安田佐和子

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    2018年7月14日
    米中貿易戦争懸念台頭でもFRBは静観を決め込む理由[安田佐和子]
    トランプの制裁関税に中国が激しく反発 「米中もし戦わば」とは、トランプ政権発足時に新設された国家通商会議(NTC)の委員長、ピーター・ナバロ氏(現:通商製造業政策局長)の著書名です。トランプ政権発足2年目、世界はこの言葉を彷彿とさせる出来事を次々に目撃することになります。 トランプ大統領は1月の太陽光パネル・洗濯機への緊急輸入制限(セーフガード)発動、3月の鉄鋼・アルミ関税に続き、同22日には中国に対し知的財産権の侵害を理由に同国輸入品、最大600億ドル相当に25%の関税を適用する大統領令に署名しました。大統領令で米通商代表部(USTR)に15日以内の関税引き上げリストの取りまとめを求め、30日間の意見公募期間を経て、対象品目を決定するよう要請しています。関税導入は、早くて5月後半でしょう。 トランプ大統領が「多くのうちの初めの一手に過ぎない」と明言する通り、同時進行で財務省には中国企業の対米投資を制限する案を60日以内に提示するよう求め、同政権による中国貿易包囲網は狭まるばかりです。 黙っていないのが、中国流といえます。同国は、米国が3月22日に知財関税措置を発表した数時間後の翌23…
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    2018年5月25日
    税制改革での所得押し上げ効果、クレジットカード金利負担が抑制?[安田佐和子]
    企業向けの減税が経済成長の牽引役 税制改革法の成立を受け、米連邦公開市場委員会(FOMC)と国際通貨基金(IMF)は2018~2019年の経済成長見通しを引き上げただけでなく、成長牽引役として共に法人税減税を挙げていました。 FOMCの議事要旨では、2017年12月3日開催分で多くの参加者が、法人税減税が「小幅ながら設備投資を押し上げる」と予想。1月30~31日開催のFOMC議事要旨でも、企業は減税による増益分を投資、賃金、M&A、株主還元策などどこへ振り向けるか検討を開始したばかりとの認識を寄せています。 IMFは1月22日公表の世界経済見通しで、税制改革法の短期的な景気を刺激する要因として、FOMC議事要旨より明確に「主に法人税減税を受けた企業の投資動向」を挙げました。 企業向け減税が成長を押し上げるとの見解で一致したIMFとFOMC議事要旨ですが、違いも横たわります。FOMCと異なり、IMFは所得税減税の恩恵を受けるはずの家計への言及を控えました。1月FOMC議事要旨では、貯蓄率が2005年以来の低水準となったことについて言及しつつも、力強いセンチメントや資産効果を背景に個人消費…
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    2018年4月26日
    米国債を売りたくなる、これだけの理由 “ラスト・リゾート”は存在する?[安田佐和子]
    米国からの資金流出 米10年債利回りは1月10日、一時2.595%と2014年9月以来の高水準に達しました。その一方、米債利回り上昇でドル安、つまり米国からの資金流出といった金融危機直後の2009年のような流れが生じています。一体いま、何が起こっているのでしょうか? 米長期債市場の潮目は、税制改革法案が成立した2017年12月第3週に変わりました。同22日にトランプ大統領が署名して以降、米10年債利回りを中心に上昇スピードに拍車が掛かったのは周知の通りです。 税制改革が利回り上昇を加速させる理由として、一つ目に成長加速とそれに伴うインフレ上昇が挙げられます。国際通貨基金(IMF)の1月版・世界経済見通しで、2018年の米成長率予想は従来の2.3%→2.7%へ引き上げられました。 それ以前に米連邦公開市場委員会(FOMC)でも、2018年のFOMC参加者の成長率・予想中央値は従来の2.1%→2.5%へ上方修正。成長加速が見込まれる一方、原油先物価格が約3年ぶりに60ドル台を超えて推移する中、物価見通しも上向きつつあります。 ミシガン大学消費者信頼感指数は1月速報値版で1年先見通しが2.8…
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    2018年4月14日
    2018年のFOMC投票権保有者正副議長以外はタカ派寄り?[安田佐和子]
    経済学の博士号を持たないパウエル氏 2015年12月に利上げを開始してから、米連邦公開市場委員会(FOMC)はイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長体制下で5回の利上げを行いました。2015年と2016年の12月に1回ずつ、2017年には3回実施し、イエレンFRB議長は有終の美を飾った格好です。 2018年 、FRBはジェローム・パウエル氏を議長に迎えます。経済学の博士号を取得していないFRB議長は、1979〜1987年に議長を務めたポール・ボルカー氏以来となります。 パウエル氏は弁護士としてキャリアをスタートさせた後、投資銀行のディロン・リード・アンド・カンパニーで頭角を現し、ブッシュ政権(父)の時代には国内市場担当の財務次官に就任。民間に戻ってからは、投資会社カーライル・グループの共同責任者を務めました。2005年に非営利団体の超党派政策センターに注力する上でカーライルを退社した後、債務上限引き上げ交渉で共和党議員を説得した影の尽力者でした。そのときの功績が認められ、オバマ政権で1988年以来となる野党寄りFRB理事の指名となったわけです。 イエズス会系の高校を卒業したキリスト…
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    2018年3月28日
