FX女優である陽和ななみさんがトレード成績向上を目指してFXのスペシャリスト山中康司さんからFXで利益を出すために必要な全てを皆さんと共に学んでいきます。今回もファンダメンタルズ分析の基礎について教えていただきます。
フローにおける時間的要因
陽和 前回は米国の経済指標や代表的なフローとして実需やオプションバリア、短期投機筋について山中先生に教えていただきました。今回は代表的なフローとしての時間的要因について教えていただきます。
山中 まずは時間的要因ですが、一つは24時間の間で起こる要因、もう一つが年間で起こる季節的な要因です(画像①)。季節的要因は例えば3月末、6月末、9月末、年末といった四半期ごとです。日本の場合、それぞれの会社の海外にある支店から、そこでの利益がドルでもたらされるので、そのドルを売って円に換えるのが海外利益送金になります。
一時期、トランプ大統領が海外の企業への税金を引き下げることがありましたよね?
陽和 法人税や海外還流利益の税率引き下げですね。
山中 そのときは海外の企業が上げた利益を米国に還流する動きがあったので、ドル買いにつながりました。このような海外利益送金もファンダメンタルズとして大きな影響があります。
また、米国債が世界で最も取引されている国債である点にも注目です。特に日本の機関投資家が長期米国債、10年債や30年債を大量に持っており、その米国債の利払いは毎年2月15日と8月15日となっています。債券そのものは持ち続けて、債券が満期になれば買い替えるので元本部分には影響はありませんが、金利だけでもかなりの金額が発生しますよね? そうすると金利はドルで入ってくるので、そのドルを売って円に換える動きが米国債の利払い日に起きます。年金基金が保有する米国債は、金利だけで1億ドルにもなります。本当にビックリするほどの金利が発生し、為替相場に大きな影響を与えます。
陽和 米国債については2月15日と8月15日に気を付けておけば良いのでしょうか?
山中 そうですね。もちろん米国債を買う動きも注意すべきですが、それより気を付けなければならないのがこの米国債の利払い日になります。
主要な市場と取引時間
山中 今度はもう少し短く、1日の時間帯で見ていきます。大体24時間取引しているのはFXだけです。それを考えると9時から15時までと取引時間が決まっている株のトレーダーがうらやましくもあります。
陽和 私は逆に取引できる時間がたくさんある方がうれしいです。
山中 考え方によりますね。ずっと相場を見ていなければいけないという考え方もありますし、いつでも取引できることはメリットでもあります。画像②では為替の1日を、夏時間で書いています。
陽和 冬時間よりも夏時間の方が期間が長いですよね。
山中 夏時間の期間は、およそ3月の第2週から11月の第1週までです。そうすると7か月間くらいが夏時間で、5か月間くらいが冬時間ということになります。東京では夏時間は6時が区切りになり、冬時間は7時が区切りになります。
ちなみに東京外国為替市場(以下、東京市場)やロンドン外国為替市場(以下、ロンドン市場)、ニューヨーク外国為替市場(以下、NY市場)といったワードがよくニュースに出てきますよね? ななみんはFXをやっているので分かると思いますが、知らない人から「東京市場ってどこにありますか? 見学に行きたいです」と聞かれることがあります。東京証券取引所は立派な建物があり、そこで取引が行われているので実在しますが、東京市場というのは建物や場所が存在しているわけではありません。
陽和 取引の行われる時間帯のことですよね。
山中 その通りです。基本的には各国の8時から17時までが外国為替市場ということです。例えば日本なら、東京時間の8時から17時までが東京市場になります。
東京時間の16時くらいから欧州は夜が明けてきて、ロンドン時間の8時から17時までがロンドン市場となります。ロンドン市場は最初の方が東京市場とも重なっています。さらに後半がNY市場とも重なっているので最も市場参加者が多く、イベントも多くなります。ロンドン市場の前半は欧州主要国の経済指標が発表され、後半になると米国の経済指標が発表されます。そういった意味ではロンドン、あるいは欧州の市場は非常に活発かつイベントも多い時間帯になります。
NY市場はニューヨーク時間の8時から17時までですが、17時というと東京時間の午前6時です。日本でこの時間から取引をしている人ももちろんいますが、多くの金融機関の関係者は7時に来て最初はニュースを見たり準備をしたりして、通常は8時から仕事を始めます。NY市場が引けてから東京市場が始まるまでの間(東京時間の6時から8時)は市場参加者が少なくなります。非常に流動性が低い時間帯になるので注意してください。
輸出入業者と仲値について
陽和 その他に注意すべき時間帯はありますか?
山中 注意しなければならない時間帯は結構あります(画像③)。東京の夏時間で細かく見ていくと、仲値が9時55分に決まります。この仲値は何のために使うか知っていますか?
