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穀物相場急騰[佐藤りゅうじ]

※この記事は、FX攻略.com2021年4月号(2021年2月20日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

コーンは8年ぶりの高値

 先日、昭和産業が3月からサラダ油、キャノーラ油などの食用油を値上げするとの報道がありました。日清オイリオグループも、4月からこの動きに追随します。また、全国農業協同組合連合会(JA全農)は、牛や豚といった家畜の餌になる配合飼料の2021年1~3月期の出荷価格を2四半期連続で引き上げました。

 これらの背景にあるのは、穀物価格の急騰です。今回は、穀物相場の代表選手とされるコーンの現状を見ながら、いま穀物相場で何が起こっているのか考えていきましょう。

 コーンは、穀物として人間の食料や家畜の飼料となる他、デンプンや油、バイオエタノールまでさまざまな用途で使われます。近年、遺伝子組み換え技術の進化やGPSを利用した新技術により、単収の増加と増収が続いていました。このためコーンの価格の上値は抑えられ、2014年の夏以降、4ドル台は絶好の売り場となってきました(チャート①参照)。

シカゴコーン(月足、期近つなぎ足)チャート

 しかし、昨年10月に4ドル台に突入後、12月には節目の4ドル50セントと上抜き、今年1月には、2014年5月以来となる5ドル台に乗せ、1月13日には541.50セントまで水準を引き上げる場面がありました。

南米の生産減

 この背景には、供給面では気象要因による南米での生産が減少している一方で、中国の消費増などによる需給のひっ迫があります。

 1月12日(1月予想)に米農務省(USDA)から2020-2021年度の世界のトウモロコシ需給報告(表①参照)が発表されました。同報告によると、2020-2021年度の世界のトウモロコシ生産量は前年度比1.6%増の11億3389万トンとなっていますが、前月の予想値より0.8%減と、わずかに下方修正されました。

米農務省(USDA)2020-2021年度の世界のトウモロコシ需給報告

 国別に見ると、米国では単収などの減少により824万トンとなりました。南半球は、この時期、夏から秋を迎え収穫期に入ります。しかし、今年はラニーニャ現象による高温環境からアルゼンチンとブラジルでは単収が下方修正され、それぞれ生産量が150万トン、100万トン下方修正されました。ただ、それでも前年度比で見れば、米国、ブラジルは生産増となっています。

中国需要が再拡大

 一方、消費量は世界全体で前年度比1.7%増、前月比0.4%減の11億5306万トンと下方修正され、生産量を1917万トン上回ることとなっています。国別に見ると、中国で輸入量の増加に伴い150万トン上方修正されたのが目立っていますが、このほとんどが豚などの飼料用です。

 中国は世界最大の豚消費国ですが、2018年8月にアジアで初めてアフリカ豚熱(ASF)の発生が確認されました。ASFは、ASFウイルスが豚やイノシシに感染する伝染病です。発熱や全身の出血性病変を特徴とする致死率の高い伝染病で、中国ではASFの流行により養豚業が壊滅的被害を受けたとされています。

 中国政府より正式な数値は発表されていませんが、欧州系金融機関の推定では最大で55%の養豚を失ったとされています。これにより、同国の飼料用の穀物需要は一時後退していましたが、昨年から養豚業が回復しており、これに伴い中国の大豆やコーンなどの飼料需要が急拡大しています。

需給ひっ迫は長引くか

 この5~6年ほど、コーンにせよ大豆にせよ、天候要因による作付けの遅れなどから急騰する場面があっても、遺伝子組み換えの技術、それに伴う農薬の進歩により豊作が続き、需給は緩みがちでした。しかし、2020-2021年については、ラニーニャ現象による南米の天候要因だけでなく、中国の養豚業の回復、さらには新型コロナウイルスの感染拡大による輸送力の低下など、さまざまな要因が複合的に重なり、コーン価格は急騰しています。米国の1月のコーンの期末在庫率を見ても10.6%と昨年のこの時期に比べ約3%も低下し、歴史的な低水準となっています。

 大豆も同じような状況となっており、特に大豆はコーンより中国需要が高いこともあって需給がよりひっ迫しています。また、小麦は世界生産は過去最高となりそうですが、ロシアが昨年末に輸出関税をかけた上、ウクライナやアルゼンチンといった小麦の生産大国が、コーンの生産減少や需給の引き締まりを受けて飼料不足を懸念し、小麦を国内飼料用に向けるため輸出規制をかける動きを見せています。このことが小麦価格の上昇につながっています。

 このように、穀物相場は全体的に価格の上昇傾向が強まっており、中国の養豚数の増加が一服、もしくはコーン、大豆の生産が回復するまで、上値を試す展開が続きそうです。

※この記事は、FX攻略.com2021年4月号(2021年2月20日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

ABOUT ME
佐藤りゅうじ
さとう・りゅうじ。1968年生まれ。1993年米大卒業後、マーケティング会社を経て、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(後の株式会社オーバルネクスト)入社。マクロ経済分析をはじめ、為替、商品、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年より「エイチスクエア株式会社」を起業、アナリストレポート等を執筆、「FOREX NOTE 為替手帳」等の企画・出版を行う傍ら、投資関係のラジオ番組キャスターを務める。個人トレーダー。国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト。ラジオ日経「ザ・マネー オノサトの相場予測」(月曜15:00〜)メインキャスター。
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