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金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)第3回[YEN蔵]

金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)|第3回[YEN蔵]

世界の新興国で金融緩和が続く

 前回も書きましたが、現在のマーケットは世界中の中央銀行による金融緩和でジャブジャブに溢れたマネーが行き場を失い、それが金融市場に流れて株価を押し上げています。米中の通商協議が続いていたことで(1月15日の署名で第1段階の合意がなされました)、世界中の企業、特に大企業製造業は設備投資を控えており、資金が最初は債券に、次に株式に向かって昨年秋からの株高を演出しました。

 2019年には、欧州中央銀行(ECB)が9月に、米連邦準備制度理事会(FRB)が10月に金融緩和を行い、そこでいったん緩和を休止しています。しかし、FRBは2019年10月15日から毎月600億ドルの短期国債の買い入れを開始しており、これがQE4(量的緩和第4弾)ではないかといわれるほど金融市場に影響を与えている可能性があります。この短期国債の買い入れは、少なくとも2020年4~6月期までは続けるとしています。このことも前回触れています。

 一方で、世界中の新興国では2019年10月以降も緩和が続いています。例えば、ロシアは10月25日に7%から6.5%に、12月13日に6.5%から6.25%に利下げ。ブラジルは10月30日に5.5%から5%、12月12日に5%から4.5%と過去最低水準まで利下げしました。

 また、中国は11月20日に1年物最優遇貸出金利を4.2%から4.15%に、1月1日に預金準備率を13%から12.5%に引き下げており、メキシコは11月15日に7.75%から7.5%に、12月20日に7.5%から7.25%に連続利下げ。トルコは10月24日に16.5%から14%に、12月12日に14%から12%に利下げしました。

 このような利下げの動きは年が明けても続いており、2020年の1月16日にトルコ中央銀行は政策金利の1週間物レポ金利を12%から11.25%に引き下げ、南アフリカの中央銀行は政策金利を6.5%から6.25%に引き下げました。

 特に今年に入ってからの緩和は市場にインパクトを与えました。1月1日の中国の預金準備率は市場にポジティブな印象を与え、年初の株高リスク選好の引き金になった感じがあります。

トルコは実質マイナス金利に

 トルコと南アフリカの利下げは他国とはちょっと異なるので、それぞれの事情に関して少し触れておきたいと思います。

2019年1月から2020年1月までのトルコ政策金利の推移

 トルコの1月16日の利下げ自体はサプライズではなかったのですが、その利下げ幅が0.75%と大きかったことがサプライズとなりました(図①)。というのも、トルコの12月のインフレ率は前年同月比で11.84%と、11月の10.56%から上昇しました。今回の利下げで政策金利は11.25%になりましたから、消費者物価指数の11.84%と逆転して実質金利はマイナスとなってしまいました。

 トルコの消費者物価指数は昨年から低下していて、トルコ中央銀行は昨年7月から金融緩和を開始しました。1週間物レポ金利は5回の利下げで24%から11.25%と大きな利下げ幅となりました。声明文では「インフレの道筋はおおむね年末のインフレ予測に沿っていると判断される」と述べており、マイナス金利の説明はありませんでした。マイナス金利になるにもかかわらず0.75%という大幅な利下げに踏み切ったのは、政策金利を一桁台にするように圧力をかけているエルドアン大統領に配慮したからだと思われます。やはりエルドアン大統領に対する忖度があったのではないかと邪推してしまいます。

 それでは、なぜトルコ中央銀行はエルドアン大統領にべったりの政策を進めたのでしょうか。さすがにトルコ中央銀行も今回の利下げに関しては、「節度ある利下げ」という表現をしており、今後は利下げがあったとしても小幅にとどまる可能性があります。とはいえ、トルコの消費者物価指数は底を打ってやや上昇していますから、小幅な利下げでも実質的なマイナス金利が継続する可能性が高くなりました。

 マイナス金利によってトルコ経済が回復する可能性はありますが、通貨安を招くというリスクもあります。トルコの成長率は2018年第1四半期の7.4%から低下を続け、同年第4四半期は-2.8%、2019年の第1四半期は-2.3%、同年第2四半期は-1.6%とさえない展開を続けており、同年第4四半期にようやく0.9%とプラスに浮上しました。

 トルコ中央銀行による2019年7月からの利下げはそれなりに効果を出し始めており、実質マイナス金利が続けばさらにトルコ経済のサポート材料になる可能性が高いと思われます。ただ、トルコがマイナス成長になったのは通貨安の影響もあり、トルコリラの下落が一服していることは成長率の回復につながっている可能性があります。

