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金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)|第7回[YEN蔵]

金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)|第7回[YEN蔵]

過去最大になった雇用の落ち込み

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界的に経済の落ち込みが大きくなっています。経済の減速が起こると雇用情勢が悪化するのは必ず起こることですが、今回の雇用情勢の落ち込みが過去のリセッション時と比較して際立っているのは、そのスピードの早さです。

 世界各国が同じような状況になっているのですが、まずは米国の雇用統計を見てみましょう。5月8日に発表された4月の米雇用統計では、失業率が14.7%となりました。3月6日に発表された史上最低水準の3.5%からわずか2か月で急速に上昇しました。3.5%という失業率は1969年の3.4%以来の歴史的な低水準でした。それが4月3日に4.4%に上昇し、今回14.7%となりました(図①)。

米国失業率の推移(2019年6月〜2020年5月)

 これはリーマンショック時の10%、1982年の10.8%を超えるひどい数値です。リーマンショック時は2007年5月に4.4%まで低下した失業率が徐々に上昇していき、リーマン・ブラザーズが破綻した2008年9月には6.1%に。失業率がピークとなったのは2009年10月でした。リーマン・ブラザーズ破綻から1年が過ぎてから失業率はピークの10%まで上昇しました。

 過去の不況時は、企業が一時解雇(レイオフ)するまでに時間がかかっていました。しかし、今回は企業のレイオフというよりも社会活動自体が停止されたため、職を失う人の増加スピードが過去と比べ物にならないぐらい早かったのでしょう。

 もう一つ、失業率が上昇し離職者が増加したのには米国の雇用環境も影響しています。米国の給料の支払い形態は週給と2週間に1回の割合が多く、月給は意外と少ないという事実があります。そして、今回の雇用者数の減少を業種別に見ると、娯楽や宿泊などの産業が765万人の減少となりました。そのうち食品やサービスの占める割合が多く、549万人の減少でした。ロックダウンで一番影響を受けたレストランなど飲食業での雇用減少が大きかったことが分かります。

 米国はもともとレイオフが普段でもあり、今回はその割合が80%ほどに達しました。また、今回のロックダウンによって失業保険申請のハードルが下がったこともあり、新規失業保険申請件数が急増したのです。

雇用統計と相場の影響

 先月は米国の雇用関連の指標について書きましたが、今月は米雇用統計をもう少し踏み込んで説明すると共に、他の国の雇用統計と比較してみようと思います。

 米国の雇用統計は月次で発表される指標で、原則として翌月の第1金曜日に発表されます。月初に発表される統計で、しかも米国の経済状態を表す指標ということで、市場の注目度は高いです。この指標の中で三つの数値が注目されます。①非農業部門雇用者数②失業率③時間あたり賃金の伸び率—です。これら三つの数値は事業所をベースにした事業所調査と、家計へのヒアリングを中心とした家計調査から成り立っています。

 ①の非農業部門雇用者数は英語でNon-Farm Payrollsといいます。Payrollsから分かるように、給料の支払い帳簿を基に集計された就業者数が発表されます。対象となる事業所数は多いのですが、経営者や自営業者はカウントされず、翌月以降大幅に修正されることもあるという欠点があります。

 2015年12月に、米連邦準備制度理事会(FRB)の前議長であるイエレン氏は「月10万人弱の増加ペースがあれば労働力の増加分をカバーできる」「月20万人増であれば労働市場のスラック(緩み)を吸収するのに十分な数字」と述べています。そのときから状況は違ってきていますが、移民の国である米国では就業者の増加数が経済に与える影響は大きいと思います。

 ②の失業率は、家計調査をベースにして約6万世帯にヒアリングしています。16歳以上の年齢別、性別、人種別、学歴別のカテゴリー分けがなされています。また失業期間の長さ、失業理由、地域、求職中かどうかなども調査されます。

 職探しを諦めた人や、経済的理由のためにパートタイム就労をしている人を含む失業率をU6失業率(不完全失業率)と呼び、これは当然通常の失業率よりも高いのですが、これが本当の状況を示す失業率ではないかという考え方もあります。

 ③に関しては、事業所調査では週平均労働時間、時間あたり平均賃金、週あたり平均賃金が発表されます。特に時間あたり平均賃金の上昇率が重要で、これらは個人所得やインフレ動向を分析するための重要なデータになります。かつての景気の拡大期には前年比4%ほどの上昇になっていましたが、リーマンショック以降は2~3%の上昇にとどまり、3%を超えると良い指標という評価がなされていました。イエレン前議長などは労働市場には緩みが存在するとたびたび言及していましたが、この賃金上昇率の低迷は利上げをためらう原因になっていました。

