オピオイド過剰摂取が労働参加率低迷を招く
「公衆衛生上の国家的な非常事態だ」——トランプ大統領は2017年10月26日、ホワイトハウスで行った演説でこう訴えました。米国で蔓延する鎮痛剤の一種オピオイド(アヘンから作られるモルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデインなどを含む)の過剰摂取による死者が増加の一途をたどっているためです。
トランプ氏は大統領選からオピオイド問題に注目し、2月28日の議会演説で「恐ろしい薬物の大流行」と懸念を表明。3月には、麻薬中毒とオピオイド危機対策向けの委員会設立に関わる大統領令に署名しました。委員長には、トランプ氏の政権移行準備チームの責任者を務めたニュージャージー州のクリスティー知事が就任しています。日本人の間では米国人アーティスト、プリンスの死因だったことで思い出す方も多いのではないでしょうか。
“Opioid Epidemic(鎮痛剤の蔓延)”との言葉が普及する中、オピオイドの過剰摂取を深刻に捉える人物はトランプ氏だけではありません。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長も、その一人です。7月14日に開催された上院銀行委員会の公聴会で、ベン・サス議員(共和党)による「働き盛り世代の男性の労働参加率が低下しているのは新常態なのか」との質問に応じ、イエレン議長は低下要因に自動化やグローバル化の他、“オピオイド”に初めて言及しました。オピオイドの過剰摂取が失業者の増加や積極的に職探しを行う人々の減少をもたらし、労働参加率低迷の一因になったとの示唆を与えたのです。
米国の労働参加率(働いているか職探ししている者/軍人の他、刑務所や病院など施設入所者を除く人口)は、9月に63.1%と2014年3月以来の水準を回復したとはいえ、金融危機前の水準まで低下した失業率や、その他の労働指標と比較すると鈍い改善にとどまります。 働き盛りとされる25〜54歳男性の労働参加率も88.6%と、景気後退入りした2007年12月の水準以下で推移する状況です。これまで労働参加率が改善しない最大の要因としてベビーブーマー世代の引退が挙げられてきましたが、オピオイド問題が押し下げている可能性もあります。
出所:米労働統計局より三井物産戦略研究所作成
オバマ前政権で大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長を務めたプリンストン大学のアラン・クルーガー教授は、2016年に公表したレポートで「労働市場に参加していない働き盛りの男性の半分がオピオイドを服用中」と分析していました。単純に当てはめれば、350万人相当と試算できます。米国では働くことを希望するものの、何らかの事情で労働市場に参加していない人々の数は約560万人にのぼり、景気後退入りした2007年12月の約460万人を上回ります。しかしオピオイド乱用者が減少すれば大いに改善し、労働参加率の上昇につながることでしょう。
鎮痛剤の乱用による死亡者数が増加傾向に
そもそも、なぜ米国でオピオイド利用者が増加したのでしょうか? オピオイドを含む鎮痛剤による死亡者数は2000年ごろから増加トレンドに突入しましたが、一因に訴訟が挙げられます。例えば2001年には、肺ガンで死亡した80代の父親に対し医師が鎮痛剤を十分与えず苦痛を味わわせたとして遺族が訴訟を起こし、150万ドルの賠償金を勝ち取りました。判例を受け、医師が訴訟を恐れ、患者の言うがままに処方箋を出した結果、皮肉にも中毒者を増やしたというわけです。
オピオイド利用者の増加に合わせ、薬物過剰摂取による死亡者数は2009年に自動車事故での死亡者数を抜き、死因別で1位でした。2015年には5万2404人と、1999年の約3倍に膨らみます。薬物過剰摂取による死亡者のうち、約3分の2の死因がオピオイドとされています。2015年に薬物やアルコールなどの乱用により“物質使用障害”と診断された米国人は、12歳以上で2050万人、そのうち約10分の1がオピオイドを含む鎮痛剤に起因していました。
出所:CDC
2015年の鎮痛剤による死亡者数を年齢層でみると、45〜54歳が最も多く1万2974人でした。50歳以上の死因では薬物中毒が1位となるはずです。一方、増加が顕著なのはミレニアル層(主に1980〜2000年生まれ)で、年齢別で1万1880人と2位へ浮上、35〜44歳を超えてきました。各地域の経済状況をまとめた地区連銀報告では特殊技能職から新卒レベルまで人材不足が指摘される中、鎮痛剤の蔓延は労働市場にとって無視できない問題をはらんでいます。
※この記事は、FX攻略.com2018年1月号の記事を転載・再編集したものです
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