陽和 輸出入業者が取引をするときに為替でドルが1秒ごとに値段が変わると大変なので、この値段、と決めておくのが東京仲値です。
山中 例えば、その当日に東京の仲値が1ドル111円50銭で決まったとします。輸出入業者が取引した時点で実勢レートは110円10銭だったらどうしますか?
陽和 しょうがないですが、我慢して仲値通りの取引になるのでしょうか。
山中 実は仲値は適用される金額が一定までと決まっています。
陽和 取引量によって決まっているんですか?
山中 はい。金額が決まっていて、10万ドル未満です。10万ドルを超える金額は実勢レートでお願いします、ということになります。
陽和 その場合はそのときの現在価格が適用されるんですか?
山中 そうですね。10万ドル以上の取引であれば、先ほどの例では110円10銭でお願いしますとなります。
一定の金額以上を仲値で取引すると、実勢レートとの乖離差が大きくなります。反対に少ない金額の取引をいちいちリアルタイムで行うと大変です。それこそ日本国内にはあちこちにメガバンクの支店があります。北海道で漁業をやっている人や西の方で農業をやっている人、そういった人たちが輸出入に絡んだりするときには為替決済が行われます。原則として個人の送金では10万ドルは超えません。10万ドル未満の取引をするときには仲値を使ことになります。
しかし仲値は時折変わります。例えば9万5000ドルといった取引において、実勢レートが仲値から2円も離れたら嫌ですよね?
陽和 大きな差になってしまいますね。
山中 ですから、仲値を決めたときから2円以上動くと第二公示レートといって仲値のレートが変わります。
陽和 それでも2円差は変わらないんですね。
山中 2円動かない限りは変わりません。まさに我慢ということになってしまいます。
仲値で取引する人たちには、もともと為替決済において銀行での買値と売値(TTSとTTB)というものがあり、1円離れています。私たちが銀行でドルを買おうとしても仲値プラス1円でしか買えません。1円のバッファーがあるため仲値から2円動くまでは我慢するしかないのです。しかし、2円以上動くのであれば変更することになっています。
東京市場で重要な時間
山中 東京時間の15時というのも結構重要な時間です。例えば、オプションでは権利の時間が重要になってきます。オプションの権利にはその時間までに行使しなければ消失してしまう期限(オプションカット)があります。その時間帯が東京時間では15時になります。この時間帯は株式市場も閉まりますので、注意が必要です。
他には米国の経済指標が発表される21時半にも注目です。
陽和 重要なものは21時半に発表されるんですよね。
山中 なぜ21時半なのか? これにはそれなりの理由があります。日本では重要な指標は午前9時ちょっと前の8時50分に発表されることが多いですが、これは株式市場が始まる直前だからです。株式市場が始まる前に経済指標を発表しておくと、それを織り込んで市場がスタートできます。同様の理由から米国でも株式市場が開く前の時間帯に発表されるのです。為替相場のような24時間動いている相場を除いた、株式や先物など他の市場が動き始める前の時間帯に重要な指標が発表されることが多いです。
そしてニューヨークのオプションカットが東京時間の23時、ロンドンフィックスが同24時となっており、これらも注目です。
陽和 ロンドンフィックスとは何でしょうか?
山中 ロンドンフィックスとはロンドン市場の仲値です。東京市場の仲値も英語では東京フィキシングと言います。
ロンドンフィックスは取引量の多いロンドン市場の仲値になるので、注目されています。ちなみに、東京市場の仲値が特に注目される日は何日だか知っていますか?
陽和 詳しくは分かりません。
山中 ゴトー日と言われています。日本では5日とか10日とか15日など、5日区切りの日が比較的注目されていますが、ロンドンフィックスは月末が注目されます。
陽和 日本の方が見るべき仲値の日数が多いですね。
山中 もちろん日本でも月末は大事ですが、それ以外にもゴトー日に注目する人が多くなります。それはロンドンフィックスと比べると、東京ではいまだに仲値でもって決済される取引がそれなりにあることが理由だと思います。逆にロンドンフィックスの取引量が東京ほどではないとも言えます。
あと米国債の入札は午前3時という決まった時間に行われ、何か重要な入札があるときは注目されます。
これまで3回にわたりファンダメンタルズ分析の基礎を解説してきました。そもそもファンダメンタルズとは何なのか、需給にはどういうものがあるのか、そして注目すべき時間帯はいつかを理解できたと思います。今後はこれらを詳細に解説していきたいと思います。
陽和 次回は金利をはじめとしたいろいろな知識を勉強していきたいです。山中先生ありがとうございました。
※この記事は、FX攻略.com2019年8月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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