 今回の米国のロックダウンでは多くの失業者が生まれましたが、4月の賃金上昇率は前月比4.7%、前年比7.9%と3月分の0.4%、3.1%から急上昇しました。これは飲食業など比較的賃金が低い労働者の職が失われ、金融、コンサル、ITなど賃金が高い人たちが影響を受けていない結果ではないかという皮肉な状況になってしまいました。

米国の雇用統計で注目すべき数値

日本の雇用指標

 日本の雇用指標は、失業率と有効求人倍率が注目されます。失業率は総務省統計局から前月分が翌月下旬に発表されます。そして、有効求人倍率は厚生労働省から前月分が翌月下旬に発表されます。

 失業率は、1948年が0.7%、1970年が1.1%、1991年が2.1%、2002年が5.4%と上昇していましたが、その後は徐々に低下して昨年は2.4%で推移しています。

 有効求人倍率は、公共職業安定所の求職者数と求人数を基に発表されます。1倍を超えていれば人手不足、1倍を下回っていれば人手余剰であることを示します。1973年に7.76倍まで上昇し、その後1999年に0.48倍まで低下しました。2018年は1.61倍、2019年は1.6倍となっています。

 直近の数値は、3月の失業率が2.5%と前月の2.4%から悪化。有効求人倍率は1.39倍と、前月の1.45倍から悪化しました。

ユーロ圏の雇用指標

 ユーロの経済指標は、ユーロスタット(Euro stat、欧州委員会統計局)と欧州中央銀行(ECB)によって発表されます。ユーロ圏の失業率は月次のデータが翌月末~翌々月初に発表され、直近のデータは第1四半期の雇用者数が1億6036.3万人となり、前月から0.2%減少しました。3月の失業率は7.4%となり、前月の7.3%から上昇しています。

 ユーロ圏ではドイツとフランスの占めるウエイトが大きく、ドイツは人口比で34.3%、国内総生産(GDP)比で29.2%を、フランスは人口比で19.6%、GDP比で20.3%を占めています。ちなみに、イタリアは人口比17.7%とGDP比15.2%、スペインは人口比13.7%とGDP比10.4%です。これら4か国でユーロ圏の人口とGDPの4分の3を占めています。

 ドイツの雇用統計(失業者数、失業率、求人数など)は、ドイツ連銀と連邦労働局から当月末に発表されます。ユーロ圏の失業率より1か月早く発表されるため注目が集まります。直近の数字は4月の失業率が5.8%(前月5%)、失業者数は37.3万人増加(前月1000人)してトータル264.4万人となりました。ドイツでも4月から雇用情勢が悪化しています。

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英国の雇用指標

 英国の雇用指標の中で、翌月中旬に英国立統計局(ONS)から発表される失業保険申請件数は速報性があるため注目されます。失業率は失業保険申請件数と同時に発表されますが、これよりも1か月遅れで発表される国際労働機関(ILO)ベースの失業率が注目されます。ILOベースの失業率は3か月移動平均の形式になっています。賃金に関しては週平均賃金が注目されますが、賃金交渉やボーナス支給時期の影響を受けるため、3か月移動平均の前年比が注目されます。

 直近の数字は、4月の失業保険申請件数が85.65万件となり、3月の1.21万件から急増しました。これによって失業保険の受給者は209万7000件と1996年以来の高水準となりました。1~3月のILO方式失業率は3.9%と、前月の4%から低下。平均賃金は2.4%と、前月の2.8%から低下しました。

 英国は3月23日にロックダウンが開始されたため、失業率などはその分をカバーしきれておらず、低いままになっているという評価です。

豪州の雇用指標

 豪州の雇用統計は、豪州統計局から発表される雇用者数、失業率、労働参加率で、月次データが翌月第2あるいは第3木曜日に発表され、速報性があります。雇用者数はフルタイム、パートタイムそれぞれが発表されるのですが、フルタイム雇用の動向が注目されます。

 直近のデータは、4月の雇用者数が59.43万人減少と、前月の5900人増加から悪化。このうちフルタイム雇用は22.05万人減少と、前月の400人減少からさらに悪化しました。失業率は6.2%と前月の5.2%から悪化、労働参加率も63.5%と前月の66%から悪化しています。

※この記事は、FX攻略.com2020年8月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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えんぞう。米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行と外資系銀行にて、20年以上、外国為替ディーラーとして活躍。現在はトッププロトレーダーとして為替、日経平均、日経オプション、個別株の取引を行う。投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨を始めとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。 ・メルマガYEN蔵 リアル・トップ・トレーディング
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