ファンダメンタルズやテクニカルといった各種分析や、自動売買、システムトレードといった運用方法に目を奪われがちですが、FXの本質は人間と人間の関わり合いで生まれる価格推移です。分析や運用方法が相場を動かすことは決してありません。どんな相場も、動かすのは無数の人です。
この企画では、徹底してFXにおける「人」にクローズアップします。最終回のゲストは、NLPコーチングを取り入れたシステムトレードの第一人者で、「スーパートレーディングスクールREED」の校長を務める村居孝美さんです。ここでは裁量トレードとシステムトレードの違いや、FX、株、先物のメリット・デメリット、今後の投資教育活動について語ってもらいました。
一般社団法人日本トレーダーコーチング協会理事長、エクセレントホース代表取締役、スーパートレーディングスクールREED校長。NLP心理学に基づく国内外のトップトレーダーのモデリング法を伝授する「NLPトレーディング」の第一人者および現役システムトレーダー。トレーダーを専門とするコーチおよび投資法の指南役として全国的に活躍。執筆、講演、セミナー等の活動を行う。NPO法人日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)、米国NLP協会認定マスタープラクティショナー。
●聞き手:鹿内武蔵(FXライター)
※この記事は、FX攻略.com2021年5月号(2021年3月19日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
時間がないならシストレがお勧め
——まず、システムトレードとは何かを教えてください。
システムトレードという用語はいろいろな意味合いで使われ、自動売買とイコールにする考え方もあります。簡単にいってしまえば、ルールを作ってシステマチックに売買することです。発注をシステムに任せるのが、一般的なシステムトレードだと思います。昔は、ソフトを使って株の個別銘柄をスクリーニングし、チャートを見ながらルール通り売買することや、ソフトにロジックを登録して売買を任せることもシステムトレードと呼んでいました。ソフトを使う・使わないは関係なく、「あらかじめ決められたルールに従って機械的に売買すること」と定義づけて問題ないと思います。
——なるほど。次に、裁量トレードとシステムトレード、どちらが有利だとお考えですか?
まず短期的な裁量トレードは、画面に張りついた状態で瞬時に情報を取り入れながら優位性を見つけて売買します。一方、システムトレードは画面に張りつく必要がなく、過去のデータを基に統計的優位性を見つけて戦略的に売買します。
このように両者はスタイルが大きく異なるので、どちらが有利かではなく、どちらが自分に合うかを判断することが大切です。スポーツのように直近の値動きに対して俊敏に立ち回っていくのか、将棋のように先を見据えて戦略を組んでいくのか、どちらがより自分に合っているかという視点で選ぶ方がいいと思います。
——裁量の短期トレードの場合、反射神経なども影響しそうですね。
そうですね。裁量の短期トレードは、瞬時の判断が苦手な方やパソコンの操作が苦手で素早く発注できない方には向いていないです。また、仕事などで忙しく、チャートに長時間張りつけない方は情報を得る機会が限られてしまうので、裁量の短期トレードは難しいかと思います。いつチャンスが訪れるかはチャートに張りついていなければ分かりませんので、忙しくてFXに向き合う時間があまり取れないという方にはシステムトレードがお勧めですね。
——時間がない以外に、システムトレードに向いているのはどういう方ですか?
システムトレードでは、過去のデータを基にじっくりと分析や検証を行った上で戦略のルール、いわゆる売買ロジックを複数決める必要があります。また、今のマーケットに合うロジックを決めたり、マーケットに合わなくなったロジックを外したりする作業が必要となるため、適材適所に人材を配置する経営者や監督のような資質がある方が向いていると思います。
FXの難易度は高いが低資金から始められる
——FX以外に株式や先物取引といった金融商品がありますが、投資初心者が最初に選ぶならどれがいいでしょうか?
