【来週の米ドル/円予想レンジ】→ 107.20-110.50
「人知れぬわが通ひ路の関守は宵々ごとにうちも寝ななむ(人に知られることなく私が通う道の番人は、毎晩眠っていて欲しいものです)」-。これは伊勢物語『通ひ路の関守』の一節だ。
米ドル/円相場においては109円半ばに“関守りの番人”の如き抵抗があり、同水準は日銀が追加緩和見送りをした4/28高値111.90と5/3安値105.535の61.8%戻しの水準(109.4686)となっている。
仮に超えた場合でも110.20-65には日足一目均衡表の雲下限や110円台でのオプション防戦、輸出企業の売り意欲が示される可能性が指摘されている。
円高・ドル高に対する日米政治の許容度
5/5に安倍首相は「急激な変動は我が国の貿易関連企業に大きな影響を与えるなど望ましくない」と明言。5/9は麻生財務相が「介入する用意がある」と述べ、経団連の榊原会長からは「(政府・日銀の円売り介入を)経済界としては支持したい」との見解が示された。
「Japans Notenbank zum Handeln bereit(日本銀行は行動に移す準備ができている)」というのは5/11付の独金融経済紙見出しであり、黒田総裁の姿勢を掲載。企業決算のピークを迎えたなか、減益理由を円高とし、「円高悪」の印象を色濃くしている。
では、円安ドル高に急転するだろうか。それは前号でも示したが、FRB管掌のドルインデックス(Broad)で見るとドルの名目実効相場がアップテンポで上昇した修正局面が続く、と読むのが無難だろう。無論、ドル急落はファイナンス上問題となるが、別観点でのポイントは米輸出企業の保護を目的とした一連の流れ、米国益が何かを再考しておく必要がありそうだ。
例えば環太平洋経済連携協定(TPP)の合意に併せ、米議会は今年2月に、自国の輸出に有利になるよう通貨を切り下げる国への対抗措置を盛り込んだ「ベネット・ハッチ・カーパー修正法案」を発効し、為替操作国に対する規定をしている。4/29に米財務省・外国為替報告書で日本が「監視リスト」に指定され、介入が一層困難になったと見るには予兆があったとも推考できたのだ。
「過度な円高は抑制。しかしドルの上昇にも限度。」としたクールな日米政治観点での考察が浅薄だったと筆者は猛省している。円高・ドル高に対する政治の許容度が米ドル/円相場に反映する可能性を、月末のサミットに向けてさらに睨みを強くしていく必要がありそうだ。
上値焦点は前出の109.4686圏、110.20-65。4/28高値111.90はまさに高嶺の花となろうか。下値焦点は5/10-11-12の安値圏108.22-26-30。同価格帯が割れると5/9正午に麻生財務相が介入牽制をした直前の安値107.22や同日の107.18維持が問われるだろう。
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円高圧力はやや後退したものの、ドル/円は経済指標を意識し上値の重い展開に。
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