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FXと人

FXと人|Vol.8 ひろぴーさん FX取引ツールの力関係、海外FXのリスク、仮想通貨の未来など

ファンダメンタルズやテクニカルといった各種分析や、自動売買、システムトレードといった運用方法に目を奪われがちですが、FXの本質は人間と人間の関わり合いで生まれる価格推移です。分析や運用方法が相場を動かすことは決してありません。どんな相場も、動かすのは無数の人です。

この企画では、徹底してFXにおける「人」にクローズアップします。第8回ゲストは、FXや暗号資産(仮想通貨)のトレーダーとして数億の資産を築き、コラムニストやコンサルティング業などさまざまな分野で活躍する他、フィンテック企業の代表取締役も務める「ひろぴー」さんです。FXにおける取引プラットフォームの最新事情や海外FXの現状、仮想通貨市場の今後の展望などを教えてもらいました。

ひろぴーさんプロフィール

ひろぴー

FX&Cryptoトレーダー。ラジオ日経パーソナリティ、FX会社や暗号資産取引所のコラムニストなど、活動の場は多岐に渡る。自らのトレーディングノウハウから、ユーザビリティの高いインターフェース総監督を担い、店頭FX取引業者や暗号資産取引所向けの受託開発を請け負う、CXRエンジニアリング株式会社代表取締役。

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●聞き手:鹿内武蔵(FXライター)

※この記事は、FX攻略.com2021年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

※インタビュー日:2021年1月27日

FXの取引システムもクラウド時代に突入!

——まずは御社の事業内容や最新の取り組み内容などを教えてください。

 僕が今メインで活動しているのはCXRエンジニアリング株式会社という企業で、暗号資産(仮想通貨)取引所のシステムや、バイナリーオプション取引所のシステムを開発しています。数年前にブロックチェーン周りの金融システムに目覚め、自分で取引所を作ってしまえというノリで作っちゃった会社です。最強の取引システムを作りたいという思いから、自己資金で始めました。

 ビットコインの取引所は、ネット証券やFX、商品先物のシステムに比べて明らかに世界最先端なんですね。基本的にAESかAzureクラウドを使って作られており、APIも公開されていて、かつコストも安いので、間違いなくこの技術はFX業界にもネット証券業界にも需要があるだろうという目論見で、僕は今ビットコインの取引所を作っています。

——FX会社やネット証券のシステムはもはや古いということでしょうか?

 そうですね。FX会社もネット証券もまだオンプレミス(自社運用)を引きずっていて、全然クラウド化が進んでいません。オールクラウドでやっている会社はおそらく1社もないんじゃないでしょうか。自社運用といってもシステムは外部に依頼して作っているので、高コストになります。多くのFX会社が10年、15年前のレガシーなシステムから抜けきれていない状態です。クラウドを使って自社開発ができれば、コストを抑えられるんですけどね。そのことに何年か前に気づき、自分で開発できたら儲かるなと思い、会社を立ち上げました。

 弊社の強みはUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)、要するにプラットフォームのフロント側の開発です。トレーダーだから分かるデザイン面や使い勝手の部分ですね。それらをまとめて証券会社に持っていきプレゼンするのですが、いちトレーダーの意見として受け止めてもらえるので話がまとまりやすく、かつCXR社で全て作れるのでコストが安く済むというメリットがあります。

 クラウドを利用した最先端の技術を使い、短納期で作れるというのを強みに2019年から1年ぐらい営業活動した結果、ありがたいことに昨年いろいろとオファーをいただきました。受注した案件の納期は大体半年〜9か月くらいです。要件定義とか仕様とかデザインなどをいろいろ詰めていくと、その話し合いだけで3か月くらいかかってしまいます。それが終わった後、いよいよ開発をスタートするのですが、そこから完成までは半年ほどかかります。今、受注している2件はまさに開発途中で、間もなく完成を迎えます。

——仮想通貨のプラットフォームは、どのあたりがFXや株式のシステムよりも優れているのでしょうか?

