2019年5月16日

FXをコンプレックス産業にしないぞ[鹿内武蔵]

ネガティブな要因を解決する発想は…

 コンプレックス産業というものがあります。顧客が抱えるコンプレックス、例えば肥満、薄毛、美容といった問題を解決することで、対価を得るビジネスのことです。

 今回いいたいのは、FXがこういったコンプレックス産業の一形態にあまりになりすぎていないかということ。

 FXはいうまでもなく資産運用で、株式や不動産と同じく投資の一種です。ウィキペディアを見ると、投資とは、「主に経済において、将来的に資本(生産能力)を増加させるために、現在の資本を投じる活動を指す」とあります。将来的にお金などを増やすために、今ある資本などを投じるものが投資というわけです。

 この、「将来的に」という部分が非常に大切で、けっこう先の未来に向けて今あるものを増やすための行動が投資。なのですけど、ぶっちゃけ、「今すぐ儲けたい」と思ってFXをやっている人はいませんか? はい、僕がそうです。未来のことも大事だけど、やっぱり来週ぜいたくをしたり、来月海外旅行に行きたいです。

 もちろん、お金は誰だって欲しいですし、具体的な欲望の解放イメージがあるのは悪いことではないはず。ですが、将来的に資産増を達成すれば大成功である投資において、性急な欲望はマイナス要因になりかねません。

 10年間コツコツ増やして海外旅行に行くことは、きっとそこまで難しくないはず。でも、明日海外旅行に行きたいから、50万円増やしたいとなると、資金がたくさんあり、なおかつかなり美味しい相場に巡り会わなければ難しいですよね。つまり、焦ると失敗しやすいのが投資なのです。複利運用という概念がある以上、投資において時間は味方にするべき存在ですが、慌てて欲望を解放しすぎると、時間は味方どころか敵になってしまうのです。

お金持ちになる前からお金持ちの行動を

 ここでコンプレックス産業のお話です。最初に挙げた外面的なものとは別に、自分が貧乏だからお金を増やしたいという、内面的なコンプレックスも、またこれをテーマにした産業の一形態のはずです。実際、情報商材はもとより、書店に並んでいる書籍や雑誌、インターネット上のメディアなどでも、すぐ儲かる系の表現はパンチ力がありますから、今も昔も多用されています。FX攻略でも、そういった表現を目立たせるために使うことはあります。

 なのですが、コンプレックス解消的な目標で投資をすることをうながすと、どうしてもスピード解決を求める方向に行きがち。そりゃあ人間ですから、今目の前にある課題は1秒でも早く片付けたいですよね。

 仕事ならこの発想はたぶん良いことだと思うのですが、投資だとマイナス要因であることは既に述べた通り。

 このコラムと一緒に入っている6月号の村居孝美さんの記事にもありますが、自分がお金を持っていない、だからそれを解決したいというメンタルは、既に投資で稼いでいるお金持ちと、全く別の行動を導き出すことにつながります。トレード上級者で目先の勝ち負けに一喜一憂する人はいません。また、損切りを疎かにし、資産防衛を軽んじるトレード上級者もいないでしょう。

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 FXは初期資金が非常に少なくて済み、経済や政治のことを知らなくても参入しやすい一面を持っているため、どうしてもコンプレックス産業的なアプローチが効果が出やすいんですよね。

 でも、これまでに会ってきた投資が上手い人たちで、目先のお金にギラギラしている人はいなかったです。もちろん彼らは投資で成功していてお金があるからこそですが、別にトレードで成功する前から、上級者と同じメンタルを持っていても良いわけですよね。その方が勝てるんですから。

※この記事は、富士山マガジンサービス読者限定FX攻略.com編集部便りに掲載されたものを加筆・編集したものです。

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鹿内武蔵(しかうちむさし)

株式会社tcl代表取締役。2008年のFX攻略.com創刊時から編集部に在籍、本誌と公式サイトの運営に携わる。取材や記事執筆の他、トレーダーとしてFXの運用も日々行っている。好きなテクニカルは平均足、好きな手法はブレイクアウト。

公式サイト:株式会社tcl