いて説明してまいりましょう。
まず、システムトレードと対極の概念である『裁量トレード』と比較してみると、システムトレードというものがよりはっきりと認識できると思います。
裁量トレードとは、『自らの勘や感情などのデータ化できない感覚を頼りにトレードを行うこと』です。これは一般的にトレードを行われている方のほとんどが採られている投資手法でしょう。テレビや雑誌のニュースを見てトレードしたり、証券会社の営業マンから推奨された銘柄を買う、などのやり方はすべて裁量トレードと分類できるでしょう。
システムトレードは、このような裁量トレードとは一線を画すトレード手法です。極端に言い切ってしまえば、裁量トレードには数値的根拠がありません。個人の感覚に頼ったトレード手法であるため、失敗した場合の改善や修正ができないという致命的欠陥があります。
システムトレードの場合は、過去のデータ分析に基づいたトレード手法であるため、事前にかなりの範囲で結果を予測することができます。また、事前に想定した数値と実際のトレード結果との差異を比較し、より良くするために改善・修正することが可能です。この点が両トレード手法のもっとも大きな違いといえるでしょう。凡人のためのトレード手法
世の中の事象はすべて、さまざまな要因が絡み合い、複雑で混沌とした状態にあります。トレードに関してもまったく同様で、世界中の投資家が参加する市場というフィールドには、それこそ参加者の数と同じだけさまざまな要因があり、それに応じて価格が変動するという性質をもっています。まさに混沌とした世界、カオスです。
このような複雑性をもった市場のなかで、トレードにおいて着実に利益を出していくという行為は、非常にデリケートであり、感情に任せたトレードだけで勝ち続けることは至難の業です。
投資において勝つということは、一過性の結果としてではなく、より長期的なスパンで利益を獲得し続けるという結果が求められます。そのなかで、個人のトレード成績を良くしていくという視点に立ったとき、失敗してもその結果から教訓や知識を得て、今後の投資手法にフィードバックしていくことによって、長期的なパフォーマンスを良化させるという作業が絶対に必要となります。これはトレードの世界に限らず、ビジネスでもスポーツでも同じなのではないでしょうか。
裁量トレードの場合、個人の感性のみに頼った投資手法なわけですから、良い結果を出し続けるためには、極端にいえば、あなたがトレードの天才である必要があります。
投資の第一線で活躍するほんの一部のファンドマネージャー並みの鋭い感性と、情報源をもつ必要があるのです。これはふつうに考えれば、どだい無理な話です。
本誌を購読されている読者の方にしてみれば、ふつうに生活している一般の方がどのようにすればトレードにおいて利益を出すことができるのかが重要なのですから。最初からあなたが天才であることを前提としてトレード手法を語ることは、まったく意味のないことになります。
しかし、裁量トレードで投資を行っている方は、このような無謀なチャレンジに陥ってしまっているのです。それは、目隠しをしてドライブしているぐらいの危険なことなのです。
みなさんのような、ふつうの社会生活を送られている方が投資にチャレンジする場合、本誌で紹介するシステムトレードという手法は、非常に有用なものとなるでしょう。
いわばあなたの投資ドライブを快適で安全にしてくれるカーナビゲーションとなってくれるでしょう。天才的なF1ドライバーではないあなたにとって、システムトレードは優秀な水先案内人となってくれるのです。システムトレードとは、まさに、私やあなたを含めた凡人のための投資手法であるといえるでしょう。
マネーボール理論とは?