 仮想通貨のプラットフォームが優れている点は、クラウドで全部作られているところです。また、APIが公開されているので、エンジニアであれば誰でも自動売買を構築できるのも利点として挙げられます。トレーディングシステムは新時代に差しかかっており、これからFXや株式のシステムもガラリと変わってくると思います。

 今後はインストール型のプラットフォームの需要は落ち、ブラウザ型が進化していくと考えています。5Gが浸透しハードが進化しているので、ビッグデータも速やかに送れます。通信速度の面において、インストール型とブラウザ型の差はほぼなくなってきているんですよ。スマホからの取引高が増えてきていることもあり、今後はおそらくPC用のインストール型プラットフォームはなくなるでしょう。これからは、クラウドで作ったシステムでサクサク動く、最新のブラウザ型プラットフォームを提供するFX会社が生き残っていくと思います。

トレードの幅を広げるAPIのオープン化

——ユーザーにとってはより良い取引環境が期待できると?

 はい。おそらく自動売買とかAIトレードのスプレッドが縮まってくると思います。振り返ればMT4の自動売買スプレッドは昔に比べ、かなり狭くなりましたよね。それと同じような現象が起こるのではないでしょうか。メタクオーツ社はもうMT4のバージョンアップを止めて、MT5のブラウザ版に注力しています。5Gの進化と共に取引プラットフォームに変革が起こると踏んで、僕はここ数年活動してきました。この分野は間違いなく仕事が増えるだろうと思って研究を進めてきた感じですね。ここ2年ぐらい前からメディアにあまり出なくなったのは、そっちで忙しかったからです。

——APIが当たり前のようになってくると、それを使った自動売買は選択肢がもっと増えるかもしれないですね。

 僕もそれを見越して、APIを簡単につないで自動売買ができるプラットフォームを作っています。OANDAとサクソバンク証券には既にオープンAPIがあり、それにつないでしまえば自由にトレードできるようになります。FX会社やネット証券、仮想通貨取引所のオープンAPI化が進めば、それがさらに加速するだろうと考えています。現にビットコインの取引所の6、7割はオープンAPIを公開しており、アカウントを作ればAPI連携が可能です。少しいじれば自動売買が自分で作れるようになっています。APIやクラウドが発展すると業者は低コストで運用できるので、浮いたコストを他のサービスに振り分けることが可能です。APIやクラウドの導入は、業者とユーザーの双方にメリットがあるといえます。

——MT4やMT5、TradingView、各FX会社が提供している取引ツールのパワーバランスは変わってきますか?

 変わると思いますよ。TradingViewとAPIを採用しているOANDAとサクソバンク証券は、一歩先を行っていると思います。あとは後発会社がどれだけ入ってくるかですね。弊社はTradingView JAPANの窓口でもあるので、いろいろ営業をかけているんですけど、残念なことに日本のFX会社はローソク足や価格約定のAPIを揃えていないところがほとんどで、TradingViewを簡単に導入できないんですよ。日本のFX会社のシステムはだいたいIIJやシンプレクスという大企業が作っているのですが、両社共にAPIを全く取り揃えていないので、今後、日本国内のFX会社は廃れていくのではないかと僕は考えています。

 MT5の導入が進まないのも同じような理由で、おそらくAPIがないからではないでしょうか。例えば、A社がMT5を導入したいと考えたときに、レートに関するAPI情報の公開がないとローソク足が組成されないんです。基本的に自前のツールを持たないところがMT4やMT5を導入していますが、TradingViewがブラウザ型の安いチャートツールを作ってくれたので、今後はリニューアルする会社からTradingViewへの切り替えが進むのではないかと思っています。

 なぜかというと、FX会社の取引ツールはブラウザ型を一つ作るのにだいたい2~3億円かかるのですが、TradingViewを利用すれば、手間をかけずに費用を大幅に抑えることができるからです。TradingViewを採用した取引システムは、サーバー側をオールクラウド化して作れば1億円未満で実現できます。

海外FXはリスク大。やるなら自己責任で

——取引システムの低価格化によって、リーマンショック前のように新たなFX会社が急増する可能性はありますか?

