連載にあたって
本誌の読者の中には、FXで儲けて最低でも年金の不足額とされる2000万円を老後までに貯蓄したいと考えている方々もいると思われます。いや、さらには億トレーダーになりたい!という野望を抱いていらっしゃる方もいるかもしれません。当然ですが、数十年かけて資産を増やす方法と、一気に億トレーダーに(なれたとして)なる方法は異なるものです。冗談はさておき、今後の連載内容は読者の皆さまの投資活動に役立つコンテンツを提供しようと思っています。
コンテンツの構成は前半、後半に分けて、前半では最近のマーケットについて書こうと思います。本誌は月刊誌なので1か月ぐらいの時間軸でマーケットが注目していること、最近のマーケットの動き、ファンダメンタルズの動き、マーケットを取り巻く環境など、いわゆる時事ネタになります。ここでは私の相場観も含めて市場に対する雑感のようなものを書きます。マーケットに関してはFXだけでなく、債券、株式など幅広い市場について書いていこうと思います。
そして、後半は投資の方法論的な内容にしたいと思います。テクニカル分析、マーケットのアノマリー、マーケットの特徴などの知識をお届けします。前半はマーケットの時事ネタということで旬な内容になりますが、後半に関しては何年たっても利用できる知識や方法論について書いていく予定です。皆さん、ご一緒に投資の勉強をしていきましょう。
過度な悲観から中立への修正
それでは、まずマーケットについて考えていきましょう。マーケットはさまざまな情報や材料を織り込んで動きます。大きなテーマとして注目される材料は、世界各国の経済状況や金融政策です。これらはマクロ経済の材料といっても良いでしょう。為替は2国間あるいは多国間のさまざまな要因で変動しますから、マクロ的なテーマになることが多いわけです。一方で、個別株の変動する材料はもちろん世界的な経済状況、日本株であれば日本の経済状況によって変動します。しかし、何といっても個別株の変動する材料は、その企業の業績などに絡む材料です。これら個別企業の業績などはミクロな材料と呼ばれます。
少し前までマーケットが注目していたのは金融政策です。9月の欧州中央銀行(ECB)の金融緩和、10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の3回目の利下げなど、ECBと米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の行方がテーマでした。為替にとって金融政策のウェイトは大きく、為替を変動させる大きな材料になります。マーケットは金融政策の先行きを予想しながら、金融政策が為替にどのような影響を与えるかに注目しますが、今回ECBもFOMCもマーケットの期待通りの決定をしました。
ECB理事会では、9月12日に金融緩和の決定をしました。そのときは市場が求めるものを全て盛り込んでおり、ドラギECB総裁は頑張ったなという印象を受けました。その決定直後からユーロドルは反発して10月1日に1.0880ドルと今年の安値まで下落しましたが、その後は1.11ドル台に上昇するなどユーロの下落はいったん停止しています。FOMCも10月30日にマーケットの予想通りに利下げを行いましたが、予防的な利下げはここまで、と利下げをいったん停止する姿勢を示しました。マーケットは先を予想して動きますから、その予想がほぼ100%達成されたことでECBやFOMCのマーケットへの影響度は少なくなったわけです。
次のテーマは米中通商協議
そこでマーケットは、10月までの金融政策というテーマから次のテーマに移っていきます。その移ったテーマは何かというと、米中通商協議です。米中通商協議に関しては昨年から注目されており、この先も折に触れては浮上する可能性が高いテーマです。というのも、金融政策のように打ち止め感がないからです。少なくとも近い将来、完全に米中通商協議が解決する可能性が高いのでないかと思われています。
今注目されているのは第1段階の協議で、これがどこまでのものを含むのか明確になっていませんが、米中をめぐる問題は貿易だけでなく、知的所有権や5Gをめぐる覇権争い、南シナ海などをめぐる地政学的な争いなどさまざまな問題が横たわっており、どれも短期間で解決する問題ではありません。強弱はあったとしても、今後も長くテーマとして取り上げられることになるでしょう。
