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欧州中銀理事会に向けて[松崎美子]

木曜日の欧州中央銀行(ECB)金融政策理事会とドラギ総裁定例記者会見について、まとめてみたいと思います。

ECB理事会とドラギ総裁記者会見

3月の理事会では、ウクライナ情勢の悪化を受け、ロシアからのエネルギー供給に頼る欧州の景気減速懸念と、相変わらず1%を下回るディス・インフレの影響を受け、ECBのマイナス金利導入予想が高まりました。しかしECBは全てを据え置き決定。

今月の理事会では、3月ほどマイナス金利導入予想は高まっておりませんが、今週月曜日に発表された3月分消費者物価指数(HICP)速報値が、予想の+0.6%を下回り+0.5%という4年ぶりの低レベルまで落ちてしまったことがきっかけとなり、「今度こそは、マイナス金利導入か?」という議論が出始めています。

とりあえず、現在のユーロを取り巻く環境を調べるため、いくつかのチャートを自分で作成してみました。左側に並べた5つのチャートは、《マイナス金利も含めた追加緩和策導入》をサポートする内容のもの、右側の3つのチャートは、《今月も据え置き》と思わせるものです。

追加緩和導入か?

消費者物価指数(HICP)

3月分速報値は+0.5%となり、これはリーマン・ショック翌年のリセッションで苦しんだ時期と同じレベル。ドラギ総裁ご自身が《インフレ率1%以下は危険水域》と言及されておりますが、すでに6カ月連続、1%以下での推移となっています。

ただし、昨年3月はイースター休暇の需要増(ホテルやレジャー関連)があったが、その部分が今回の数字で剥げ落ちたため、今年の数字が低くなって当然という見方もあるようです。しかし、逆に考えれば、今年は実質労働日数が2日分多いため、その部分をどうとらえるのか?エコノミストの意見が聞きたいなと思います。

失業率

12%台で頭を打ち、下がってくるのか?それとも、今後もダラダラと12%界隈で推移するのか、見極めが難しいところ。

ユーロ実効レート

トリシェ前総裁によるユーロ高けん制口先介入レベル:106〜109には届いていないものの、3月に入ってからずっと104〜105台での推移となっており、2年半来の高値圏での移動。

短期金利

月末・期末・年度末要因かもしれませんが、3月末にかけて、金利がジワッと上がっています。

過剰流動性

ドラギ総裁は昨年2月、「金融政策が景気を確実に支援できる水準は、ユーロ圏の金融システム内の過剰流動性が、最低でも2,000億ユーロ以上である必要がある」と述べており、緩和的金融政策の下限として、この水準に言及しました。現在の過剰流動性額は、1030億ユーロとなっており、最低水準の半分まで落ち込んでいます。

今月も据え置きか?

マネーサプライ(M3)

今年1月の+1.2%から、2月は+1.3%へ改善したものの、民間向け貸し出しは依然−2.2%と厳しい状況に変化なし。信用伸び率は悪化。ちなみに、ECBはM3伸び率の参考レートを4.5%に設定しています。

GDP

持続可能な回復はまだ保証されていないものの、昨年第2四半期にリセッションから脱却して以来、改善が見えてきました。昨年第4四半期は、3年ぶりにユーロ圏6大国全てがプラス成長を記録しています。

購買担当者景気指数(PMI)

景気の先行き指標として有名なPMIですが、この数字は50が景況の改善・悪化の節目となっており、ここずっと50以上での推移となっています。

欧州中銀(ECB)ホームページ/マークイット社(Markit)ホームページ

まとめ

先週はタカ派で知られるドイツ連銀・バイトマン総裁をはじめとするECB理事達によるユーロ高によるインフレ率への影響や、デフレ懸念について発言が続き、市場はかなり驚かされました。

過去数カ月に渡り、追加緩和策導入期待が高まっているにもかかわらず、毎月ドラギ総裁に梯子を外されているため、マーケットはマイナス金利導入に対して、意外と準備が出来ていないと私は感じています。もし意外にも、マイナス金利、または流動性供給目的で追加緩和策導入に踏み切った場合、最初のリアクションはユーロ急落でしょう。しかし、問題はその後ですね。

1)果たして、今回の追加緩和で、緩和導入打ち切りとなるのか?
2)将来、更なる追加緩和の可能性が残っているのか?

の見極めが出来ない点ではないでしょうか? 逆に、先月同様、今月も据え置き決定となった場合は、会合前にある程度、ユーロをショートにする人達がいるでしょうから、その損切りを巻き込んで、ユーロ急騰という局面が考えられます。自分としては、マイナス金利導入であれば、100〜150ポイントの下落。据え置き決定であれば、1.3970の高値を目指して動くと予想しています。

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