FXを行う際に、相場を分析するアプローチは大きく分けて2つあります。
①ファンダメンタルズ分析
②テクニカル分析
今回はチャートを見て相場を分析する「②テクニカル分析」について考察します。
株のブレイクアウト
巷には、テクニカル分析の有効性を説いた本がたくさん出回っています。ここで、株のブレイクアウトのケースを考えてみましょう。
たとえば、A社の株が、100~120円のレンジで推移していたとします。ここで、120円を明確にブレイクして、150円まで上昇しました。これは、A社の株に対して、売り圧力よりも買い圧力のほうが強いことを示唆しています。
株の場合は、扱う対象がひとつなので、このようなレンジブレイクアウト戦略が明確に機能しやすいでしょう。さらに、レンジブレイクした際に、出来高も伴って急増すれば、そのレンジのブレイクアウトは本物です。
各通貨の買いと売り、圧力を把握
では、FXの場合はどうでしょうか?ここでは、みなさんに一番なじみ深いであろう「米ドル/円」で考えてみましょう。
当たり前ですが、「米ドル/円」のレートは「ドルと円の交換の比率」です。マーケットでは、さまざまな通貨ペアが扱われています。ドル絡みでいうと、「ユーロ/米ドル」や「ポンド/米ドル」などもありますね。
ここで、円の取引がまったく行われていなかったとしましょう。対ユーロや対ポンドにおいて、ドルが買われていたら、「米ドル/円」のレートも必然的に上がります。その逆もまた然りです。
対ユーロや対ポンドで、円が買われていたら、「米ドル/円」のレートは、下がりますね。実際のマーケットでは、さまざまな通貨ペアの取引が行われていて、市場参加者はいろいろな通貨ペアを取引しています。
「米ドル/円」のレンジブレイクが起こったとしましょう。この場合、以下の2つの可能性が考えられます。
- ドルが買われてレンジブレイクが起こった。
- 円が売られてレンジブレイクが起こった。
もちろん、①と②が混在するケースもあります。ドルの買い圧力と円の買い圧力が同程度であれば、レンジブレイクが起こっても、トレンドは生じにくいのです。
だから、テクニカル分析を行うときには、各通貨の買いと売り圧力を把握すると、よりレンジブレイクの精度を高めることができるのです。
テクニカル分析を盲信するな
FXにおいては、出来高も不明瞭ですから、ただ単にテクニカル分析だけを盲信していては、痛い目に遭うでしょう。FXという商品の特性上、右記のような理由から、テクニカル分析は株以上にノイズが大きいと判断せざるを得ません。
テクニカル分析の利点は大いに利用する
ここまでテクニカル分析を散々否定してきましたが、僕がいいたいのは、「テクニカル分析はひとつの参考指標に過ぎず、それを盲信してはいけないよ」ということです。
FXにおけるテクニカル分析は、万能ではないですし、決して科学ではないのです。もちろん、そのときどきでマーケットの主役となる通貨や、流通量の多い通貨(「ユーロ/米ドル」「米ドル/円」「ポンド/米ドル」)などは、注目されやすいため、他のマイナー通貨ペアに比べて、テクニカル分析の有効性ははるかに増すでしょう。
ランダム性の大きいマーケットのなかで、テクニカル分析は、われわれのトレーディングに指針を与えてくれる点は、多いに評価すべきだと思います。しかし、せっかくのいい道具も、使い方を間違えてしまっては、台なしです。いい食材を用意しても、料理人の腕が悪ければ、でき上がる料理は悲惨なのです。
テクニカル分析を用いることによって、エントリーポイントや、利食いポイントが明確になりやすいという利点は大いに利用しましょう。
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自分の頭で考え抜く
ただ、ノイズが大きいため、以下の点に注意しましょう。
- 各通貨の買い・売り圧力の判断(通常これはファンダメンタルズ分析である程度予測できる)を行う。
- 主要通貨ペア(「ユーロ/ドル」「米ドル/円」など)以外には、極力適用しない。
巷に溢れている方法論もよく考えてみると、意外と似非科学だったりするものです。こういったものに左右されず、自分の頭で考えぬくことが、勝ち続けるコツなのかもしれませんね。
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※この記事は、FX攻略.com2015年11月号の記事を一部編集したものです
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