    トランプ政権が警鐘を鳴らすオピオイド問題、その実態とは[安田佐和子]
    オピオイド過剰摂取が労働参加率低迷を招く 「公衆衛生上の国家的な非常事態だ」——トランプ大統領は2017年10月26日、ホワイトハウスで行った演説でこう訴えました。米国で蔓延する鎮痛剤の一種オピオイド(アヘンから作られるモルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデインなどを含む)の過剰摂取による死者が増加の一途をたどっているためです。 トランプ氏は大統領選からオピオイド問題に注目し、2月28日の議会演説で「恐ろしい薬物の大流行」と懸念を表明。3月には、麻薬中毒とオピオイド危機対策向けの委員会設立に関わる大統領令に署名しました。委員長には、トランプ氏の政権移行準備チームの責任者を務めたニュージャージー州のクリスティー知事が就任しています。日本人の間では米国人アーティスト、プリンスの死因だったことで思い出す方も多いのではないでしょうか。 “Opioid Epidemic(鎮痛剤の蔓延)”との言葉が普及する中、オピオイドの過剰摂取を深刻に捉える人物はトランプ氏だけではありません。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長も、その一人です。7月14日に開催された上院銀行委員会の公聴会で、ベン・…
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    2018年3月1日
    クリスマス前、カリフォルニア州の山火事がワイン価格を押し上げへ[安田佐和子]
    ハリケーンと山火事で保険会社の業績が悪化 米国の保険会社は、7〜9月期決算でハリケーン“ハービー”をはじめ“イルマ”“マリア”の自然災害損失により大幅減益を計上しました。米調査会社ファクトセットによれば、保険会社の決算発表が相次いだ10月27日時点では同セクターがS&P500構成企業の1株利益伸び率を押し下げ、前年同期比4.7%増と1年ぶりの低い伸びにとどまっていました。最終的には、エネルギー(同135.1%増)やIT(同19.7%増)など増益を果たした7セクターが相殺し、7〜9月期の1株利益伸び率は同6.2%増となる見通し。 ただ保険関連の業績をめぐっては、10〜12月期も懸念材料を残します。平年を下回る気温に伴い積雪の恐れがある他、10月8日にはカリフォルニア州で大規模な山火事が発生したためです。一部の保険会社は、2期連続の業績不振を余儀なくされかねません。 保険会社の業績より心配なのは、その被害状況と今後の影響です。甚大な被害を受けたカリフォルニア州はナパ郡やソノマ郡などを抱えています。二つの郡は世界第4位のワインの産地として有名ですよね。ワイン関連の就労者数は32.5万人で、経…
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    2018年2月13日
    トランプ政権の税制改革 過去からみた米経済と為替への影響は?[安田佐和子]
    米国民の要望高まる税制改革の大幅修正 医療保険制度改革(オバマケア)の廃止・代替案移行でつまずいたトランプ政権が、税制改革で挽回に臨みます。2017年9月26日に公表した“壊れた税制を修正する枠組み(United Framework For Fixing Our Broken Tax Code)”と題した案では、公約通り所得税区分を従来の7段階(10%、15%、25%、28%、33%、35%、39.6%)から3段階(12%、25%、35%)へ簡素化します。長女イバンカ氏の意見を取り入れ、中間層向けに保育向け税控除を採用しました。トランプ米大統領は「歴史的な減税となる」と胸を張ります。 そもそも、米国人は税制改革にどれほどの期待を寄せていたのでしょうか。CNNが9月17〜20日に実施した世論調査では、政策の優先課題としてハリケーン直撃まもない事情から「災害支援」がトップで36%となりました。次いで「ヘルスケア」が31%、「税制改革」は12%で3位にとどまります。しかし、税制改革に対し「全面的な見直し」の回答は35%、「大幅な変更」は33%におよび、併せて68%でした。政策優先事項としてそ…
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    2018年2月2日
    就任200日後、トランプ政権をめぐる変化とは[安田佐和子]
    物議醸す大統領令と政権人事の不安定さ 不動産王との称号を持つドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任してから、8月7日で就任200日を迎えました。“米国第一”を掲げるトランプ氏はこれまで数々の大統領令に署名、官報に加えられない覚書を含むと74件(2017年8月27日現在)に及びます。 そのうち1月23日の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定離脱や、3月6日に修正されたイスラム教6か国に対する入国禁止令への署名は、世界に衝撃を与えたものです。 8月14日には米大統領覚書を通じ、中国に知的財産権侵害の懸念、加えて米企業が中国へ進出する際の技術移転を余儀なくされる状況に関する調査を米通商代表部(USTR)に指示。制裁関税措置を講じるか否か、約1年間にわたって判断する見通しです。 その一方で、トランプ政権ではいまだ政治任用職に空席が数多く見られます。ワシントン・ポスト(WP)紙によると、8月26日時点で米上院の承認が必要な政治任用ポストの591のうち承認済みは117名で、そのうち368席は指名すらされていません。歴代大統領と比較すると、8月休会前に米上院の承認を得た数はWP紙が重要ポスト…