 国内のFX会社ではなく、海外のFX会社が増える可能性はありますね。日本のFX会社は信託保全や銀行のクイック入金サービスなどを採用していてコストがかかるのに対し、海外FXにはそれらがなく、内部のシステムや各種サービスなどにかかる運営コストを安価にできるようになってきたので、このままいくと日本のFX会社はかなり苦しくなると思います。海外FXには金融庁縛りの細かいルールや規制もないですし、同じシステムレベルであれば日本のFX会社は絶対に負けますね。僕自身、海外FXは嫌いですが、現状の進化を見ていると、これからも海外のFX会社は増えていくはずです。

 ただ、人気のある海外FX会社は子会社を数十社抱えており、子会社に悪いことをさせて、気まずくなったらその会社をたたむ……みたいなスキームが出来上がっている点は大きな問題だと思います。

——その他に海外FXで問題だと思う点があれば教えてください。

 システム開発に携わってみて分かったことですが、正直、法に縛られないのでやりたい放題ですね。資金を送金した時点で主導権は100%海外FX会社に移るので、あとから文句をいったところで何の解決にもなりません。気に入らないユーザーに対してはアカウントを止めて無視して終了、なんていう対応を取るケースも少なくないです。

 日本人はみんな平和ボケし過ぎて気づいていないですが、海外FX会社に資金を送る時点でやばいんですよ。そういったリスクを踏まえた上で、割り切ってやる分にはいいと思いますが、絶対にお勧めしないです。どうしても海外FXをやりたいのであれば、世界中からユーザーを受け入れていて歴史のある会社にしなさいと皆さんに伝えたいですね。聞いたこともないような海外のFX会社は、かなり警戒した方がいいでしょう。

仮想通貨の市場規模は10倍以上に膨らむ!?

——話は変わり、2020年の年末からビットコインが急上昇しています。なぜこんなに上昇したのでしょうか?(インタビュー日の2021年1月27日時点で、ビットコイン円は336万3000円、イーサリアムは14万1658円。共にbitFlyerの始値)

 一つは金融緩和、もう一つは米国が本気を出してきたことが影響していると考えられます。ゴールドマン・サックスやJPモルガンなど米国の投資銀行やベンチャーキャピタル、ヘッジファンドがビットコインファンドや上場投資信託(ETF)を作っています。ビットコインはシカゴの先物取引で何年か前に上場していますが、次いでイーサリアムが今年の2月に上場します。

 また、ロビンフッターたちがビットコインを買い上げている他、米国のビットコインファンド・グレースケールが毎日のように大量に購入しているのも価格を引き上げた要因といえます。2020年の11月には1日で100億円分くらい買っていたので、それを見た世界中のファンドや個人投資家が追随し、買いが買いを呼んで大きく上昇しました。

——金融緩和でばらまいたお金の投資先の一つとして仮想通貨も選ばれているということですか?

 間違いなくそうですね。富裕層がビットコインのポテンシャルに気づき、資金の流入が加速したんだと思います。ビットコインの時価総額は今60兆円くらいなんですけど、実際にはその3分の2が動いておらず、事実上20兆円程度の市場です。なので、100億円規模の買いが毎日入ると簡単に価格が上がってしまいます。ヘッジファンドがいなくて流動性は低く、ボラティリティが高い状態です。

 ヘッジファンドが価格を大きく動かす悪者という印象を持っている方も少なくないと思いますが、それは誤解で、ヘッジファンド同士の戦いがあるからこそ価格がなかなか動かないんです。FXも同じで、30年前にドル円は1日3円ほど簡単に動いていましたが、それはあまり市場が安定していなくて需給だけで動いており、ヘッジファンドもそんなに力を持っていなかったからです。

 今のビットコインはその状態で、市場が成熟してくるとボラティリティが抑えられてきます。ビットコイン市場はまだ若く、これからもっと米国のファンド勢が入ってきてオプション取引も盛んになってくれば、1日の変動幅も小さくなってくるであろうというのが僕の見通しです。

——仮想通貨ではBOT取引というものが一時期注目されましたが、これはどういうものなのでしょうか?

