※この記事は、FX攻略.com2018年6月号の記事を転載・再編集したものです
貿易戦争へのリスク
トランプ大統領は、全ての国を適応対象として突然、鉄鋼25%とアルミニウム10%の輸入関税の導入を決定。ただし、北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国のカナダとメキシコは適応除外のお墨付きをもらっており、欧州連合(EU)、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジル、韓国も当面、適用除外と思われています。また日本に対しては、自由貿易協定(FTA)の交渉を希望し、主ターゲットの中国に対しては米国との貿易赤字を1000億ドル削減するように要請との報道もありました。
3月22日に中国に対して知的財産侵害や企業への技術移転強要への対抗措置として、「米通商法301条」を発動し、輸入関税とは別枠で年500億ドルの制裁措置を決定しています。また3月15日に米国際貿易委員会(ITC)は、中国製アルミホイルの輸入で米企業が損害を受けているとの最終判断を下し、中国製品に対する制裁関税の適用が確定済みで、中国の報復関税の実施が避けられそうにない状態です。
EUや日本に対して、米国の貿易赤字削減に向け輸入制限を実施する圧力を強めており、EUはこの措置に反発。オートバイやジーンズ、靴、化粧品、バーボンなど計100点近い対象品目をリストアップするなど報復関税を計画中で、本格的な貿易戦争への懸念も広まっています。
トランプ大統領の信任低下リスク
3月以降でもコーン国家経済会議(NEC)委員長の辞任、ティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官の解任と、側近が離れる動きは止まりそうにありません。
ロシア疑惑を調べているモラー特別検察官はトランプ大統領一族が経営するトランプ・オーガニゼーションに対し、ロシア関連文書を含む文書の提出を求める召喚状を送り、マケイブ前FBI副長官は退職予定日の二日前に免職されながらも、コミー前FBI長官の解任に関連した会話録音やメモを提出したとあります。打たれ強く何があっても安定した支持率を維持していますが、米中間選挙を控えて不安感は隠しようがありません。
その他のリスクも多数存在
それ以外でもトルコ軍によるシリアのアフリン武力制圧、サウジアラビアとイランの核開発問題を含む対立は続き、中東で地政学的リスクの拡大が予想されます。ロシアの元情報員暗殺未遂事件を巡り英国とロシアの関係も悪化しており、イタリア総選挙でも安定政権は樹立できずにいます。
EUと英国はブレグジット交渉で移行期間延長の合意はしましたが、不安材料は消えず、国内では森友文書の改ざんを巡る日本の政局混迷もリスクとして考えられます。
金融政策の違い
金融政策では、3月21日に米連邦公開市場委員会(FOMC)は予想通りFF金利を0.25%引き上げ、年内3~4回の利上げ期待は強く残りました。欧州中央銀行(ECB)は9月の債券買い入れを縮小し、2019年の利上げ開始の期待感が高まっています。
イングランド銀行(BOE)は3月22日の金融政策委員会で、9名中2名が予想外の利上げを主張、引き締めが必要になる可能性を示唆し、早ければ5月に再利上げの期待も変わらず強いものがあります。
日銀はソフト・テーパリングが期待されながらも、黒田日銀総裁の再任と雨宮・若田部日銀副総裁の下で2%の物価安定目標の実現に向けて、強力な金融緩和を継続する姿勢は現時点でも変わっていません。
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相関関係では為替相場はリスクに敏感
別表(1)をご覧ください。2017年1年間と2018年1月2日~3月20日までの相関関係を比較した表です。+1.0は相関関係が最も高く、-1.0は逆相関関係が最も高いことを表しており、昨年と今年を比較すると大きな変化があることが分かります。
「USDJPYとUSDCADは-0.704」「USDJPYと米10年債利回りは-0.899」で、2017年の相関関係は崩れ、逆相関関係へと変化しています。「USDJPYとN225は+0.802」と相関関係の動きとなっています。
別表(2)の1~3は、期間が2018年1月2日~3月20日の終値を表しています。(2)-1はUSDJPYとN225を表しており、日本株安=円高へと動いています。(2)-2はUSDJPYとUSDCADを表しており、カナダドル安=円高へと動いていることが分かります。(2)-3はUSDJPYと米10年債利回りで、米金利の上昇=円高へと動いており、市場のイメージに反して共に真逆に動いていることが分かります。
日本株安と円高の流れは相変わらずですが、資源価格と関連性の高いカナダドルが売られ、リスク回避の流れが円買いへと動き、米金利上昇による日米金利差の拡大から円売りへと動くのではなく、世界経済への悪影響が懸念され逆に円高に動いていることになります。つまり、今年に入ってからはリスク回避の動きに合わせたドル円相場と考えても良いでしょう。
※この記事は、FX攻略.com2018年6月号の記事を転載・再編集したものです
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