電子ブローキングシステムのEBSが銀行のディーリングルームに導入されるまで、銀行と仲介役のブローカーさんを結ぶのは、マイクとスピーカーでした。
このスピーカーで値動きを聞いて、マイクを通して取引をするというのは、一時世界的なディーリングスタイルでした。
実は、このスタイルを提案したのは、著名日本人ディーラーの「こんなものがあればいいなあ」という一言からでした。
そして、それで取引が増えるならばと、ブローカーさんが動き実現しました。
その結果、銀行のディーリングデスクにはブローカーさん各社のスピーカーが並び、ブローカーさんの側には、銀行のスピーカーが並んで、各ディーラーとブローカーさんは、マイクを通して相手に意思を伝えました。
このマイクとスピーカーと現在の電子取引の大きな違いは、喧噪と静寂です。
マイクとスピーカーでの取引は、なにしろにぎやかでした。
そして、相場が熱くなると、ディーラーもブローカーさんも熱くなり、ディーリングルーム全体が騒然とした雰囲気に包まれました。
確かに、うるさいことは、うるさいですが、マーケットの熱気が生き生きと伝わってきて、私は好きでした。
また、自分自身も高揚し、ある意味、ディーリングがやりやすい環境だったと思います。
その後、EBSが導入されると、ディーリングルームは一変して静かになりました。
今まで耳で聞いていた値動きは、スクリーン上に表示される無機質な数字になり、まったくさま変わりした感がありました。
今のディーラーにとっては、マイクとスピーカーは、うるさいだけかもしれませんが、あの興奮のるつぼに身を沈めてみたいと思うのは、私が前時代の人間だからでしょうか。
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