幼稚園のころから、ある塾に通っていた。チューターと呼ばれる大学生のお兄さん、お姉さんが自習室に待機していて、勉強で分からないことがあれば、いつでも質問して教えてもらったことを覚えている。チューターさんと仲良しになり、夏の講習会でお昼ご飯をごちそうしてもらったことを今でも大切な思い出として残っている。連れて行ってもらった喫茶店で、大人が漫画を読んでいるのを見ていた。いい年なのに、漫画なんか読むなんて、と思ったことを記憶している。
ヤン・ウェンリーとは、SF小説『銀河英雄伝説』の登場人物で、自由惑星同盟側の主人公である。歴史を学ぶために同盟軍士官学校の戦史研究科に入学したが在学中に廃止され、戦略研究科に転科して戦略家としての才知を生かした。一方で、帝国側の主人公はラインハルト・フォン・ローエングラムである。そして、この二つの陣営の二人のバトルを描いたのが銀河英雄伝説である。
トゥキュディデス
ハーバード大学元教授で、クリントン政権では国防次官補、レーガン政権からオバマ政権まで歴代国防長官の顧問を務めたグレアム・アリソン氏の専門は、核戦略論である。キューバ危機の実情を描いた『決定の本質―キューバ・ミサイル危機の分析』の著者としても知られる。
アリソン氏は、2013年ニューヨーク・タイムズに「Obama and Xi Must Think Broadly to Avoid a Classic Trap(オバマ米大統領と習近平国家主席は、古典的なわなに陥ることを避けるために大局的に考えなければならない)」と題するコラムを投稿している。このコラムの中で、古代ギリシアの歴史家であるトゥキュディデスが論じた戦争が勃発する原因である「利益」「名誉」「恐怖」の3要素について議論している。そして、米国と中国が「トゥキュディデスのわな」に陥らないように、二つの超大国間は新しいタイプの関係を構築することを提案している。
トゥキュディデスのわなとは、古代ギリシアで陸軍国スパルタと海軍国アテネが約30年にわたって戦ったペロポネソス戦争の要因についてを分析して得られたものである。新興国アテネが登場し、旧覇権国家スパルタと並ぶようになると、戦争が生じがちになることを「トゥキュディデスのわな」とアリソン氏が名づけた。
では、現代社会で覇権争いが激化した場合、軍事的な力の行使が起こるかどうかである。読者の皆さまもこの議論について興味を持たれるであろう。われわれはその答えを知る鍵を、全世界の国内総生産(GDP)に占める貿易の比率から得ることができる。
少し古い統計になるが、2010年の全世界のGDPに占める貿易の比率は約60%あった(図①)。これは、1914年の2倍、1930年代の3倍の比率である。この統計は、強い世界経済の結びつき(貿易の結びつき)を示している。このような環境の中では、感情をあおり立てるような指導者でなく理性的な指導者であれば、軍事的な力の行使を控えるであろう。なぜなら、軍事的な力の行使は自国経済を破壊に導くからである。最終的には、世界経済の強い結びつきの中で、軍事力とは安全保障上の「抑止力」としての役割が主な任となり、それ以上でもそれ以下でもないことを意味することになる。
国際政治経済のトリレンマ
ダニ・ロドリック元ハーバード大学教授は、「国際政治経済のトリレンマ」の考えを2000年に発表した論文で有名にした(図②)。国際政治経済のトリレンマとは、「国家主権」「貿易の自由化(経済のグローバル化)」「民主主義」の三つの政策目標や統治形態の全てを達成することはできない「トリレンマ」であるとする考えである。
例えば、欧州連合(EU)はそれぞれの加盟国が民主主義体制を持ち、グローバル化され国際経済や市場に対して開かれている。しかしながら、それぞれの加盟国は自国の利益のみを追求する国家主権は主張することができない。
ブレトンウッズ体制(1944年-1971年)は、資本移動に規制をかけることを許容したことから国際貿易の規模が限られた。国際政治経済のトリレンマの観点からは、民主主義と国家主権を選択したことになる。
国家主権を保ちながら、経済のグローバル化をはかる国もある。このような国は「金の囚人服(国際経済の結びつきが強くなり、国際的なルールに合わせようとすることで必ずしも自国民の民主的なプロセスの政策決定にならず民主政治がなくなる状態)」から逃れるために、民主主義の感覚を強めるか、あるいは経済のグローバル化の度合いを弱める必要がある。しかしながら、そのような国は、最終的には民主主義の感覚を強めることを選択することになる。なぜなら、現在の強い結びつきの世界経済の環境下ではグローバル化の度合いを弱めることはできないからである。
最後に
哲学者であるニーチェが、『偶像の薄明』の中で、「ものの始めを探すことで、人間は蟹になる。歴史家は後ろ向きにものをみる。ついには後ろ向きに信ずるようになる」と書いている。ならば、「投資家とは前に向かってものをみる。ついには前向きのみを信じるようになる」であろうか。それとも、投資家は前も後ろも見ないといけないのではないだろうか。ヤン・ウェンリーは、その答えを知っているのであろうと筆者は思う。
※この記事は、FX攻略.com2021年4月号(2021年2月20日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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