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FX力を鍛える有名人コラム

これからの外国為替場の行方 第125回(月刊FX攻略.com2020年9月号)[田嶋智太郎]

これからの外国為替場の行方 第125回(FX攻略.com2020年9月号)[田嶋智太郎]

5月下旬以降の豪ドル円はテクニカルの教科書的値動き

 前回更新分の本欄で特に注目した豪ドル円が、その後に一旦大きく上値を伸ばす動きを見せた。3月19日に一時60円割れの水準を試した豪ドル円だが、執筆時点での直近高値までは最大で17円もの戻りを見ている。

 そんな豪ドル円の大幅な切り返しのなかで今後の参考にしておきたいと思うのは、まず5月下旬に、それまで重要な節目として意識されていた70円処をクリアに上抜け、同時に一目均衡表の日足の遅行線が日足「雲」を上抜けたところからグンと大きく上値を伸ばしたことである。

 また、ほぼ同じタイミングで21日移動平均線(21日線)と89日移動平均線(89日線)のゴールデンクロスが示現し、そこから上げの勢いが増したことも、まさに「テクニカルの教科書通り」の値動きであったと言える(チャート①参照)。

豪ドル円(日足チャート)2019年12月~

 その結果、6月第1週の豪ドル円の週足ローソクは、下から31週移動平均線(31週線)、62週移動平均線(62週線)を次々に上抜け、結局は週足「雲」をも一気に上抜けて長い陽線を描く格好となった。この点については、当時一つに「少々オーバースピード気味ではないか」と率直に感じたことを記憶している。

 なにしろ、豪ドル円の週足ローソクは2018年3月以降、ずっと週足「雲」下限の水準に上値を押さえられ続けてきた(チャート②参照)。それにも拘らず、今年5月下旬以降の上昇過程では、週足「雲」上限をもすんなりと上抜ける展開となったのだ。このことは確かに強気転換の一つのシグナルと考えることもできただろうが、同時に一時的なオーバーシュートであった可能性を疑ってみる場面でもあった。

豪ドル円(週足チャート)2017年09月~

 また、このときの上昇で到達した6月8日高値が、昨年12月高値=76.54円を上回る水準となったことにやや強めの違和感を抱いたことも思い起こされる。それは「なおも新型コロナウイルスの禍が世界中を脅かし続けている最中にあって、コロナの問題が取り沙汰されるようになる前の水準をいとも容易く取り戻すような動きというのは、果たして妥当と言えるのか」という思いからであった。

 そして、結局のところ当時抱いた違和感や、若干オーバースピード気味でオーバーシュート気味ではないかという「感覚」は当たりだった。実際、6月第2週以降の値動きは第1週の上げの大半を帳消しにするような格好となったのである。むろん、単なる「感覚」だけの判断が危険極まりないことは言うまでもない。だが、そこにテクニカル分析の要素が絡むと、一定の説得力を持ってくることも事実である。

 それは、前述したように週足ローソクが週足「雲」上限の水準で結果的に上値を押さえられる格好となったことに加えて、週足の遅行線が26週前の週足ローソクが位置するところを上抜けかけたところで、遅行線自体が週足「雲」下限や62週線に上値を押さえられる格好となったことなどを指す。

豪ドル円と日経平均株価、ドル円の相関に要注目

 5月下旬あたりから豪ドル円が一旦上げ足を速めることとなったのは、やはり世界の多くの国々・地域において、経済活動が段階的に再開され始めたことが最大の要因であったと思われる。

 言うに及ばず、豪ドルは世界全体の景気動向に非常に敏感な通貨であるとされる。経済再開に伴う景気回復期待が強まると、同時に需要の増加が期待される原油の価格が強含みとなったことも資源国通貨としての豪ドルにとっては追い風となった。

 ところが、6月第2週の後半あたりから、今度はウイルス感染第2波への警戒が全体に強まり始め、当然のごとく豪ドルの値動きも勢いを失うこととなった。それは、同時に米・日株価が調整含みの展開となり始めたことも一因ではある。思えば、一頃までの米主要3指数や日経平均株価の上昇は少々オーバースピード気味で、目先の高値警戒感も強まっていた。

 既知のとおり、日経平均株価は6月9日に一旦、終値ベースで2万3000円台を回復し、1月高値から3月安値までの下げに対して実に88%という大幅な戻りを演じた。もちろん、その原動力の大部分は確証のない「期待」であり、仮にウイルス感染拡大の「第2波」が襲来すれば、その期待も露と消える可能性がある。

 ここで一つ押さえておきたいのは、所謂「コロナ以前」から執筆時に至るまでの日経平均株価の値動きと豪ドル円の値動きに、実に見事な正の相関が見られるということである。其々が互いに「ニワトリとタマゴ」のような関係で、ともに執筆時点においては日足の基準線に下値を支えられる格好となっている。

 つまり、今後どちらかが基準線をクリアに下抜けるような値動きを示すと、もう一方も弱気トレンドを描き始める可能性が高いということである。さらに、双方の値動きがドル円の値動きに大きく影響するという点も再確認しておきたい。

