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FX力を鍛える有名人コラム

中長期的にはドルの価値希薄化を懸念[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2020年4月20日号

先週のドル円相場は

FRBが無制限の流動性供給を続ける中、ドル需要が緩和するとの見方から、週前半は下値を試す動きとなり、106.93円まで下落。しかし週後半は、トランプ大統領が経済活動再開の指針を示したことや、ウイルス治療薬の治験で好結果が出たとの報道を背景に下げ渋る展開となり、107円台中心のもみ合いとなった。

予想以上に悪い経済指標

先週発表された米国経済指標は目を覆うばかりの惨状となった。3月の小売売上高は前月比-8.7%(予想-8.0%)、4月のNY連銀製造業景気指数は-78.2(予想-35.0)、4月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数は-56.6(予想-32.0)と、いずれも過去最大のマイナスを記録した。また4月11日までの週の新規失業保険申請件数は524.5万件となり、過去4週間の累計は2200万人を突破した。過去10年間で創出された雇用がたったの1か月で吹き飛んだことになる。エネルギー需要消失を懸念して、原油先物は17ドル台と1999年以来の安値をつけた。

米国で都市部のロックダウンが敷かれてから1か月、今後はそれを反映した経済指標が発表される。さらに過去最悪・壊滅的なデータに対する心の準備をしておく必要がある。

景気悪化という点では日本もユーロ圏も同じだが、米国は世界経済の中心であり、景気指標の発表が他国より早い分、市場に与えるインパクトも大きくなる。

米財政悪化とFRBのバランスシート

米国は景気後退のショックを和らげるための財政支出が2兆ドル超に上る。財政悪化も先進国の中で突出しており、2020年の財政赤字はGDP比15.4%と日本の7.1%やユーロ圏の7.5%を大きく上回る見込みだ。

財政赤字を埋めるために政府が国債を大量に増発し、中央銀行が市中でそれらを買い入れる。これは日本の十八番だったが、今や米国のほうが規模・スピードで上回る。FRBが3月15日に量的緩和の再開を決定して以来買い入れた米国債の規模は約1.3兆ドル。これでFRBのバランスシート(総資産)規模は日銀・ECBを抜いて一気にトップに躍り出た模様だ。

2020年4月19日付日本経済新聞より

2020年4月19日付日本経済新聞より

ソロスチャート再び

2008年のリーマンショックの際には、日銀のバランスシート規模をFRBのそれで除した、いわゆる「ソロスチャート」とドル円の相関性が注目された。中銀のバランスシートが拡大している、言い換えれば紙幣を大量に増刷している国の通貨は弱くなるという理屈だ。

無制限の量的緩和により、FRBのバランスシートは今後2~3か月のうちに当初の2倍、8~9兆ドル程度まで膨張する可能性がある。ソロスチャートはリーマンショック時以上の鋭角で急落するだろう。最近のチャートはここで見つかったが、画像の転載が可能かどうか不明なので、各自参照していただきたい。

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バランスシートの量と質

ソロスチャートとドル円の相関性が今も有効かどうかは不明だが、要は、これだけ急激にバランスシートを拡大すれば(ドル札を刷りまくれば)、ドル安は避けられないのではないか、ということだ。またFRBは単にバランスシートの規模を拡大するだけでなく、市中の社債や貸出債権などリスク資産も大量に買入れるため、バランスシートの「質」も劣化させる。つまり、量・質の両面から、ドルの価値の希薄化が懸念されるのだ。ドルの価値の裏返しである金価格が2012年以来の高値を付けているのも、そういうことではないかと思わされる。

現在、ドル円は3月の暴落と急反発の中間地点付近で落ち着きどころを探る局面にあるが、中期的に見ればドルの下落余地は小さくないと見ている。トランプ政権もドルの下落を望んでいるだろう。目先は中立スタンスで小刻みな売買に徹するべきだが、中期的にはドルの下落トレンド再開に備えるべきだろう。

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