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FOMC9月利上げはまだ流動的!引き続きドルのダウンサイドリスクに注意[雨夜恒一郎]

先週は、米国が来月にも利上げに踏み切るとの観測が強まり、ドル円は一時125円台へ上昇した。きっかけとなったのはロックハート・アトランタ連銀総裁が米WSJとのインタビュー記事で「米経済が大幅に悪化しない限り9月利上げを支持する」と発言したことだ。同総裁は今年FOMCで投票権を持つが、通常はハト派に属するだけに、この発言は意外感を持って受け止められた。またインタビュアーが同紙のFedウォッチャーであるヒルゼンラス氏だったため、「FRBのメッセージを帯びているのでは?」との思惑を呼んだ。

聞くところでは、現段階ですでにエコノミストの過半数が9月利上げを唱えているそうだ。しかし本当にFRBは利上げを急ぐ必要があるだろうか?筆者には到底そうは思えない。

先週の当コラムでも述べたが、7月のFOMC声明では、政策金利引き上げのためには「労働市場のあと少しの改善」と、「中期的にインフレ率が2%目標に向かって戻るとの合理的な確信」が必要との判断が示された。失業率が5.3%とほぼ完全雇用に達している現在、「労働市場のあと少しの改善」とは質的なスラックの解消を指すと考えてよい。しかし先週金曜日に発表された7月の雇用統計において、平均賃金は前年比+2.1%と予想の+2.3%を下回り、労働参加率は62.6%と1977年以来の低水準にとどまった。FRBがインフレ指標として重視するPCEコアデフレータは直近6月で前年比+1.3%。「中期的にインフレ率が2%目標に向かって戻るとの合理的な確信が持てる」という状況にないことは明らかだ。

7月のFOMCでは10人のメンバー全員が政策現状維持に賛成した。では9月のFOMCで利上げを支持しそうなメンバーは誰か。前述のロックハート氏はどうやら利上げ支持を決意しているようだ。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁も、先月上旬に「年末までに2度の利上げを実施する必要がある」と述べており、利上げ支持に回る公算が大きい。タカ派筆頭のラッカー・リッチモンド連銀総裁も今年投票権を有しており、利上げに賛成する可能性が高い。

しかしそれ以外には利上げを支持しそうなメンバーは見当たらない。上記の3名が利上げを支持したとしても、3対7で否決される。パウエルFRB理事は先週CNBCの番組に生出演し、「9月に利上げするかはまだ決めていない。経済データ、特に労働市場の指標次第だ」と述べている。普段あまり発言することのない同理事のこのコメントは、イエレン議長の代弁との見方も出ている。雇用統計が並はずれて強い数字になったならともかく、7月の「ゼロ票」から前触れなしにいきなり利上げ決定というのは飛躍が大きすぎるのではないか。

もしも市場が9月利上げを大方織り込んでいるとすれば、それが覆された場合の失望は小さくないだろう。夏休みシーズンで市場が薄くなることも勘案すると、ドルに対してはダウンサイドリスクを警戒しつつ臨むのが賢明だろう。

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