2019年6月1日

なぜトレンドが出るのか[鹿内武蔵]

プロ同士は戦わず初心者を狩るのみ

 そもそも、なぜ相場にトレンドが生まれるのか。最近ふと疑問に思いました。

 24時間ずっと動き続ける為替相場では、常に買いと売り両方の売買が無数に行き交っています。これだけのボリュームだと、上下のバランスが拮抗して、ほとんどランダムに近い動きになるのではないか。そう、たしかに相場の多くの時間帯では、明確なトレンドがないレンジ相場です。これはつまり上に行くか下に行くかの予想ができない、ランダムな値動きが続いている状態ですね。

 でも、たまにですが、意志を持ったように、きれいに相場が一方向に動くことがあります。なぜこうなるのか。

 僕の仮説では、相場に大きな影響を与える大口投資家の間に、「こうなったら、こっちへ動く」という共通言語のようなものがあるのではないかと。

 FXはゼロサムゲームですから、利益確定の金額と損失の金額が、手数料を除けば等しくなるはずなのですが、プレイヤー基準で見ると勝つ人は少なく、負ける人は多いです。これはつまり、たくさんの資金を動かす少数のプロが勝ち、少しの資金を動かすたくさんの個人が負けていることになります。つまるところ、一部のプロが初心者狩りをして利益を得ているのが相場であり、FXです。

 こう考えていくと、次の条件が成り立ちます。それは、「プロ同士が戦うことは少ない」ということ。プロ同士が真っ向からぶつかり合えば、トレンドは生まれませんし、勝つプレイヤーと負けるプレイヤーの数がもっと近づきます。

 これはつまり、プロ同士は似た考えやトレード手法をゆるやかに共有していて、それに基づいて相場が動くためトレンドが生まれ、それについていけない個人は容赦なく狩られるのではないかと。

自分だけ勝つことはそりゃあ無理です

 それなら、共通言語はどういうものなのか。間違いなく、非常にシンプルなものでなければいけません。プロ同士でやり方を共有しているといっても、別にマニュアルがあったり、集まってミーティングをしているわけではないので、誰でも知っている、誰でも再現できる環境や考え方であるはずです。

 そう考えていくと、チャートパターンだったり、水平ラインだったり、トレンドラインやチャネルラインだったりと、誰でも見られる情報を基にした考え方がそれに該当するのではないでしょうか。

 テクニカル分析にしても、誰も名前を聞いたことがないようなものではなく、移動平均線やボリンジャーバンドのような、誰でも知っているものだからこそ、プロ同士での一般常識になり得ます

 ただ、ほとんど全てのテクニカル分析は、パラメーターが変われば全く別の形になります。同じ移動平均線でも、期間5と期間200は完全に別物です。なので、こういったテクニカル分析は、パラメーターを伴わないチャートのパターンやラインに比べると、プロの共有度は低いと思います。あるとすれば、200日移動平均線のような、メジャーな設定まででしょうね。

 なお、パラメーター設定がない一目均衡表が他のテクニカルと一線を画すのも、何となくうなずける気がします。

 プロ同士が情報共有するにしても、チャートをチェックするタイミングはまちまちですので、頻繁に形が変わるものではいけません。長い時間足ほど同じ形が続くので、共有されやすいはずです。

 よく「FXに聖杯はない」といわれますが、「自分だけが勝てる方法はない」という意味もあると解釈しています。地球の利益を独り占めできる必殺技はないのです。プロに勝たなくても構いませんが、プロの共通意識を追いかけることは大切です。そのためにはやっぱりベーシックな知識が必要ですね。

※この記事は、富士山マガジンサービス読者限定FX攻略.com編集部便りに掲載されたものを加筆・編集したものです。

鹿内武蔵の写真

鹿内武蔵(しかうちむさし)

株式会社tcl代表取締役。2008年のFX攻略.com創刊時から編集部に在籍、本誌と公式サイトの運営に携わる。取材や記事執筆の他、トレーダーとしてFXの運用も日々行っている。好きなテクニカルは平均足、好きな手法はブレイクアウト。

公式サイト:株式会社tcl