 金融緩和は通貨安につながります。特に高金利で資金を集めている新興国においては、その傾向が強く出ます。今回の利下げにおいて、利下げ直後にはトルコリラは買われましたが、その後売られています。短期的には1ドル=6リラ、トルコリラ円は18円以下のリラ安になると通貨安のデメリットが出てくるかもしれません。

景気の刺激を図るため0.25%の利下げに踏み切った南アフリカ

 前述の通り、2020年の1月16日に南アフリカ準備銀行(SARB)は金融政策委員会で政策金利を0.25%引き下げて6.25%としたのですが(図②)、市場予想は据え置きだったのでサプライズな利下げとなりました。声明文において、今回の利下げの理由を「経済の成長とインフレ率の低下見通しが出たため」としています。

2019年1月から2020年1月までの南アフリカ政策金利の推移

 今回のSARBの経済見通しでは、2020年の成長率を1.4%(前回11月の予測)から1.2%に、2021年の成長率を1.7%から1.6%に引き下げています。そしてインフレ率に関しては、2020年は5.1%から4.7%、2021年は4.7%から4.6%、2022年は4.5%で変わらず、と2022年以外は引き下げました。このように経済成長率、インフレ率が引き下げられたことが、今回の利下げの原因となりました。

 SARBは2019年5月の金融政策委員会中期財政計画の発表以降、政策金利を引き下げるタイミングを探っていました。そしてSARBは同年10月の発表で中期財政計画の財政見通しを大幅に下方修正したのですが、これが投資家の失望につながりました。それを受け、格付け会社のムーディーズが南アフリカ国債を投資適格級から投資不適格級に格下げするのではないかとの思惑が広がっています。

 現状はS&P、フィッチ、ムーディーズの大手格付け会社3社の中でムーディーズだけが投資適格級としていますが、ムーディーズが投資不適格級に格下げすると南アフリカ国債はジャンク債とみなされて、南アフリカからの資金流出が懸念されます。

 2020~2021年度の予算案の発表が2月にあり、内容次第ではムーディーズの格下げにつながる可能性もあるため、市場はこの発表に注目しています。ですから予算案の発表までは金融政策を据え置いて、予算案の発表以降に金融政策を考えるという流れを予想していました。2月の予算案の発表は南アフリカランドにとっては重要なイベントになります。ここで格下げの見通しが高まればランド安につながる可能性があるので要注意です。

国債の格付けとインデックス

 南アフリカランドは取引の規制がなく、変動相場制によって自由に取引できます。トルコリラも取引に規制がなく、ターゲットバンドもありません。基本的には変動相場制のもとで自由に取引することが可能です。

 新興国通貨の取引を行う上で、規制がなく自由に取引できることは重要な要素です。また、流動性が十分あることも取引にとっては重要なポイントになります。南アフリカランド、ポーランドズロチ、メキシコペソ、トルコリラは、新興国通貨の部類に属しています。

 南アフリカ国債は新興国の中でも市場規模が大きくて流動性が高く、FTSE世界国債インデックス(旧シティグループ世界国債インデックス)に組み入れられています。このインデックスは、債券で運用する投資信託、年金などの機関投資家が自分たちの運用成績を評価するときのベンチマーク(座標軸)になります。自分たちの成績がこのベンチマークに対して、どのくらい上回ったか、下回ったかを比較することで、運用者の評価が決まります。

 運用者はこのベンチマークよりも成績が上回ることを目指し、ベンチマークに連動するような運用を行いながら微調整をして成績を上げようとします。ベンチマークと全く異なる大穴を狙うような運用を機関投資家はしませんし、投資信託はベンチマークに沿って運用することを明記しています。ですから、このインデックスに組み入れられている各国国債の比率は重要で、それを基に微調整していくことを目指します。

 FTSE世界国債インデックスには23か国の国債が組み入れられており、その中には南アフリカ国債も含まれていますが、ムーディーズの格付けが引き下げられて投資不適格級となった場合には注意が必要です。南アフリカ国債を組み入れていた機関投資家や投資信託がそれを売却するため、南アフリカランドの下落要因になります。

 したがって、2月の予算案の発表とその後のムーディーズの動きが重要になってくるわけです。

南アフリカの格付けに注目!

格付け会社ムーディーズ

格付け会社ムーディーズ

ムーディーズは、南アフリカの格付けを投資適格級で最低水準となる「Baa3」としています。これ以上引き下げられると、信用リスクの高い投資不適格級とみなされます。

※この記事は、FX攻略.com2020年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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YEN蔵
えんぞう。米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行と外資系銀行にて、20年以上、外国為替ディーラーとして活躍。現在はトッププロトレーダーとして為替、日経平均、日経オプション、個別株の取引を行う。投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨を始めとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。 ・メルマガYEN蔵 リアル・トップ・トレーディング
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