金融商品を選ぶ上で大事なポイントが二つあります。第一に資金量です。FX・株式・先物の中で最も資金が必要なのは株式です。FXと先物は株式よりも少ない資金で取引できますが、どちらかというと先物の方がFXよりは資金が必要になります。5万円とか10万円しかない方がFXをやるパターンは割と多いのですが、その資金だと株式や先物取引ができないからです。50万円~100万円くらいある方は先物、数百万円ある方は株式という具合に、資金量によってすみ分けができていると思います。
第二に難易度です。難易度でいうと、FXが一番高いです。FXはスプレッドが収益に与える影響が大きいため、それを考慮した戦略を組まなければいけないからです。その点、株式や先物は手数料が安いので難易度は低くなります。FXは少額から始められますが、難しいのがネックですね。今の投資業界は、お金がない人の方が難しい取引を強いられるという矛盾した状態にあります。
株式に関しては、現物なら証拠金が足りなくなって強制決済になることはありませんし、信用取引でもETFだったら結構安定していて、そんなに難しくもありません。そして、先物はFXと同じ証拠金取引で、FXほどではないですが、株式よりも難易度は高いです。レバレッジを大きくするほどリターンが大きくなるのはメリットですが、その分リスクも高くなるというデメリットを内包しています。
この三つを資金量・難易度の観点から比較すると、株式とFXは対極に位置し、その中間にあるのが先物といえるでしょう。初心者が最初に選ぶべき金融商品は、資金面で考えるとFX、難易度で考えれば株式だと思います。
——ETFはそれほど難しくないとのことですが、改めてどういう商品なのか教えてください。
ETFは日本語で上場投資信託といいまして、読んで字のごとく上場している投資信託です。個別銘柄と同じように上場しているので、ネット上で自ら買ったり売ったりすることができます。通常の投資信託は信託報酬という運用コストがかかりますが、ETFはネットの手数料だけで安く売買できるのが魅力です。先物に比べるとレバレッジが小さい分、利回りは低いのですが、日経平均だけではなくゴールドやS&P500など、いろいろな種類があるので分散投資を実践できます。このような特徴があるため、投資経験がない方でもとっつきやすいんじゃないかと思います。今後、人気が出るのではないでしょうか。
——ETFは買った後、ほったらかしでも良いのでしょうか?
そう思っている方が多いんですけど、それだともったいないですね。しっかり検証して優位性のあるタイミングを見つけ、それを基に買ったり売ったりすれば、利回りはさらに大きくなると思います。利回りを上げたいのであれば、年単位の長期投資じゃなくて、デイトレード~スイングトレードの比較的アクティブな取引がいいかもしれません。レバレッジ取引が怖いという方は、ETFからスタートしてみるのもありだと思います。
一朝一夕で勝てるほど投資の世界は甘くない
——話は変わりまして、村居さんは15年ほど投資スクールを運営されています。投資教育について、何か思うところはありますか?
昔は投資スクールって少なかったんですけど、今は一般の方がツイッターやYouTubeで情報を提供したり教えたりしているじゃないですか。そういう方たちが人気を集めているのを見ると、何も考えずに利益を出せるやり方を模索している人が増えているのだろうなと感じます。逆にいうと、今は時間をかけて自分の技術を磨いて成功しようと考える人が減ってきているということです。
——しっかり時間をかけて勉強すれば、誰でも成功できますか?
自分に合った投資スタイルをちゃんと見つけて、時間をかけて勉強や検証をすれば成功する確率はグンと高まります。ただ、ほとんどの方は時間をかけてないですね。どこかのスクールやサロンに入り、やり方とかヒントとか秘訣を教えてもらえば、その瞬間から儲かるというイメージをお持ちの方が本当に多いです。
必ず儲かるやり方はないですが、ちゃんとした技術を身につけて優位性のある戦略を立てられるようになれば、しっかり利益を出せるのが投資です。そういう考え方を根本的に持っていないと、すぐに辞めてしまったり、もっと簡単な方法はないかと探し回ったりしてしまうんだと思います。
——成功するには努力が必要なのに、皆さんショートカットしがちです。
成功している人たちの多くは、実は5年も10年も研究していたりします。しかも毎日毎日研究していて、ものすごい時間を使っているんですよ。その5年~10年分のノウハウを、初心者が1か月で習得できるかというと、そんな短期間では不可能なんです。内容を理解できたとしても、練習が必要になってきますし、トレードがうまくなるまでにはそれなりに時間がかかります。このような現実をきちんと受け入れた上でFXに取り組まないと、近道どころか遠回りすることにもなりかねません。
天才肌で、誰にも学ぶことなく成功しちゃうような方も中にはいるのですが、そうじゃない人の方が圧倒的に多いのが現実です。いかに自分に合った取り組み方・学び方を選べるかが重要だと思います。
——もちろん、独学でうまくいった人もいると思うんですけど、そういう人たちも本を読んだり勉強していますよね。
そうですね。本に限らず、何らかの勉強は必要になります。勉強する手段が、スクールなのかサロンなのか、それともインターネットなのか本なのか…という違いがあるだけで、どこかから情報を得ているのは皆さん同じだと思います。その得た情報をどのように噛み砕いてどう料理するのかが大切です。
私の場合は、何千冊という本を買い、そこに書いてある方法をいろいろ試しに検証していったのですが、そのおかげでいろんなことが分かってきました。他には、プロに直接会って情報を得たこともありますし、セミナーに参加したこともあります。
いかに価値ある情報を選択できるかが重要!
