楽天MT4新規口座開設
FX力を鍛える有名人コラム

イエレンFRB議長、ドラギ総裁の変心~FRBの資産圧縮開始が視野~[安田佐和子]

※この記事は、FX攻略.com2017年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

市場に意識させていたテーパリングを先送り

「ドラギよ、お前もか」といいたくなったのは筆者だけではないでしょう。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、7月20日開催の記者会見で量的緩和縮小(テーパリング)観測の先送りを示唆しました。

記者会見で「資産買入プログラムの変更にはまだ至っていない」「全会一致でフォワードガイダンスを変更しない、将来的な偏向を協議する特定の日程を設定しないと決定した」「秋に議論を実施し、そのころまでに入手可能なさまざまな情報を得る必要があり、具体的な予定を示したくなかった」などと発言。6月27日にポルトガルのシントラで上げた量的緩和縮小の狼煙を、見事に空の彼方へ消し去ってしまいました。念頭にインフレ伸び悩みや長期金利上昇の他、ユーロ高の文字が浮かんでいたに違いありません。 

高い資産価格を懸念しより慎重な姿勢を示す

ドラギ総裁の一手は、大西洋を越えた米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長と一致していました。時計を巻き戻して6月27日、イエレンFRB議長はロンドンで資産価格をめぐり、「高いように映る」と明言し話題になったものです。

時を同じくして、フィッシャーFRB副議長も「高い資産価格は将来、金融不安定をもたらす恐れがある」、サンフランシスコ連銀総裁も「米株市場の過熱は明白で経済へのリスクであり、調整が起こり得る」と米株高に牽制球を放ちました。前日の6月26日には、NY連銀のダドリー総裁が低金利や米株高、信用スプレッドの縮小を指し利上げの必要性を唱え、米連邦公開市場委員会(FOMC)で指導的立場にある面々がそろってバブルの芽を摘む姿勢を鮮明にしたのです。おかげで、6月27日にはテクノロジー株を中心に下落し、人気銘柄の一角が弱気相場入りするほどでした。

ところが、7月12日に行われた半期に一度の議会証言で、イエレンFRB議長は資産価格について一切言及せず。米国とユーロ圏の中銀トップは共に、6月27日から変心したかのように当時の見解を繰り返しませんでした。

両氏が同タイミングで心変わりした理由は?

なぜ両者は、6月27日の発言から距離を置いたのでしょうか? 恐らく、米欧当局者は市場に緩和的な効果を与える共通の利点を見いだしたのではないでしょうか。利点とは、9月19~20日開催のFOMCで保有資産の圧縮を決定することです。そうすれば、米国にとって政策のツールが増えます。

すなわち、①景気が加速した場合は利上げとの合わせ技で活用でき、世界経済の安定につながる②景気が逆に悪化した場合は、米連邦準備制度(Fed)が利上げだけでなく資産圧縮も停止できる③景気が現状のような生温かい状況であれば、利上げを先送りしつつ着実に保有資産を縮小する−といった選択肢が可能になります。

もう一つのポイントは、ECBの資産買入の縮小が予想されている2018年半ばにおいて誰がFRB議長なのか不明であるということ。トランプ米大統領がFRB議長を指名するだけに、イエレン議長が在任中に資産圧縮の既成事実を作っておかなければ、上記三つの選択肢の確保が困難となり得ます。そう考えれば、前回のECBで利下げバイアスを排除するなど政策正常化に向けた地ならしを行いながら、資産買入縮小などの政策変更を10月26日開催の定例理事会に持ち越すのも、自然な成り行きです。

そもそもECBの次回会合は9月7日に予定されており、9月FOMCの前にあたります。資産買入縮小に積極的なドイツやオランダが文句をいわずに全会一致でフォワードガイダンスを維持したのも、こういったシナリオなら合点がいきます。

奇しくも、FRB議長候補として取り沙汰されるジョン・テイラー元米財務次官、グレン・ハバード元大統領経済諮問委員会(CEA)委員長、ケビン・ウォーシュ元FRB理事が3%成長は可能と連名のレポートで主張しただけに、どのような政策運営になるのか皆目見当尽きません。レポート内容から察せられるトランプ政権との距離の近さも、懸念材料です。かつてニクソン大統領下でFRB議長となったアーサー・バーンズ氏のように、政治的配慮を行う金融政策を採用しかねないためです。

バーンズ氏が議長に就任した1970年に消費者物価指数は前年比で約6%だったものの、1974年後半には12%超まで上昇していました。バーンズ型では金融政策の正常化が遅れ、バブルを助長しかねません。

FRB議長の後任が不透明な中では、イエレン体制でバランスシートの圧縮を着手させ、選択肢を確保した方が米欧当局者にとって無難といえます。問題は、市場が緩和的であり続け、FOMCにバランスシート縮小を決定させられるかどうかです。

FF金利誘導目標、ドル指数の推移

出所:FRBとブルームバーグより三井物産戦略研究所作成

※この記事は、FX攻略.com2017年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

ABOUT ME
FX攻略.com編集部
日本で唯一の月刊FX情報誌『月刊FX攻略.com』を2008年から10年以上発行してきた編集部です。
トレイダーズ証券 みんなのFX
あなたに最適なFX会社・取引口座を見つけよう!!
【FX会社比較】10年以上FX専門誌を発行してきたFX攻略.com編集部が調査しました

「これからFXを始めよう」と思ったとき、意外と悩んでしまうのがFX会社、取引口座選びではないでしょうか? でも大丈夫。ご安心ください。先輩トレーダー達も最初は初心者。みんなが同じ悩みを通ってきているんです。

10年以上にわたってFX月刊誌を出版してきた老舗FXメディア「FX攻略.com」編集部が、FX用語を知らない人でもわかるようにFX会社、取引口座のポイントを解説しました!

取り上げているFX会社は、金融商品取引業の登録をしている国内FX業者です。口座開設は基本的に無料ですので、まずは気になったところで2〜3つ口座開設してみて、実際に比べてみてはいかがでしょうか

\FX会社によって違うところをチェック/

スプレッドFX取引における取引コスト。狭いほうが望ましい。
約定力狙った価格で注文が通りやすいかどうか。
スワップポイント高水準かどうか。高金利通貨の取り扱いの数。
取引単位少額取引ができるかどうか。運用資金が少ないなら要チェック。
取引ツール提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。
シストレ・自動売買裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。
サポート体制サポート内容や対応可能時間の違いをチェック。
教育コンテンツ配信されるマーケット情報や投資家向けコンテンツの有無。
キャンペーン新規口座開設時や口座利用者向け各種キャンペーンの内容。

FX会社を比較・検討
したい方はこちら >>
FX会社を一社ごとに
見たい方はこちら >>

あわせて読みたい