トランプ再選の確率低下? 米国経済とドルはどうなる

 現実問題として、執筆時の市場においてはウイルス感染拡大の「第2波」に対する警戒が日増しに強まっている。

 なにしろ、米国のフロリダ州、テキサス州、アリゾナ州における新たな感染者数の増加は衰え知らずの酷い有様となっているのである。ちなみに、この3州の州知事はいずれも共和党員。そのことと、当該州で感染者が目立って増加していることとは決して無縁ではないと思われる。何といっても、党のリーダーであるトランプ大統領自身がマスクの着用を拒否し続けるなど、とかくウイルス対策に逆行しているのだ。

 このまま再度の都市封鎖や行動規制を行なわずに事態を放置すれば、今後も新たな感染者数は日増しに増え続ける公算が大である。そうなれば、一頃まで経済再開への期待感を優先させて一段の上値を追う展開を続けてきた米株市場の行方にも、さすがに暗雲が漂い始め、目下のところ選挙戦で劣勢に立たされている現職大統領の再選への道のりは一層険しくなることだろう。

 そうでなくとも、5月下旬あたりからは米株価が一段の上値を追う一方で、トランプ氏の再選確率は下がり続けるといった現象を目の当たりにすることが多くなっていた。折しも黒人暴行死事件の発生に際し、人種差別反対デモへのトランプ氏の対応が厳しく非難された頃でもある。

 どうやら、今後は米株高が必ずしもトランプ氏再選の支援材料となるわけではなさそうである。むろん、米株価が一段安となった場合には、それもトランプ氏の再選を遠ざける。同氏は新たな経済支援策法案を取りまとめる構えだが、肝心の感染拡大に歯止めをかけなければ、市場の景気回復期待も盛り上がりようがない。

 トランプ大統領が6月20日に南部オクラホマ州で開いた3か月半ぶりの選挙集会はかなりの空席が目立ったと伝わる。その様子は全米に放送され、トランプ氏の凋落ぶりが多くの視聴者の目に強く焼き付けられたことは想像に難くない。ここで当面、注視しておきたいのは、トランプ氏が起死回生を図るべくなりふり構わぬ政策行動に打って出る可能性が高いということである。

 その実、目下のトランプ政権は欧州連合(EU)と英国からの輸入品計31億ドル分に新たな関税を課すことを検討しており、7月26日まで米産業界から意見を募った上で、関税を課す品目や税率を決める方針とされる。欧州のみならず中国に対しても一層の圧力をかける可能性があり、そうなれば、ようやく回復し始めた世界経済の先行きに暗雲が漂う。

 トランプ氏が乗り出した就労ビザの規制強化策にしても、結果的に米国人の雇用確保につながるかは不透明であるうえ、米経済回復の妨げとなる恐れが大いにある点も危惧される。米経済回復の足取りが鈍るとの見通しが優勢になれば、市場で「米連邦準備制度理事会(FRB)がイールドカーブ・コントロール(YCC)の導入に踏み切る」との思惑が強まり、一時的にもドル売り圧力が強まりやすくなる可能性もないではない。

7月中旬以降は状況に変化。ドル円も動きだす?

 とはいえ、今そこにある危惧や警戒が時間の経過とともに解消へと向かう可能性も十分にある。前述したオクラホマ州の選挙集会については「トランプ氏にとって致命的な失敗だった」との評も聞かれる。ゆえに、米大統領選挙当日が近づくにつれ、市場の関心が民主党候補のバイデン前副大統領に一気に傾く可能性もある。

 既知のとおり、バイデン氏は副大統領候補に女性を立てるとしており、目下の市場ではカマラ・ハリス上院議員が最有力。ハリス氏はウォール街との関係も悪くはなく、同氏が候補に決まれば市場の安心感は増すと思われる。なお、バイデン氏は7月中旬に副大統領候補を発表すると見られる。

 もちろん、米政権が検討する対EU関税の強化についても、最終的に発動が見送られる、あるいは制限される可能性も十分に残されている。米中対立の過去の経緯からも分かるように、貿易交渉は「圧力」と「譲歩」がセットだ。

 また、7月に入ると世界的な新型コロナウイルスワクチンの開発段階が一歩前進する可能性も大いにある。特に注目度が高い米モデルナ社のワクチンについては最終治験が7月から始まると伝わっている。また、日本国内でもアンジェスが大阪大学と共同開発するワクチンの治験が7月から開始される見通しである。

 そうして、今ある様々な危惧や警戒が段階的にも解消に向かえば、あらためて市場にリスク選好ムードが拡がり、なおも膨張を続ける世界の過剰流動性が株価を一段と高い水準に持ち上げる可能性も高まる。結果、日経平均株価が一段の上値を追うこととなれば、正の相関が強い豪ドル円の上値余地も拡がりやすくなろう。また、米政権による対EUならびに対中姿勢が多少なりとも緩めば、ユーロ円にも上値余地が生じやすくなり、クロス円全般の上昇につれてドル円が目下の膠着状態から脱する可能性も高まる。

 ドル円が本格的に動き出すとすれば、それは7月の中旬以降であると思われる。仮に強気の展開となれば、まずは200日移動平均線を試す動きとなろう。

※この記事は、FX攻略.com2020年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

ABOUT ME
田嶋智太郎
たじま・ともたろう。経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。 慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
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