野球の本場メジャーリーグにおいて注目を集めている理論があります。それは、アスレチックスのゼネラルマネージャーであるビリー・ビーン氏が中心となって球団を強化していった戦略と実践を紹介した本から名づけられた理論です。
弱小球団で資金力も乏しかったオークランドアスレチックスが、どのようにして毎年プレーオフに進出するような常勝チームに生まれ変わったのか。その根本にあるのが『マネーボール』という本にて紹介されている、データ分析に基づいた他に類を見ないほどの独自の戦略・手法だったのです。それを一般的にマネーボール理論と呼びます。
これは簡単にいえば、ホームラン数や防御率など、野球界においてそれまで常識とされていたデータや感覚的な数値をいっさい排除し、より本質的に重要となるデータは何なのか? を追求した理論です。
もう少し具体例に沿って見てみましょう。
まずは攻撃面から。マネーボール理論においては、偶然性に左右される指標を軽視し、打者の純粋な能力を示す指標として長打率と出塁率を重視します。とくに、出塁率を高めることになる四球による出塁を重視し、打者の選球眼の良し悪しを重要視して、ドラフト戦略などにも活用します。これまでのホームラン打者を良しとする考え方からすれば、非常にユニークな戦略だったのです。
とくに、送りバントや盗塁など、相手にアウトを与えてしまう可能性の高い戦略を真っ向から否定したことが話題を呼びました。これは『野球は27個のアウトを奪い合うスポーツなのだから、みすみす相手にアウトを献上することは悪である』という明確な考え方によるものです。
次に守備面を見ると、投手が自分で防ぐことのできる与四球、奪三振、被本塁打などの指標は重要視されるが、被安打はほとんど省みられない。「ヒットは偶然の産物であり、防げない」という極端な考え方に基づいているのです。
それまでの野球理論では考えられないほど、徹底的なデータ分析と独自の視点によって、このマネーボール理論は成り立っています。また、注目していただきたいのは、その特異な理論や戦略に沿って、実際にドラフトから実際のゲームまで、徹底的に実行したことです。
新しい手法や考え方は、どのような世界でも反対と批判にさらされるものです。しかし、独自の理論であっても、それを裏づけるデータやしっかりとした根拠があったからこそ、戦略通りに敢然と実行することができたのではないでしょうか。
マネーボール理論ができ上がった背景には、アスレチックスの球団事情が大きく作用していました。それは、ニューヨークヤンキースのように潤沢な資金もなく、限られた資源のなかでよりよい結果を出さなければならないという、『弱者の戦略』でした。いかにコストをかけずにチーム力を上げ、ライバル球団に打ち勝つか、ということに最適化した戦略であったといえるでしょう。
ほら、みなさんのトレードと状況が似ていると思いませんか?マネーボール理論について詳しく知りたい方は、一度本を読んでみて下さい。
ホームランをガンガン打てる強打者や、160キロ近いスピードボールを投げられる天才投手を獲得するためには、非常に大きなコストがかかります。ですから、貧乏球団であるアスレチックスは、まったく違う視点から選手を評価し、低コストで成績を最大化する必要がありました。
このような事情から、徹底的なデータ分析により、新しい独自の評価基準をつり上げ、実際のメジャーリーグの世界において素晴らしい結果を残すことに成功したのです。
これこそ『天才を前提としない手法の確立』といえます。世界中から野球の天才が集まるメジャーリーグにおいて、それまで見向きもされなかった選手たちを次々とドラフトで獲得し、マネーボール理論に基づく徹底的な戦略の実行によって、常勝軍団をつくり上げたのです。
マネーボール理論とシステムトレードの相似点
マネーボール理論とシステムトレードは、『徹底的なデータ分析』と『理論の忠実な実行』という共通点があるのです。見せかけの数値や、それまでの根拠のない常識に騙されず、より本質的に重要なデータとは何なのか?を究明し、有効であると導き出された戦略や手法を、何ものにも惑わされずに徹底的に実践する。これが両者の共通点であり、強みでもあります。
システムトレードにおいては、重要とされる指標には【勝率・プロフィットファクター・損益レシオ・最大ドローダウン等】があります。これらの数値の意味については、他でいろいろと書かれていると思いますし、私の過去のコラムにおいても紹介しておりますので、そちらをご参照下さい。
システムトレードにおいては、データ分析や理論から導き出された有効な戦略を徹底的に実行すること、については簡単です。最初に紹介した自動売買のシステムが、それを容易に助けてくれるのですから。
しかし、マネーボール理論が野球界で唯一絶対の正解ではないように、システムトレードも投資の世界において唯一絶対的に正しい!という訳ではありません。しかし、個人、個人の資質や才能に頼らない手法、また、資金が潤沢にあるわけではないあなたが使うべき手法、という点においては、非常に適したトレード手法なのではないでしょうか。
これを機会に、システムトレードを利用する投資家の方が増えることを願っております。
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