トレイダーズ証券の井口喜雄による【Dealer’sEYE】をお届けします。
ハト派寄りのFOMCを通過して市場ではバランスシート縮小と利上げを同時に行うのは難しいという見方が強くなったほか、北朝鮮を巡る地政学リスクも再燃してドル円の上値を重くしています。ただし、110円割れの局面では実需買いが散見されており、ここからの下値攻めも簡単ではありません。
こうしたモメンタムのなか、週末に向けて米雇用統計をはじめ、米重要指標も数多くが予定されており、指標結果の見極めがポイントとなりそうです。
地政学リスク再燃もNYダウが下値を支える展開
先週金曜日、北朝鮮は2回目の大陸間弾道ミサイル発射しました。これまではミサイル発射を受けて地政学リスクに反応したアルゴリズムが円買いで反応し、間髪を入れずに反発すると言うのがこれまでの値動きでした。
しかし、今回のミサイル発射では円高からの戻りはありませんでした。「ミサイル発射→急落→反発」の方程式が通用しなくなっています。リスク警戒度が上がっていますのでこれまでの感覚で押し目を拾おうとすると少し危険かもしれません。北朝鮮に対してアメリカが軍事オプションを選択する可能性は低いとは思いますが、リスクオフ的な動きが継続しそうなので幾分か下値警戒は必要です。
こうした地政学リスクや、機能しないトランプ政権も関係なく上昇を続けているのがNYダウです。今のドル円を下支えしていますが、やはり流石にどこかで崩れそうな気配もあります。ドル円は金曜日のイベントに向けてやや方向感は出にくいものの、米雇用統計までは戻ったところを売っていくのが無難な戦略に思えます。
米雇用統計は雇用者数変化により平均時給に反応
今週金曜日の米雇用統計が焦点になりますが、イエレン議長は完全雇用下での就業者の伸びを7.5万人以上あれば適正と発言していますので、雇用者数変化ではあまり反応しにくい状況です。先のFOMCでインフレ認識が下方修正されたことを考えるとやはりポイントは雇用者数変化ではなく、今回も平均時給になりそうです。
仮に平均時給が弱い結果となれば、年内の追加利上げ観測の後退ばかりではなく、バランスシート縮小時期も先延ばしにされる可能性も考えられます。直近の米経済指標は悪い結果には素直に反応しやすいだけに警戒を強めておきたいところです。一方、平均時給が強い結果となればFRBの金利正常化へ向けた流れが加速すると見てドルは上昇するでしょう。今回の米雇用統計では平均時給の結果に合わせて素直について行けるマーケットを予想しています。
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