銀主導で貴金属全面高 金は史上最高値更新[佐藤りゅうじ]

銀は11年ぶりの安値からの反騰

 前号で金(ゴールド)が上値追いの展開となっていると述べましたが、買いの触手はゴールドだけではなく銀(シルバー)、そしてプラチナ、パラジウムへも伸び、貴金属市場は全面高となっています。ゴールドは過去最高を更新しました。そして、その引き金はシルバーの急騰でした。

 今回は、貴金属の中でも暴騰し、5年ぶりの高値をつけたシルバーを中心に、貴金属市場を見ていきたいと思います。

 7月27日、ゴールドは1940ドルまで上昇し、2011年9月につけた高値1920ドルを上抜き過去最高を更新しました。7月21日時点では、ゴールドは1820ドル付近で上値を押さえられていましたので、わずか5営業日で120ドル超の上昇です。この急騰のきっかけを作ったのが、シルバーの急伸でした。

 今年に入ってからのシルバーの値動きを見ると、年初から2月くらいまでは17~18ドル前後の狭いレンジ取引となっていました。3月に入ると、新型コロナウイルスの影響から金融市場が全面安となると、シルバーも3月18日には11.62ドルと2009年1月以来、11年ぶりの安値をつけました。

有史以来の金銀比価

 

 特筆すべきは、このとき金銀比価が1対125まで拡大したことです(チャート①上部参照)。金銀比価とは、ゴールドの価格をシルバーの価格で割って算出します。金銀比価が拡大する要因として、工業需要の多いシルバーが景気減速から下落するケースや、地政学リスクの高まりや投資人気からゴールドが上昇するケースが挙げられます。

 1995年以降は、拡大しても80を超えると修正が入っていました。ここ数年は中央銀行の金準備率の引き上げ、投資人気からゴールドが上昇し、金銀比価は90前後まで上昇していましたが、それでも100を超えることはありませんでした。しかし、3月に125まで拡大、このときNASDAQは「金銀比価が過去5000年の中でも最高の数字に達した」と報じています。

 この歴史的な金銀比価の拡大(シルバーの割安)に目をつけたのが、欧米の投資家でした。彼らはシルバーへの投資を積極的に実施し、上場投資信託(ETF)残高は3月の約1万9000トンからわずか4か月で約2万5000トンまで増加。価格は上記した11ドル台への下落後、15ドル前後、18ドル前後のもみ合いを経て、7月21日には過去5年間にわたり上値を押さえていた20ドルを上抜くと、ストップロスの買いと新規買いが交錯する中、21ドル台まで上伸しました。翌22日には23ドル台に突入すると、27日には24.39ドルまで上値を伸ばしました(チャート①下部参照)。金銀比価も80前後まで低下しています。

金銀比価の推移、シルバー価格の推移

金融相場

 このシルバーの急騰ですが、需給面での変化は出ていません。ソーラーパネル需要は拡大していますが、今回のような暴騰を招くような材料ではないです。ジャブジャブの金融政策の中、前述したように欧米の投資家が金銀比価にマーケットのゆがみを見つけ資金が流入し、チャートポイントを突破したことで、買いが急加速しただけです。金融相場のなせる業といっていいでしょう。

貴金属全面高

 しかし、このシルバーの暴騰がゴールドだけでなく、プラチナ、パラジウムといった白金系貴金属にも波及しました。プラチナは今年5月中旬以降、上値を押さえていた865ドル付近を上抜き、930ドル台まで上昇、1000ドルが射程に入ってきました。

 パラジウムは、7月21日に2047ドルから一時140ドル前後の上昇を見せると、その後も買いが先行し、27日には2310ドル台まで水準を引き上げています。コロナ禍以前の水準である、2500ドルが視野に入っています。

銀が30ドルを目指すなら

 急騰したシルバーですが、金銀比価は既に80前後まで低下しており、ゴールドに対する割安感はありません。それでもシルバーが買われているのは、金融相場であることと、シルバーは歴史的にボラティリティが高く、その値動きの軽さからオーバーシュートすることが多いためでしょう。過去にもハント兄弟によるシルバー相場つり上げ事件や、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が世界の年間供給量の5分の1を買い占めたと表明し、暴騰したことがありました。投機マネーが入りやすい商品といってもいいでしょう。

 テクニカル的には、2013年8月に上値を押さえられた25ドル付近が大きなポイントになり、これを超えてくれば値動きの軽さから30ドルを目指す可能性も十分にあるとみます。シルバーが30ドルなら、仮にそのときの金銀比価が1対80だとすれば、ゴールドは2400ドル、金銀比価が1対70なら2100ドルになります。過去最高を更新した今、これらの価格を現実味がないといい切るのは難しそうです。

※この記事は、FX攻略.com2020年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

佐藤りゅうじの写真

佐藤りゅうじ(さとう・りゅうじ)

1968年生まれ。1993年米大卒業後、マーケティング会社を経て、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(後の株式会社オーバルネクスト)入社。マクロ経済分析をはじめ、為替、商品、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年より「エイチスクエア株式会社」を起業、アナリストレポート等を執筆、「FOREX NOTE 為替手帳」等の企画・出版を行う傍ら、投資関係のラジオ番組キャスターを務める。個人トレーダー。国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト。ラジオ日経「ザ・マネー オノサトの相場予測」(月曜15:00〜)メインキャスター。

公式サイト:佐藤りゅうじブログ

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