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米中摩擦再燃による株安・円高は行き過ぎか[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2019年8月5日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、FOMCが大方の予想通り25bpの利下げ(FF金利の誘導目標レンジ2.00-2.25%)を決定したことから、材料出尽くしのドル買いが入り、一時109.32円と約2か月ぶりの高値へ上昇。しかしトランプ大統領が突如、9月1日から一部の中国製品に10%の関税を課すと発表すると、一気にドル売り・円買いの流れが加速し、106.51円と逆に年初のフラッシュクラッシュ以来の安値を更新した。なお米国7月の雇用統計は、失業率3.7%、非農業部門雇用者数+16.4万人、平均時給+3.2%(前年比)とほぼ予想通りの結果となり、相場への影響は限定的だった。

市場は9月の追加利下げを確実視

FOMCが予想通り25bpの利下げを実施し、材料出尽くしでドルが上昇したところまでは、筆者の予想通りだったが、米中の貿易摩擦が再燃し、株安・円高となったのは想定外だった。米国株式市場では、ダウ平均が1週間で700ドルあまり下落し、米国10年債利回りは2.0%台から1.8%台へ急低下した。FF金利先物市場はすでに9月の利下げを100%織り込み、年内あと2回(1.50-1.75%)以上の利下げも7割以上織り込んでいる。もはや市場先導型の利下げ催促相場に入ったと言ってよい。

市場の金利観が下方シフト

パウエル議長は、今回の利下げは「景気の下方リスクに対する保険が狙い」であって、「緩和サイクルの開始を必ずしも意味しない」と述べる一方で、「一度きりの利下げだとは言っていない」とも言明している。6月時点でのFOMCメンバー予想(ドットプロットチャート)では、利下げ余地はあと一回(1.75-2.00%)だったが、政治的圧力や市場からの催促により、次回9月にはドットが大きく下方シフトする可能性が高い。市場の金利観が変化している最中はドルも当然その影響を受ける。当面はドルが弱含みの展開と予想するのがセオリーであろう。

過度の弱気は不要

ただし、足元の米国景気は堅調であり、現在の市場のセンチメントが悲観的過ぎる可能性も排除はできない。トランプ大統領の放った対中関税第4弾も、交渉の膠着を打開するためのブラフとの見方があり、実際9月1日に発動するかどうかは不透明だ。今回の輸入品目にスマホやパソコン・ゲーム機など代替調達が難しい必需品が含まれるため、米国内でも反対は強いという。米中摩擦という長期的・構造的な材料に対して短期的に反応しても、やがては揺り戻しが入り元に戻るというのがこれまでの経験則だ。

米国株式市場はこれまでも数々の米中貿易摩擦を消化しながら過去最高値を更新してきた。今回も適度なガス抜き調整の範囲内で終わる可能性も小さくない。ドル円に対する強気スタンスはいったん撤回すべきだろうが、かといってここから過度の弱気になるべきではない。今週は中立スタンスで、株式市場の底打ちのタイミングを見極めたい。

出所:日本経済新聞

米中関税の応酬とNYダウ 出所:NetDania

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