不透明感高まるギリシャ情勢[松崎美子]

緊張高まるギリシャのデフォルト不安

今月に入ってから、一気に高まってきたのが、ギリシャのデフォルト不安。事の発端は、今年2月末に期限を迎えたギリシャ金融支援について、ギリシャ政府と欧州委員会(EU)/国際通貨基金(IMF) の間で6月末まで4カ月延長したときに始まりました。ギリシャは金融支援金の最終残高である72億ユーロを受け取る条件として、民営化や労働市場や年金制度を含む構造改革の遂行を約束し、それに向けた具体的な改革案を提出し、EU側との交渉にあたっています。

しかし、「反緊縮財政策」を有権者に約束したギリシャ与党:SYRIZA党内部では、選挙公約破りを認めない強硬派の根強い反対もあり、EUとの合意になかなか至らないまま、無駄な月日が流れています。

それでも3月までは、IMFや短期債の償還を問題なく切り抜けてきましたが、ここにきて、財政資金枯渇という噂が流れはじめたのをきっかけにして、ギリシャの債務不履行(デフォルト)懸念や、Grexit(ギリシャのユーロ圏離脱)リスクが台頭してきたのです。

1月末の総選挙で、ユーロ加盟国でははじめての左翼色の強い政党が政権を取った時点で、Grexitリスクがマーケットに少しづつ織り込まれてきたこともあり、直近の相場では、この問題でユーロ売りにはなっておりませんが、いざ本当にGrexitが起きた場合、他の加盟国へ飛び火しない保証はどこにもなく、不透明感は増すばかりだと、私自身は考えています。

ここから8月末までのギリシャを取り巻くイベント

米ウォールストリートジャーナル紙を参考にして、8月末までの償還スケジュールと、欧州でのイベントを調べてみました。それによると、万が一、今月どうにかしてデフォルトを避けられても、5月以降かなり厳しい状況であるため、ギリシャ政府が一丸となり、EU側との合意に至る努力をしない限り、Grexitなり、デフォルトなりは、時間の問題といえるのかもしれません。

いつギリシャの財源は枯渇するのか?

これは、誰にもわかりません。たぶん、ギリシャ政府ですら、正確なタイミングを把握していない可能性もあります。会計局の話しでは、5月中旬までは大丈夫ということになっていますが、それ以外の閣僚などは、せいぜいもって4月中旬という現実的な発言が続いています。これは確認できませんが、噂によると、ギリシャ政府は公務員給与や年金支払いを、ユーロとドラクマ両建てにする準備をすすめているという話しが聞こえてきています。

本当にIMFへの償還はされるのか?

ギリシャの副財務相は先週、4月9日に予定されているIMFへの償還は、きちんと支払うと発言していますが、政府内部では、この償還と公務員給与や年金支払い両方を払う訳にはいかないので、どちらを優先するか頭を抱えているという話しにもなっているようです。

ただし、IMFへの償還には、【1カ月のグレースピリオド(猶予期間)】がありますので、9日に払えなくても、5月第一週までは大丈夫です。そうはいっても、支払いが無理というヘッドラインが出れば、ユーロは一度大きく売られることになると、私は思っています。

来週以降のギリシャ財政事情

今週のIMFへの償還が無事行われたとしても、来週早々に、新たな問題が待っています。4月14日に14億ユーロの短期債が満期を迎えますが、そのうち50%近くがギリシャ以外の投資家 (非居住者)によって保有されているといわれており、その人たちは、これを借り換えしないと予想されています。

債券というのは、償還日(満期日)がくると、その前後に同じような新規の債券入札を実施します。つまり、満期でお金が手元に戻ってきた投資家は、新規の国債へあらためて投資するので、常にお金がその国の政府に渡るような仕組みになっているのです。しかし、14日の短期債の場合は、満期でお金が戻ってきた非居住者の投資家たちは、そのお金で新規のギリシャ短期債の購入はしないだろうと考えられており、ギリシャ財政は、あらたな困難に立ち向かわなければなりません。

単純に計算しても、14億の半分である7億ユーロという穴を、どうやって埋めるのか?これは誰にも答えがわかりません。

ここからの「ユーロ/米ドル」

ギリシャ情勢が刻一刻と変化しているため、短期の「ユーロ/米ドル」の予想が非常に立てにくくなっています。それに加え、先週金曜日に発表された米国の非農業部門雇用者数が、予想の半分くらいの12万6000人となり、マーケットが大きく荒れました。

ユーロドル日足チャート

「ユーロ/米ドル」を見ると、ここ1年間ほどは、50日線で頭を押さえられてきました。今週は1.1080台に50日線がきます。今週水曜日に発表される3月17/18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で、ドル高懸念が目につくようだと、一段のドル安がすすみ、「ユーロ/米ドル」も50日線目指して上昇する可能性は捨てきれません。

Grexit、そして、デフォルトがどのくらい現実味を帯びるのか? それを睨みながら、自分的には1.1080~1.1150台はいったん売りで入ろうと考えています。

松崎美子の写真

松崎美子(まつざき・よしこ)

スイス銀行東京支店でトレーダー人生をスタート。1988年渡英、1989年よりバークレイズ銀行ロンドン本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年に同じくロンドン・シティにある米メリルリンチ投資銀行に転職。その後2000年に退職。現在はFX取引に加え、日本の個人投資家向けにブログやセミナー、YouTubeを通じて欧州直送の情報を発信。著書に『松崎美子のロンドンFX』『ずっと稼げるロンドンFX』(共に自由国民社)。2018年より「ファンダメンタルズ・カレッジ」を運営。DMMで「FXの流儀」のオンラインサロンも始めた。

公式サイト:ロンドンFX

Twitter:https://twitter.com/LondonFX_N20

スクール:ファンダメンタルズ・カレッジ

オンラインサロン:FXの流儀 ~ファンダ・テクニカルを語ろう~

YouTube:FXの流儀

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