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原油価格はピークが近いか、米国の生産拡大[佐藤りゅうじ]

2016年12月、15年ぶりとなる石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国による協調減産が実現し、2017年5月、同年11月と2度にわたり協調減産の期間が延期されました。現在は2018年12月末まで協調減産が実施される予定となっています。

協調減産決定後、その効果に対して懐疑的な見方から、原油価格は一時42ドル台まで下落。しかし、今年1月には2014年12月以来の高値となる66ドル台まで上昇しました。ここまで原油価格が上昇すると、シェールオイルの増産も気になるところです。今回は、今後の原油価格の行方を占っていきましょう。

※この記事は、FX攻略.com2018年4月号の記事を転載・再編集したものです

在庫減少から4年ぶりの高値へ

まずは、昨年からの値動きを簡単に振り返ってみましょう(図①参照)。上記したように2016年12月10日、OPECとロシアなどのOPEC非加盟の主要産油国が15年ぶりに協調減産で合意したことを背景に、昨年1月には55.24ドルまで上昇します。

ただ、これを高値に、その後は協調減産の実効性や高い原油在庫の水準を背景に、じり安調の展開となり、6月には42.05ドルまで水準を引き下げました。それから10月までは、45ドル前後〜55ドル前後のレンジ相場が形成されていました。

そして、3月には5億3500万バレル台あった米国の原油在庫が、減産効果などからじりじりと減少し、10月には4億5000万バレル台まで低下すると、原油価格はレンジから上放れました。今年1月に原油在庫が4億1000万バレル台まで水準を引き下げると、原油価格は約4年ぶり高値となる66ドル台を付けました。 

米国は原油増産へ

しかし、原油価格の上昇は、これまでと同様にシェールオイルの増産を呼びそうです。1月17日、米エネルギー情報局(EIA)は、2月の米原油生産が日量1000万バレルとなり、そして来年は日量1100万バレルまで上昇するとの予想を発表しました。

この予想通りとなれば、米国の原油生産は2月にサウジアラビアを上回って世界第2位となり、来年終盤にはロシアを上回って世界1位の産油国となる見通しです。なお、米国の2月のシェールオイル増産量は、日量11万1000バレルとしています。

市場の一部では、この見通しに対し、最近の油田関連の人件費や関連サービス費用の高騰、地代の上昇などから、楽観的過ぎるとの見方があります。ただ、掘削技術の向上などにより、コストは大幅に低下しているとみられ、EIAの生産見通しに近い数値が出てくる可能性が十分にあるでしょう。

実際、リグ(掘削装置)の稼働数は昨年11月の729基を底に増加傾向にあり、750基以上稼働する状況になっています。以前、OPECが原油価格の下落により、シェールオイルを締め出そうとしましたが、最終的にはこれに失敗したことになります。

稼働率の低下

現時点では、減少を続けている米国の原油在庫ですが、2月〜3月にかけては気温の上昇により、エネルギーは不需要期になります。このため、製油所の稼働率も低下します。昨年末、製油所の稼働率は96.7%と高い水準にありましたが、現在は95%を下回っています。昨年2月に85%台まで低下したことを考えると、今後、一段と低下することが予想されます。

製油所の稼働率が低下する中で、シェールオイルが増産となれば、原油在庫は再び増加に転じる可能性が高まります。実際、昨年1月から3月にかけて製油所の稼働率低下を背景に、原油在庫は4億8000万バレル台から5億3000万バレル台まで上昇しています。今年も同様に、3月に向けて原油在庫が増加し、原油価格を圧迫することが考えられます。

投機筋の利食い売り

また、今回の価格上昇の背景には投機筋の買いが大きく影響しています。米先物市場の主体別の売買動向が分かる、米商品先物取引委員会(CFTC)が発表する建玉明細をみると、1月16日現在、NY原油は投機筋のグロスの買いが85万4090枚、ネットでは70万7787枚の買い越しとなっており、過去2か月にわたって過去最高の買い越し枚数が更新されています。

投機筋が現受けすることはほぼないため、これだけ買いが膨らむと何らかのきっかけで利食い売りに動くことが予想されます。この春、原油在庫が増加に転じるようなら、その可能性も高そうです。協調減産を緩めないのも、昨年のこの時期、原油在庫の増加を背景に原油価格が低迷していたためでしょう。春から夏のドライブシーズン前まで、原油相場は調整安を強いられそうです。

※この記事は、FX攻略.com2018年4月号の記事を転載・再編集したものです

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