——5年前と比べて、今の投資業界は変化していますか?
昔と全く違う形になりましたね。先ほどもいいましたが、誰もがツイッターやYouTubeを利用して発言できるので、情報の価値が低くなってきていると感じます。あまりにもたくさんの情報がありすぎて、何を信じたらいいのかも分からないですし、得た情報を自分に落とし込むのが難しくなってきているんじゃないかと思います。
——今は情報が無限にあるので、どれを選ぶかという判断力やセンスが求められますよね。
いろんな人のいろんなやり方を全て取り入れ、何が何だか分からなくなり失敗していく人が増えている気がします。あと、無料が良いことだという変わった考えを持っている人も多いですね。僕は価値ある情報が高いのは当然だと思っているので、何かを学ぶときに価値があるものなら高くてもお金を払います。無料で手に入るものは、仮に優れた情報であったとしても、みんなが知ってしまうので情報の価値がなくなると思っています。そこに優位性はありませんからね。中には無料で良い情報もあるんでしょうけど、それをピンポイントで選択するのは難しいです。
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FX版のシストレを年末にリリース予定
——投資スクールの今後の展望を教えください。
今年末か来年初めごろにFXのシストレソフトを開発してリリースしていきたいと考えています。それが実現すると、FX・ETF・先物の三つのシストレソフトが揃いますので、皆さんが自分に合ったものを選べるようになります。
プログラミングの知識がない人でもロジックを設定して運用できるのが特徴で、日本語の選択とテンキー操作だけで検証ができるようにする予定です。新しい投資スタイルとして皆さんにご活用いただければと考えております。
——他にはない素晴らしいソフトだと思います。ただ、プロが作ったEAを利用すれば良さそうな気もしますが…。
マーケットが変化すると勝ちパターンも変化するため、たとえプロが開発したEAでも使えなくなるときが必ず訪れます。マーケットが変わるたびにEAを買い替えれば問題ないのですが、それだとコストがかかってしまいますし、そもそも運用スキルの上達が見込めません。その点、このFX版シストレソフトでは、マーケットに合わせて自分でルールを調整したりロジックを組み替えたりするので、徐々に運用スキルが身につきます。初心者であっても、それを続けていくうちにプロの観点で運用できるようになると思います。
——個人投資家にとっては心強いサービスになりそうですね。最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
FX攻略さんとは長い付き合いなので、紙媒体がなくなるのは非常に寂しいですけど、これからはWEBにシフトして情報発信を継続していくということなので、そちらでしっかりと勉強していただきたいですね。
弊社としては、日本にシステムトレードをもっと定着させるという目標があります。今後、FXの新しいシステムトレードソフトについてもどんどん発信していきますので、楽しみにしてもらえればと思います。
※この記事は、FX攻略.com2021年5月号(2021年3月19日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
「これからFXを始めよう」と思ったとき、意外と悩んでしまうのがFX会社、取引口座選びではないでしょうか? でも大丈夫。ご安心ください。先輩トレーダー達も最初は初心者。みんなが同じ悩みを通ってきているんです。
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取り上げているFX会社は、金融商品取引業の登録をしている国内FX業者です。口座開設は基本的に無料ですので、まずは気になったところで2〜3つ口座開設してみて、実際に比べてみてはいかがでしょうか。
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スプレッド | FX取引における取引コスト。狭いほうが望ましい。 |
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約定力 | 狙った価格で注文が通りやすいかどうか。 |
スワップポイント | 高水準かどうか。高金利通貨の取り扱いの数。 |
取引単位 | 少額取引ができるかどうか。運用資金が少ないなら要チェック。 |
取引ツール | 提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。 |
シストレ・自動売買 | 裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。 |
サポート体制 | サポート内容や対応可能時間の違いをチェック。 |
教育コンテンツ | 配信されるマーケット情報や投資家向けコンテンツの有無。 |
キャンペーン | 新規口座開設時や口座利用者向け各種キャンペーンの内容。 |