米国株高はバブルではない ドル円に上昇余地[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2019年11月18日号

先週のドル円相場

週前半は、香港のデモ激化に対する警戒感や米中貿易協議をめぐる不透明感を背景にいったん利益を確定する動きが広がり、ドル円は109円台割れ。米国債利回りが1.80%台まで低下すると、一時108.24円まで下落した。ただ週末にかけては、NEC(米国大統領国家経済会議)のクドロー委員長が「第一弾合意の取りまとめが近い」と発言したことから再び交渉進展への期待が広がり、108.86円まで回復した。

米中問題はゆっくりと前進

米中貿易協議は相変わらず期待と不安が相半ばする状態で、ドル円相場も協議の進捗に一喜一憂する展開が続いている。先週の当コラムでも述べたが、米中対立の本質は単なる貿易摩擦にとどまらず、今後数十年にわたる覇権を賭けた現代の冷戦である。簡単に合意して一件落着となるものではなく、まだまだ何年も続いていく公算が大きい。今後も報道や憶測に振り回される局面が続くだろう。

ただ米中双方はすでに戦略を「制裁・報復」から「対話」に切り替えており、部分合意を積み重ねることにより妥協点に向けてゆっくりと進展していく公算が大きい。したがって、大局観としては「不確実性や不透明感の後退」「悲観から楽観へ」という過程にあるととらえるべきである。

米国株式市場がドル円の方向性を規定

一方、米国株式市場は米中協議難航や香港・中南米の政治リスク拡大をよそに史上最高値更新が続いており、ダウ平均は先週ついに2万8千ドルの大台を突破した。株式市場が上昇すれば安全資産の債券から株への資金シフトが起こり、米国債利回りは上昇する。株高は「リスクオンによる円安」と「金利差拡大によるドル高」という二つの経路を通じて、ドル円を押し上げる原動力となる。米国株式市場がドル円の方向性を規定していると言っても過言ではない。ダウ平均とドル円のチャートを重ねてみると、数か月単位ではほぼ完全な相関性が観察され、短期的にはドル円が出遅れている(上昇余地がある)ようにも見える。

ドル円とダウ平均(赤線・左目盛) 出所:NetDania

米国株高はバブルか?

ダウ平均はリーマンショック後の安値6470ドルから見て4倍以上になった。この10年以上にわたる株高をバブルではないかと危惧する向きも少なくない。グリーンスパン元FRB議長は「バブルは崩壊して始めてバブルと分かる」との名言を残している。

しかしながら筆者は、米国景気が深刻なリセッションに陥るリスクが小さいことや、インフレリスクが小さく低金利を維持できることから、現在の株高はバブルではなく持続可能と考えている。バブルの定義は、資産価格が実体経済や理論価格から大幅にかけ離れて上昇する現象だが、現在は過去と比べてインフレや金利水準が著しく低いため、ファンダメンタルズから説明できる理論価格も上昇しなくてはおかしい。

結論:押し目買い継続

米国株式市場がバブルではなく新たな上昇局面に入ったのだとすれば、ドル円に対してももっと強気になってもいい。110-112円を目指す上昇トレンドは継続していると見ており、押し目買いスタンスを継続したい。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

Twitter:https://twitter.com/geh02066

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