米中問題もそうですが、それと共に経済指標に対する反応が少し敏感になってきたように思われます。もちろん経済指標はファンダメンタルズ分析の王道で、各国中央銀行の金融政策と共にマーケットが常に注目する材料です。欧州では、ドイツの製造業購買担当者景気指数(PMI)は9月の41.7を底に11月は43.8に上昇、ユーロ圏の製造業PMIも9月の45.7を底に46.6まで上昇しています。米国の製造業PMIも7月の50を底に52.2まで上昇してきています。サービス業に比べて落ち込みの激しかった製造業のPMIが底打ちしてきたことは、明るい兆しになっています。
金融政策について
為替を変動させる材料はさまざまありますが、その中で金利は一番大きなテーマになります。基本的には金利が高い通貨は低い通貨に比べて買われやすい傾向があるのですが、新興国通貨に関しては特にそれが顕著に現れます。したがって、最近のように金融緩和が続くようなら、当該通貨には売り圧力がかかってきます。しかし、マーケットは常に先を読んで動きます。ECBもFOMCもマーケットが利下げ期待を抱くうちはユーロの下落、ドルの下落が起こりますが、今回のように予想通り金融緩和が行われても、これでいったん金融緩和が終了することになると、織り込み済みということでむしろユーロやドルが買い戻されます。ですから、中央銀行の金融政策を見る上で重要なことは、金融緩和や金融引き締めがどのくらい続くのかという部分になります。
FRBは米国の中央銀行で、金融政策の目標として雇用の最大化と物価の安定という二つの使命(Dual Mand ate)を託されています。この中で金融政策を決定するのがFOMCで、FRB理事7名と地区連銀総裁5名で構成されています。6週間ごとの年8回開催され、今年は12月10日、11日が最後のミーティングです。議事要旨は終了後3週間後に発表されます。毎回発表される声明文は簡潔にまとめられ、全部で5~6段落に分かれています(画像①)。
画像① FOMC声明文
なお3か月に一度、経済見通しとドットチャートが発表されます。ドットチャートとは、FOMCに参加するメンバー(7名の理事と12名の地区連銀総裁の合計19名)が将来の金利はどの程度が適切かをチャートに表したものです(画像②)。このドットチャートでFOMCメンバーの金利の見通しがある程度は予測することができ、マーケットも注目しています。
画像② ドットチャート
FOMCでは、銀行間の取引のベースとなる短期金利のフェデラル・ファンド(FF)レートを変更することによって金融政策を行います。現状のFFレートの誘導目標は1.5~1.75%となっています。FOMCの金融政策を予想するためには、まずは声明文、経済予想、ドットチャートなどを参考にします。また、パウエルFRB議長の記者会見や講演などでの発言、FOMCメンバーの発言、特に投票権のある理事と地区連銀総裁の発言は注目されます。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)には短期金融市場の動きから予測する「CME Fedウォッチツール」があり、FOMCでの利下げ、利上げの織り込み度も参考になります。FOMCごとに織り込み度が%で示され、随時ネットで見ることができます(画像③)。
画像③ CME Fedウォッチツール
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金融政策に付随する材料
これ以外では、やはり債券市場の米国債利回りもFOMCでの金融政策を予測して動きます。なお、各情報ベンダーには中央銀行の金融政策を監視して記事を書く記者がいます。FEDウォッチャー、日銀ウォッチャーなどと呼ばれており、これらの記者が書く記事も注目されます。もしかしたら、金融政策発表前に市場の反応を探るために情報のリークが行われているのかもしれませんが、このあたりは想像の域を出ません。しかし、金融政策の発表前にこれらの記者から緩和や引き締めなどの記事が出ることも。マーケットがその記事を材料にして変動することもあるため、そういった記事にも注目しておく必要があります。
このように、各中央銀行の金融政策は為替市場に大きな影響を与え、それらを予測する集団もいろいろありますので、皆さんも情報を収集して中央銀行の金融政策を予想してみてください。
※この記事は、FX攻略.com2020年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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