 アービトラージを自動で行うことですね。仮想通貨は取引所ごとに価格差が出るので、「日本で買って海外で売る」「海外で買って日本で売る」というシステムが4年前にはやりました。ビットコインの価格は取引所によって1000円~4000円ほどの価格差が出る場合があり、その瞬間に売買を行うことで利益を生み出すことが可能です。取引を自動で行ってくれるBOTというプログラムを用いることから、BOT取引と呼ばれています。

 それと、DeFiという技術も注目されています。ツイッター上でDeFi銘柄やユニスワップ、寿司スワップという言葉を見かけたことがあるかと思いますが、それのことですね。分かりやすくいうと、分散型のビットコイン取引所に自分が持っているスマホのコールドウォレットを連携させて取引ができる仕組みのことです。取引所が資産を預かることは一切せず、自分のスマホから相手のスマホに飛んでいくイメージですね。

 これがイーサリアム上でできるようになって、イーサリアムの分散型取引所(自立分散型取引所)が2020年にはやりました。自分が持っているイーサリアムとかイーサリアムトークンを取引所に預け入れたり、ブロックチェーン上でデポジットしたりすると金利がつく仕組みになっています。貸す人もいれば借りる人もいて、貸す人の利回りは年利で20~30%で、ボラティリティの高いトークンによっては90%つくものもあります。それなりのリスクを伴いますが、あまりにも利率が高いのでみんな買うんですね。需給がうまいことかみ合っていて、DeFi銘柄が値段を上げています。そのDeFiに参加するためにはイーサリアムが必要なので大きく買われ、去年の価格上昇率はビットコインを上回りました。

——イーサリアムは機能面が評価されて値上がりしたというわけですね。

 はい。現状はビットコインがゴールドだとしたらイーサリアムはドルで、流動性はイーサリアムの方が高いです。イーサリアムがビットコインと同じ時価総額になれば、売買高は2倍~2.5倍になります。現在の時価総額は15兆円程度で、ビットコインの4分の1です。イーサリアムは、ここから4、5倍ドーンと上がる可能性も十分あると思います。

——ビットコインやイーサリアム以外の仮想通貨も価格が上がり、その可能性はまだまだ広がっていくという認識でよろしいですか?

 間違いないでしょうね。仮想通貨全体の市場規模は100兆円程度とまだ小さいので、軽く10倍規模程度には中長期的になると考えています。とりあえず、何らかの仮想通貨を買っておけば儲かると思いますよ。仮想通貨のブロックチェーン技術はクラウドでやっていることの何割かを解決できる可能性があり、それが実現するとさらなる低コスト化が期待できます。セキュリティが強化されてコストが下がるわけですから、10年後にはブロックチェーンが当たり前の技術になり、「まだクラウドでやっているの?」といわれる時代が絶対にくると思います。先進国ではこういった需要があるので、仮想通貨の価値はより高まるといえます。

 その一方で、新興国や発展途上国ではインフレヘッジとしての需要があります。両替手数料がかかる基軸通貨のドルを持つよりは、無料でスマホに入れることができ、価値が上がって値段の落ちないビットコインを持っていた方が安全で便利というわけです。

 新型コロナウイルスの影響を受け、世界中の中央銀行が金融緩和を行ったので、法定通貨の本質的な価値が間違いなく下がりました。ビットコインの価値は上がっていますが、厳密にいうとそれは違って、ドルやユーロ、円といった全ての法定通貨の価値が下がっているからそう見えているだけだと思いますよ。僕はこれからグローバルインフレーションが起こるのではないかと予想しています。

※この記事は、FX攻略.com2021年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

※インタビュー日:2021年1月27日

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