底割れ状態の豪ドル 凋落の背景は?[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年9月3日号

先週のドル円

先週のドル円相場は、引き続き110円台後半から111円台後半の狭いレンジで一進一退の動き。トルコリラ、南アランド、アルゼンチンペソなど新興国通貨が大きく下落したことから、リスク回避型の円買いが強まったが、安全通貨のドルも同時に買われたため、ドル円はあまり方向感が出なかった。

米雇用統計発表まで膠着か

新興国をめぐる不安感や米中貿易戦争を背景に、今週もリスク回避ムードが続きそうだが、そうした局面では安全通貨のドルと円が並行して買われやすく、ドル高と円高の綱引きで膠着となることが多い。今週金曜日には米国8月の雇用統計の発表を控えていることもあり、それまでは110~112円程度のレンジでの様子見となる可能性が高い。

ちなみに現時点での米国雇用統計の予想コンセンサスによると、失業率が3.8%と前回から0.1%改善し、非農業部門雇用者数が+19.1万人と前回の+15.7万人から伸びが加速する。予想通りなら、米国経済の堅調が確認され、年内あと2回の利上げを正当化することになりそうだ。ただし市場が注目する平均賃金は、今回も前年比+2.7%(前回+2.7%)と足踏みが続く見通しだ。パウエルFRB議長が先月のジャクソンホール会議で述べた通り、景気の過熱やインフレの加速の兆候は見られず、このまま行けば来年中に利上げ局面は終了するとの見方が強い。失業率や非農業部門雇用者数が好結果となっても、平均賃金が現状水準で落ち着いている限り、ドル円の上昇余地は限定され、取り組み意欲は低下しよう。

当面は米豪の金利差拡大が確実

他通貨に目を向けてみると、主要通貨の中で豪ドルの凋落が際立っている。米国との金利差が逆転し、高金利通貨としての優位性が失われていることが下落の主因だ。豪準備銀行はインフレ低迷を理由に政策金利の据え置きを継続しており、利上げ開始は早くても来年半ば以降とみられている。米国はあと3~4回の利上げが見込まれるため、当面は米豪の金利差拡大が確実な情勢だ。

米中貿易戦争のエスカレートも豪州経済にとって痛手となる。豪州の輸出の3割強、なかでも鉄鉱石輸出の8割が中国向けであり、中国の輸出が減速すれば、中国への輸出に依存する豪州経済は打撃を受ける。米国による輸入制限を受けて、世界的な鋼材需要の減少懸念から鉄鉱石相場が低迷していることも痛手だ。さらに新興国通貨の下落が続き、リスク回避ムードが強まれば、ハイリスク通貨に位置づけられる豪ドルは当然敬遠される。

豪ドルは先週、対ドルで0.71ドル台、対円で79円台に突入し、ともに年初来安値を更新した。ドル円の値動きが限られる中、反転の材料が見当たらない豪ドルに注目するのも一計だろう。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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