移動平均線やRSIなど、多くの市場参加者が見るメジャーな指標は王道の分析ですが、必ずしも自分に合うとは限りません。ここでは本誌にあまり登場しない指標を、インジケーターの造詣に深く分析のプロフェッショナルである山中康司さんに解説していただき、奥深いテクニカル分析の視野と選択肢を広げていきましょう。
パラボリックの名前の由来と特徴
パラボリックは、古典的な指標を多く開発したJ・W・ワイルダーJr氏によるトレンド転換を示すテクニカル指標です。「RSI」や「ディレクショナル・ムーブメント(DMI)」などと共に、1978年に発刊された同氏の書籍“New Concepts in Technical Trading Systems”(邦題『ワイルダーのテクニカル分析入門』)において、最初に紹介されている指標でもあります。正式名称は「パラボリック・タイム/プライス・システム(Parabolic Time/Price System)」といい、仕切り(エグジット)となるSAR(ストップ&リバース=ドテン)がパラボラ(放物線)に似ていることが名前の由来です。
SARはポジションを持った方向(買いなら上昇、売りなら下降)のみに進みます。SARが価格と接近し到達した場合には、売買の転換点(ドテン)のタイミングになり、SARも方向転換します。
パラボリックは、単に直近高値・安値といった単純な水準ではなく価格と時間経過を考慮した仕切り価格を示すテクニカル指標であったこと、それが1970年代には既に書籍で紹介されていたという点で画期的な指標といえるのではないでしょうか。
パラボリックの計算式の仕組み
パラボリックの計算式は複雑なため、ここでは日足で買いポジションを持った場合を例に説明していきます(表①参照)。
- 初日SAR=直近最安値(SIP)
- 2日目以降のSAR=前日SAR+(直近最高値―前日SAR)×加速係数(AF)
※TradingViewで使用する場合は「パラボリック」でインジケーター検索すると「Parabolic SAR」の名称で出てきます。AFがスタートとインクリメントの二つに分かれているので、どちらもAFの初期値を設定して表示しましょう。
直近最安値をSIPと呼び、買いポジションを持った初日のSAR=SIPで計算を開始します。2日目以降のSARは、直近最高値と前日SARとの差に加速係数(AF、デフォルトでは0.02)を掛けた値を前日SARに加えます。AFは新高値を更新すると0.02ずつ増加していきます。AFの最大値は初期値の10倍である0.2以上は増加しません。
買いポジションでは常に価格の下側に位置するSARが日々上昇していき、SARが価格に到達した時点でドテンとなり、SARは価格の上側に転換します。この転換場面を持っていた買いポジションの仕切り(エグジット)のタイミングとして活用します。
パラボリック自体は変化させるパラメーターがAFしかないこと、多くの人がデフォルト設定で見ていることから、最初はAFを0.02として使ってみるのが良いでしょう。また、パラボリックはどの時間軸においてもパラメーターを変えずにそのまま使うことも可能です。
SARの位置を取引価格に近づけ浅いストップにしたい場合にはAFを0.05と大きくし、取引価格から離して深いストップにしたい場合にはAFを0.01と小さい設定にすると良いでしょう。
実際のチャートにパラボリックを表示
まずはデフォルト設定(AF=0.02、Max Value(最大値)=0.2)のまま、ドル円の日足チャートに表示してみます(チャート①)。
ローソク足の上下にSARの水準が点で表示されていることが確認できます。直近のドル円相場は、緩やかなドル安トレンドが継続していますので、SARの水準を離すためAFの数値を0.005、最大値を0.05と思い切り小さく設定してみましょう(チャート②)。すると、ほとんどの期間でSARが上側にあり、ドル安トレンドであることがよく分かります。
通常はAF設定をそのままにチャートの時間軸を長くしたり短くしたりという使い方がされますが、同じチャートでAFを変更することでも同様の使い方ができることを覚えておくと便利です。
パラボリックと相性の良い組み合わせ
パラボリックは仕切り(エグジット)のテクニカル指標として使い勝手が良いため、仕掛け(エントリー)には別の指標、特に同じワイルダー氏が開発したDMIで判断するのもお勧めです。
チャート③は、パラボリックとDMIをパラメーターはデフォルト、+DIを緑、-DIを赤で表示しています。DMIはシンプルに見ると、+DI>-DIであれば上昇トレンド、-DI>+DIであれば下降トレンドとなります。したがって黄色の範囲は下降トレンドとなりますが、パラボリックのSARが下側にある期間はポジションを持たない、といった使い分けができます。
このDMIは他にも面白い使い方がありますので、次回はDMIからADXをご紹介します。
※この記事は、FX攻略.com2021年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
・「あなたの知らないテクニカル指標の世界」連載記事まとめはこちら
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